【V系】2017年はどうなる? 期待のバンドは? ヴィジュアル系ライター&編集者座談会【16年シーン総括】
ヴィジュアル系をこよなく愛する編集者・ライター3名が、2016年のシーンの総括と、今年の展望を語ります。
これを読むとシーン全体がまるわかり(できるかもしれません)。
【V系】10万人より、たったひとりの“あなた”に届けたい。雑誌『ROCK AND READ』編集長ロングインタビュー
(※座談会中の発言は個人の見解、注釈の文責は藤谷にあります)
藤谷:今回、雑誌「ROCK AND READ」の編集長の吉田幸司さん、「ウレぴあ総研」でも執筆されているフリーライターの高崎光さんをお呼びして「2016年をV系シーンを振り返る」座談会を行いたいと思います。
V系シーンの黎明期から密接に関わっていらっしゃる吉田さん、90年代からリスナーとしてV系を聴いていた私(藤谷)、ネオヴィジュアル系世代の高崎さんで、様々な視点の意見が伺えるかなと。
さて、2016年のヴィジュアル系シーンのトピックをおおまかにあげますと、まずはX JAPANのYOSHIKIが中心となって、若手から大御所まで勢揃いしたフェス「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」がありますね。
大規模イベントだけでなく、己龍は昨年に続いて2度目の武道館、R指定も初の幕張メッセイベントホールワンマン公演を行っているというのも明るい話題ですね。
その一方でDuelJewelやBORN、ギルガメッシュ、SCREW、NIGHTMAREなど長く活動していたバンドの解散、活動休止もありました。RaphaelやSIAM SHADEといった復活したバンドも区切りをつけた年でもありました。
また、メトロノームや少女-ロリヰタ-23区という、ゼロ年代に人気を博したバンドの復活も話題になりました。それに音楽専科社倒産による老舗V系雑誌「SHOXX」の休刊、復刊のニュースも動向が注目されています。
もっと名前をあげておきたいバンドやニュースも沢山ありますが、それだけで1ページ使ってしまいそうなので…。
高崎さん、吉田さんにとって、2016年のV系シーンはどんな年でしたか?
高崎:うーん、「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」、「Party Zoo」(※L’Arc~en~CielのKenを中心としたイベント。MUCC、BAROQUEらが出演)とか、すごくよかったと思います。2015年の「LUNATIC FEST.」(※LUNA SEA主宰のフェス)からいい流れはあるのかなと。
でも、毎年年末になると、ネット上では「今年は(解散が多くて)ひどかった」っていうじゃないですか。それを4、5年言い続けてる気がしていて。
藤谷:Twitterなどで情報が拡散されやすくなった結果、よくよく考えると名前しか知らないバンドの解散に反応しちゃったりすることもありますからね。
吉田:ギルガメとSCREWが同じ日に発表したのも印象に残っています。それがV系シーンにとって忘れられない日、5月2日(hideの命日)だったのが象徴的なんですよね。
藤谷:しかもそういう時だけヤフートピックスにになるんですよね(苦笑)。ネットニュース全体の傾向ですが、ネガティヴなニュースの方が拡散されやすいのは仕方ないんですけど。
高崎:だからそればかりが話題になるということは、乱暴な言い方をすると逆に「あたりさわりの無い年」だったのかもしれません。
ほかには、DEZERTやアルルカン、NOCTURNAL BLOODLUSTあたりのバンドがガンガン来ている一方で、それより一世代前のバンドが失速しているような印象があって…。
【DEZERTの2016年】
アルバム『最高の食卓』をリリース。VJS、COMMUNE、D'ER≠gari 2016 feat.DEZERTなどのイベントにも出演。2017年1月29日にMUCCやA9、LM.C等と共演する主催イベント「This Is The "FACT"」を開催予定
【アルルカンの2016年】
6月にアルバム『Utopia』をリリース。47都道府県ツアー中にVo、暁が喉の不調により休養を余儀なくされるも約一ヶ月後に復帰した。休む間もなく11月にシングル『カルマ』をリリース。今年は3月にシングル『真っ赤な嘘』『影法師』のリリースを控えている。
【NOCTURNAL BLOODLUSTの2016年】
4月にミニアルバム『ZēTēS』をリリース。ヨーロッパツアーの敢行やVJS、SCREAM OUT FEST 、LOUD PARK出演も話題となった。
藤谷:具体的には?
高崎:DIAURA、MEJIBRAY…。
藤谷:ユナイトあたり…?
高崎:まさしく。全然頑張ってるし、DIAURAなんかはかなり精力的に活動してたと思うんですけど、後輩の勢いと先輩の勢いの間で霞みがちというか、なんとなく停滞している印象を受けるんですよね。個人の意見なのでファンの方々はごめんなさい!
【DIAURAの2016年】
3月にシングル『ENIGMA』8月に『月光』、11月にミニアルバム『MY RESISTANCE』をリリース。盟友・MEJIBRAYとのツーマンツアー「激-MASSIVE-突」やVJS出演など精力的に活動した2016年だった。
【MEJIBRAYの2016年】
4月にシングル『THE END』、11月に『羽花』をリリース。2017年5月に2枚めのベストアルバム『SM #2』をリリース予定。
【ユナイトの2016年】
3月にシングル『ジュピタ』リリース、6〜8月にデジタルシングル『無限ピクセル』、『くくる』、『PiNKY_she_SWeAR』を配信。9月に会場限定シングル『天国に一番近い音楽』をリリースした。2017年1月にシングル『A Little Picture』をリリース予定。またMAVERICK DCのツアー「M.A.D」やVJSなどのイベントにも出演。
藤谷:たとえば、今名前があがったバンドもけっしてダメではないんですよね。先日ユナイトやMEJIBRAYをみる機会がありましたが、いいライブをしています。けれど外野からみて「初期に比べて勢いが止まっている」ように見えてしまうということでしょうか?
高崎:もちろん、いいライブしてると思うんですよ。個人的な好き嫌いで言うと、その辺りのバンドめちゃくちゃ好きです。でも、コンテンツ力って視点で長期的に考えると、停滞…あるいは下がってる。
アルルカンやDEZERTはコンテンツとしておもしろいじゃないですか。だからあえて「2010年代初頭にシーンで台頭したバンド大丈夫?」説をとなえたいです。
藤谷:それで5年目くらいをピークにゆるやかに失速していくと、10年目あたりに活動が止まって「今年も解散多かったね」になってしまうんでしょうか…。
高崎:最近、己龍やDaizyStripperなどの10周年バンドが集まって「10th Anniversary Special Tour 〜from 2007〜」というイベントを発表しましたよね。10周年までたどりついたプライドや意地があるのかなと思います。
そうなれないバンドがダメって言ってるのではなく、メディアのピックアップ、マネージメント……、“大人”がもっと頑張れるんじゃないかと思うんです。だから今10年目、5年目とかの節目で頑張るバンドに心配と期待、両方込めてます。
吉田:それに続けるとするのであれば、僕は2016年のDIAURAを高く評価しています。たしかに近年色々滞っていた時期もあったけど、それを乗り越えての暴れっぷりが初期を彷彿させる、初期衝動をとりもどした感じがするんですよ。
それを如実に感じたのはMEJIBERAYとのツーマンツアー「激-MASSIVE-突」の時です。「(MEJIBRAYを)潰しにかかってる」と思いました。その後『MY RESISTANCE』をリリースして、それも勢いを感じました。なので今日はDIAURAを推しに来たというくらいですよ(笑)。
藤谷:VJSのDIAURAのステージでもおっしゃるような「初期のようなDIAURA」空気を感じました。「ここにいる客、全部取る」という意思を感じるステージでしたね。
吉田:それは高崎さんのいう「5年目の呪縛」みたいなものへの反発でもあるんでしょうね。
V系バンド「1000キャパ」問題
高崎:V系バンド「1000キャパ」問題(※1000人収容のライブハウス以上のキャパシティから中々規模が拡大しない)はよく聞く話ですけど、5年目、あとは1000キャパ 以上で停滞すると、失速してしまうような風潮があると思うんですよね。
藤谷:そこからもう一つ大きな規模にしたい、間口を広げたいと、新しいお客さんを入れようとしてそれまでと方向性を変えたりしても、既存ファンの反発が出ることもありますしね。
吉田:1000キャパ 以上を目指すときの呪縛みたいなのとはちょっと違うかもしれないけど、DEZERTもボーカルの千秋さんが「6月のZepp以降しばらくライブをやらない」と言っていたんです。そこである意味、とにかく走り続けた第一章から次へ向かうための準備期間を迎えたのかも。
藤谷:そういえば、先日「ウレぴあ総研」で行ったアルルカンの暁さんとの対談でも千秋さんは「(イベントに出演するアルルカン・DEZERT・NOCTURNAL BLOODLUSTは)悩める3バンド」と表現していました。勢いだけではいかなくなる「難しい時期」と。やはりそこはステージの上の人たちはシビアに、冷静に見てるのだな、と。
あと付け加えると、受け手にとって「応援しがい」というか、「上に上がっていくバンドを見ていたい」という願望はあると思うんですよ。バンドに限ったことではなく、近年のライブ中心のエンタメ全般にいえることだとは思いますが。
高崎:私は元々、ミーハー体質なのでそういうのわかります。ヴィジュアル系にしろ、アイドルにしろスポーツにしろ、そういうのありますよ〜(笑)。
吉田:僕は逆にlynch.が大きくなっていくときに、遠くに行く気がして嫌だったんです(笑)。
高崎:失礼ながら、それは吉田さんかわいい(笑)。
吉田:lynch.が初めてZeppTokyoにチャレンジした時に、予想外と言ったら失礼ですけど、すごくお客さんが入ってて、「ちょっと遠くなった気がする…」って思って寂しかったんです。それがバンギャルの気持ちだと思ってたんですけど…(笑)。
藤谷:もちろん、両方あるとは思うんです。で、強引にまとめますと、バンドの規模によって見てるファンの精神状態って左右されがちなんですよ。その分水嶺のひとつが1000キャパの会場っていうことなのではないでしょうか。
高崎:Zepp規模になると「武道館を目指そう」みたいな空気がファンの方にも漂い始めるし、逆に「遠い」みたいに離れる場合もあるんですよね。
藤谷:90年代くらいまでは、メジャーデビューすると「離れちゃう、寂しい」みたいなファン心理ってあったじゃないですか。それが今は会場キャパにスライドしているのかなと。
高崎:今はメジャーデビューすると逆にインストアイベントが増えちゃいますからね。下手したら疎遠な友達よりも会えますよ(笑)。
吉田:メジャーからするとリクープラインが違うから仕方ないんですけどね。
「金爆以降」のシーンを読む
藤谷:あとですね、今年は「ゴールデンボンバーのブレイクの余波」がなくなった年なのかな。ニコニコ動画から紅白出演まで彼らがブレイクして以降、いわゆる「金爆新規」でヴィジュアル系シーンに入ってきた人たちって多かったと思うんです。そこからもっとコアな己龍やR指定のファンになった若いコも多かった。
これって90年代に大ブレイクしたSHAZNAからヴィジュアル系に触れて、そこからもっとコアなDIR EN GREYやPIERROTへ…ということがあったと記憶しています。「次にもっと過激な”V系らしい”バンドが見たい」となったら、血みどろな楽曲も多い己龍やメンヘラなR指定に行くというのはすごくわかるんですよ。
【己龍の2016年】
3月にシングル『彩』、6月にアルバム『百鬼夜行』、11月にシングル『月下美人』をリリース。2015年に続き2度目の武道館単独公演を開催。2010年代のシーンを代表するバンドとしての位置を固めた1年。
【R指定の2016年】
3月にシングル『八十八箇所巡礼』をリリース。日本全国88箇所を回る怒涛のツアー「日本八十八箇所巡礼」を敢行。ツアーファイナルである幕張メッセイベントホール公演当日は大型台風が直撃した。Vo、マモのTwitterが時々物議を醸し出す。ある意味常に話題の中心だったといえる1年。
吉田:反動というか、裏返しですよね。
藤谷:そして、他のコミカルな要素のあるV系、たとえばカメレオ、Jin-Machine、えんそくなどのバンドに触れた人も少なからずいたと思うんですよね。
ゴールデンボンバーのブレイク前だとたしかJin-Machineは池袋手刀や神楽坂エクスプロージョンの規模でしたし、えんそくはO-WESTワンマンだったかな。どちらのパターンも「恩恵」というよりは、もともと実力のあった人たちが注目を浴びる「きっかけ」になったという形だとは思うんですけど。
【カメレオの2016年】
1月にミニアルバム『KAMENICATION!』、8月にシングル『運命開華ディスコ』をリリース。イベント出演はVJSからプロレス団体のDDTフェスまで振り幅の広い活動を展開。
【えんそくの2016年】
1月に新宿ステーションスクエアにてゲリラライブを敢行。直前までバンド名が明かされなかったため、さまざまな憶測を呼んだ。5月にシングル『アリス・エクス・マキナ』、11月にシングル『12モンスターズ』をリリース。あとはウレぴあ総研記事のバックナンバーを見てください。
【Jin-Machineの2016年】
1月に『NEVER SAY NEVER』リリース、2月に赤坂ブリッツワンマン公演を行い、8月にはシングル『†夏☆大好き!ヴィジュアル系†』をリリース。
高崎:最近よくある、むやみやたらな無料イベントの費用対効果にはいささか疑問を抱きますが、えんそくのアルタ前ゲリラライブなんかは、話題の作り方も良かった好例だと思います。
藤谷:ちなみに私自身はメチャクチャ「恩恵」受けているんです。それ以前は一般メディアでV系の企画をあげても「いまさら?」みたいな空気だったのが、金爆以降は「ネクストブレイク」をメディアが求めていた部分もあって、企画を通しやすかったんですよね。
とはいえ、V系の中で明確なゴールデンボンバーのネクスト、フォロワーって頭角を表してないんですよね。Jin-Machineやえんそくにしたって、金爆の影響を受けて始めたのではなく、元からいたバンドじゃないですか。フォロワーがいないという意味では氣志團に近いのかもしれない。で、今年ついにゴールデンボンバーが紅白落選したわけで。
高崎:PERFECT HUMANと同じ枠だったんですかね(笑)。
藤谷:もちろん、これはゴールデンボンバーがオワコンになったというわけではなく、実際ニコニコ動画での「裏紅白」動画は落選がなければ実現しなかったですし。
今年のツアーも横浜アリーナの初日がすこし空席が目立ってたのですが、その公演の最後にスクリーンに出した「”ジャスティンボンバー”のツイート画像」が拡散していて、次の日は満員になってました。やっぱりあのバンドは色んな意味で面白いんですよ。
【ゴールデンボンバーの2016年】
4月にシングル『水商売をやめてくれないか』、11月にシングル『おどるポンポコリン』をリリース。また、VJS、氣志團万博、SUMMER SONIC等様々なフェスにも出演し、12月に”フェスで盛り上がる曲”をコンセプトにした『フェスベスト』をリリース。
EXILE TRIBE総出演の映画・ドラマシリーズ『HiGH&LOW』に”ホワイトラスカルズ”のメンバーとして出演。個々のバラエティ番組出演なども続くも今年ついに紅白歌合戦5年連続出演にならず。しかしながら「裏紅白歌合戦」をニコニコ動画で配信するなど、転んでもただでは起きない精神。
V系の客層は変化してる?
高崎:いまヴィジュアル系のファンの消費スタンスが二極化してる気がするんです。主要なバンドのアパレルブランド作ったりして、客単価を上げようという流れに全力投資をしている層と、ゆるくライトに消費している層。
KEYTALKも好きだけどV系のマイナーなバンドにも行く、V系ジャニヲタ二足のわらじ、スマホのソシャゲに課金しながらチェキにも課金みたいな。
藤谷:一本槍ではなくて、並行してる層が増えているのでしょうか。
高崎:昔からある話かもしれませんが、2016年はそれをひしひしと感じる年でした。
私、都内のライブハウスでも働いてるんですけど、仕事中にファンの子の会話が聞こえてきたりするんですね。「あのバンド”おもしろい”」っていう子の話がちょくちょく聞こえてきたりして、興味深い価値観だと感じました。
今V系の若手の中では0.1gの誤算のような、親しみやすくてノリの良いバンドが人気じゃないですか。邦ロックと兼業してる人たちも増えていることと繋がってくるんですけど。
【0.1gの誤算の2016年】
2015年結成の新鋭バンド。5月にシングル『有害メンへラドール』、8月にシングル『必殺!からくり七変化!』、11月にシングル『メガ誤算。』をリリース。公式YouTubeチャンネルにてYouTuberのようなバラエティ動画も公開している
藤谷:「ノレるかノレないか」の比重が高くなっているみたいな話は、ロックフェスなどでもいわれる話ですね。
高崎:私、EDMやハウスも好きなんですけど、大箱のクラブのピークタイムでとにかく踊らせるための音楽って、お決まりの展開があるんですよね。BPMはこれぐらい、ドロップがあって…、みたいな。
今年はトロピカルハウスも流行ったりと、近年はメロディ重視への回帰みたいな傾向もありますが、とにかく踊らせる、客を動かすってことを重視すると、「新しい音楽」を生み出すのは難しいのかも。
吉田:その流れに付け加えると、アイドルのBiSHはリフトを禁止にしたんですよね。リフトが出たらそこですぐにライブを終了するという警告付きで、実際にそれで数分でライブが終わったこともあったんです。
藤谷:それはすごい、強制終了ですね。その措置には反発もすごいのでは。
吉田:古参がそれで一気に上がって、でも動員は増えて野音ワンマンも成功して。地下アイドルが「地上」に出る段階として、それが必要だったのかもしれない。
藤谷:BiSHに関しては 強制措置で1000キャパ の呪縛から開放されたということでしょうか。それを聞いて思い出したのが、少し前に己龍がライブのノリを変えようという動きが出たんですね。これはもともとバンドから動画などで提示していたルールの改正だったため、一部ファンから反発は出ていたりしていました。
今からする話は己龍ではなく限りなく一般論の話になるんですが、いまステージの上に立っているミュージシャン自身がファン、リスナーだったころの「90年代のギチギチぎゅうぎゅうのオールスタンディングライブフロア」を目指しても、今はバンドによっては固定の振り付けがある、扇子もある、ペンライトもある、その上でぎゅうぎゅうを目指しましょう、となると扇子やペンライトは素材が堅いから、ちょっと危ないというのもあるんじゃないのって正直思うんですよ。
もちろんフロア前方に余裕があるのに、出入り口のドアが閉まらないレベルで後ろばっかり詰まっちゃう状況は避けたいですけど。
ちなみにBiSH古参たちはその後どうなったんですか?
吉田:おやすみホログラムやぜんぶ君のせいだ。みたいな、よりノリの激しいグループに流れていくんですけど、BiSH自体はあきらかに成功しているんですよね。
藤谷:バンド主導のノリの変革って難しいと思うんですけど、そういう話を聞くと、己龍も今後「その選択が正しかったね」って言える日が来るのかもしれない。
まあフロアのノリって暴力行為レベルのもの以外は、誰が正しいというものでもなく、時間をかけて落とし所を見つけるしかないんですけども。
「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」どうだった?
吉田: 最終日にLUNA SEAが(時間を)押して己龍が巻いたのにXがさらに押したじゃないですか。「90年代」と「10年代」のV系の違いを象徴してるなって思いました(笑)。「10年代」って「真面目」なんですよね、DEZERTもなんだかんだいって時間は守りますし。
藤谷:そもそも論として「すごく遅れる」方がイレギュラーなんですよ(笑)。
高崎:私だってX JAPANのことは大好きですし、アルバムめちゃくちゃ持ってますし、すごいのは十分知ってますけど、大人なんだからちゃんとして欲しいって思います(笑)。
吉田:でも、そういう話を聴くと「また伝説を作った」って嬉しくなっちゃうんですよ。
藤谷:色んな意味で楽しかったですし、それこそ10年代を代表する己龍やR指定が大御所に挟まれても存在感を出していたのが頼もしかったです。それにきょうびのフェスでよくある「次はメインステージだ!」宣言をあんなに若手がいる中で、R指定だけがやっていたのも面白かったです。
吉田:ファンの忠誠心というか、どんなに無茶な時間でもついていくのがファンの証というのが、90年代世代のポリシーみたいなところがあるじゃないですか。
藤谷:「ヴィジュアル系」の名のもとに様々な世代が集結したので、フロアもちょっとした異文化コミュニケーションがみえたのも面白かったです。
吉田:そう考えると年末にあった「D'ER≠gari 2016 feat.DEZERT」(※D’ERLANGER、cali≠gari、DEZERTが共演し、東名阪をまわったイベント)は、世代のバランスがとれて良い図式だったのかもしれませんね。
高崎:今年は「Party Zoo」もありましたし。
藤谷:昨年から続いているイベント「COMMUNE」も含め、規模の大小はあっても2010年代に入って世代をつなぐようなイベントが増えて、ようやくV系という「ジャンル」に誇り?というと言いすぎかもしれませんが、世代を通しての何かを掲げることができるようになったのかもしれない。
吉田:VJSは今思うとHi-STANDARD主催の「AIR JAM」みたいですよね。あれも最後は千葉マリンスタジアムだったのに、出演バンドの次のライブ告知が下北シェルターみたいな(笑)。3万人に向かって200キャパの宣伝をしているという。
藤谷:それはたしかにその通りかもしれません(笑)。MUCCの逹瑯さんも3日目のぞんび出演前の前説MCで「ここだけAREAみたい」って言ってましたね(笑)。若手にはいい意味で刺激になったんじゃないでしょうか。
今のバンドは出演時間20、30分のイベントに慣れてるというか、短時間でポテンシャルを発揮できるのが強みだと思うんです。それに、普段なら中堅でやってるようなNoGoDや摩天楼オペラも若手と同じくらい全力投球していたという印象がありました。
高崎:若手の中ではゴシップが良かったと思います。「高田馬場AREAでやってること100%の力で幕張でやる!」って誠実な姿勢を評価したいです。
【ゴシップの2016年】
1月にシングル『東京スキャンダル』、2月にベストアルバム『脳味噌回転愚流愚流地獄-黒歴史盤-』、3月にミニアルバム『百舌』、5月に『インモラル鬼畜㊙痛震講座』、6月に『CHEMICAL FILTH』、7月に『エロトピアリ』とシングルを3ヶ月連続リリースし、11月にシングル『天上天下唯我独唱』をリリースとハイペースな活動を展開。
藤谷:いい意味でいつも通りできて、それがよかった。
VJSのステージでMCで逹瑯さんが「V系がいつからかっこ悪いと言われるようになったんだろう。”好きな音楽はV系です”とみんなが胸を張って言えるように、俺たちが格好よくならないと、という主旨のことを話していたじゃないですか。
さっきの「誇りを持てるジャンル」の話につながってくるんですけど、90年代のブームもその後の冬の時代もネオヴィジュアル系ブームもみてるから言える説得力がありました。
吉田:MUCCが2017年で20周年ですよね? 最近、色んな若手バンドから、MUCCのメンバーからアドバイスを受けたという話を聞くんですよ。良いつなぎ役になってるのかもしれません。
藤谷:対一般世間的にすごいヒット曲があるわけでもないけれど、シーンに欠かせないバンドですよね。
吉田:そういう意味では、MUCCの評価が改めて高まった年なのかも?
高崎:飲み会の良い幹事みたいな存在のバンドなんじゃないですかね(笑)。知り合いも多い、店も知ってる、裾野が広い、みたいな。
藤谷:上手いことを(笑)。
2017年はどのバンドに期待?
藤谷:1年終わってみたら、悲しいニュースもあるけど、良い芽もあるのではと。
復活したバンドもあるし、解散は悲しいですけど、活動休止中のSadieの真緒さんと美月さんが結成したThe THIRTEEN、解散したBORNの猟牙さんとSadieの剣さんが新しく組んだRAZORや、Lycaonのメンバーが再集結したinitial’ Lといった新バンドも活動を始めています。
高崎:たしかに引退してる人は少ないかもしれないですね。ステージの上には立ち続けている。
藤谷:では最後に来年どんな年になるか? という話でまとめましょう。注目してるバンドはありますか?若手じゃなくても「今このバンドがおもしろい」みたいなものでも。
吉田さんは来年はどんなバンドに注目していますか?
吉田:もうDEZERTしかないですよ、来年も再来年も(笑)。あと、個人的にはアイドルとV系の融合がもっと見たいですね。どっちも世間から虐げられている人種という面では同調できるはずなので(笑)。
2016年でいうと、NIGHTMAREのRUKAさんのLSNがBiSHとツアーをしたり、R指定が椎名ぴかりんやぜんぶ君のせいだ。を呼んでイベントを主催したり、そういったことがもっと増えてほしいです。
高崎:月並みな言い方になってしまうのですが、個性のあるバンドが見たいです。ライン録りの同じような音、同じような衣装、何かを生み出そうって感じるバンドが少なくて。それが少し悲しいですね。
藤谷:衣装に関しては己龍とR指定の影響か、和テイストを取り入れている若手が目立つ印象がありますね。その中でも「こう来たか!」みたいな新鮮な驚きがあるものはたしかに少ないかも。
あともう個人的には正直もう「メンヘラ」テーマは食傷気味かな…? 逆に今年以降メチャクチャ明るいものが流行りだしたりして。
高崎:最近のバンドだとザアザアが注目です。スタジオでジャムって曲作ってるって聞いて驚きました。音はもちろん良いんですが、世界観を出そうと頑張っていると思います。
吉田:たしかにDADAROMAやザアザア、RAZORのタイムリーレコードは面白いと思います。
【DADAROMAの2016年】
1月にアルバム『dadaism♯2』、2月に会場限定シングル『螺子』、6月にベストアルバム『スタンチク』、9月にシングル『夢タラレバ』、12月にシングル『造花とカラシニコフ』と、コンスタントなリリースが続いた1年だった。また6月にはバンド結成1年半で赤坂ブリッツワンマン公演にも挑戦。
【ザアザアの2016年】
2014年末に結成され、コンスタントにリリースとライブを行っていたザアザアだが、2016年は3月にシングル『したいだけでしょ?』、ベストアルバム『中毒症状』、6月にシングル『雨に殺される』、そして9月から『カミソリ』『どす黒い』『余命』を3ヶ月連続リリースするなど、これまで以上にハイペースな1年となった。
藤谷:「世界観の構築」って難しいと思うんですよね。キラキラ系でもコテ系でも”暴れられる音”、"みんなで盛り上がれる曲"が増える傾向にあるのかもしれない。
もちろん、皆で盛り上がるということ悪いことではないんですけどね。
高崎:若手以外ですと、BAROQUEとA9が音楽性はすごく高い上で、自分たちの見た目もすごくアドバンテージがあるっていうことをわかってる。どっちかのバランスがとれてなかったのが音楽性がついたことで、今とてもバンドとしていい状態にあるのではないかなと感じます。
アンティック-珈琲店-も良いですよね。がんばってほしいなあ。
【BAROQUEの2016年】
10月にL'Arc〜en〜Cielのkenをプロデューサーに迎えてのシングル『G I R L』をリリース。同じくkenが中心となって開催されたイベントツアー「PARTY ZOO」などにも出演。
【A9の2016年】
4月にミニアルバム『LIGHT AND DARKNESS』、8月にベストアルバム『Grace』をリリース。8月には結成当初の楽曲のみで構成されたライブ「“NO NAME”-名前は未だ無い-」を行った。
藤谷:それにキャリアのあるheidi.、NoGoDのようなバンドを応援したいし、あとは中堅に差し掛かっているRoyzにも期待しています。高崎さんのいう顔面の良さと音楽性の両立という領域に踏み込んでいる気がするので今後が楽しみです。
自分が東京在住ということもあって、FEST VAINQUEUR以降、勢いのある関西バンドがあまり見えてこないので、今年は関西にも目を向けたいですね。
吉田:活動が長いといえば、BUCK-TICKもメジャーデビュー30周年なんですよね。今も終わることの想像さえできないのがすごい。
あとは、lynch.ももうベテランの域ですよね。年末の件はあったけど、早く復活して、ずっとがんばってほしいバンドです。
【lynch.の2016年】
アルバム『AVANTGARDE』をリリース、メジャーデビュー5周年を記念して東名阪無料ライブ、2月のCrossfaithや10月のLUNA SEAのJとの共演、VJS出演など精力的に活動するも、11月に明徳(B)の逮捕により活動自粛。12月に明徳の脱退を発表。
藤谷:つい先日BugLugの一聖さんが復帰と武道館公演を発表しましたけど、極端な話「待ってる」ことしかできないじゃないですか。活休にしてもメンバーの休養にしても、待つことしか出来ないんですよね。帰ってきた時に思いっきり迎えたいですね。
他にもこれまで予想のできなかったこと、たとえばDIR EN GREYとPIERROTの「ANDROGYNOS」(※元旦に突如発表された、DIR EN GREYとPIERROTによる謎のプロジェクト。現段階で詳細は不明。)みたいなサプライズもありますし。そしてXのアルバムも待ちましょう…。
