仕事に追われて心が落ち着かないとき、何をするといいか。500以上の企業や官公庁に組織変革支援を行ってきた沢渡あまねさんは「頭を空っぽにするには、デジタルデトックスが有効だ。『週末まるごと』、ましてや『2泊3日』はハードルが高いので、都会にいながらでもできる小さなステップから始めてみるといい」という――。

※本稿は、沢渡あまね『スマホに振り回されないデジタル解毒(デトックス)のすすめ』(青春新書)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Zbynek Pospisil
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zbynek Pospisil

■スマホOFFの1時間散策で頭をからっぽに

「半日であっても、旅に出るのはハードルが高い」と思う人もいるでしょう。

「そもそも私は東京住まいで、すぐ郊外に行けるわけではない」という人もいるかもしれません。

大丈夫。都会でも手軽なデジタルデトックスは可能です。

先日、私が都内へ出張したとき、空いた1時間で試した「都市型デジデト」の様子をお伝えしましょう。

【旅の行程】

● 東京都大田区の洗足池(せんぞくいけ)公園の周辺を1時間だけ散策する。

私は出張時も、手元のスマホやノートパソコンの画面をにぎわす新着メッセージ通知やその返信に追われ、オンライン会議も次から次に入ってきてなかなか心を落ち着けるヒマがありません。

この日もなかなかにぎやかなスケジュールでしたが、翌日の講演に向けていったん頭も心もからっぽにしておきたく、日中、隙間を見つけて散策をしました。

■空が広い場所が心をリセットする

場所は、洗足池公園。

東京都大田区の、にぎやかな中原街道と静かな住宅街の奥にある癒しスポットです。

かつて勝海舟(かつかいしゅう)が愛(め)でたといわれる森と泉の景色は、いまなお、せわしい都会人の心を潤してくれます。

私は昔から洗足池が好きで、都内に定住していた頃もよく訪れていました。

いい発想が出なくて頭がモヤモヤしたときや、キャリアに行き詰まったときなどは、池のほとりのベンチでぼーっと景色を眺めたり、周回路を散策したりして「解決」しました。

1周およそ1.2キロメートル。

洗足池。静かな水面と、都会であることを忘れさせてくれる空の広さにほっと一息〔出典=『スマホに振り回されないデジタル解毒(デトックス)のすすめ』より〕

大きすぎず小さすぎない池を囲む土の小径(こみち)は、素朴な趣に富んでいて、季節の移り変わりとともに色とりどりの表情を見せてくれます。

なにより、ここは空が広い。

面積は決して大きくはないものの、ほとりに佇みぼんやり顔を上げてただ遠くを見ているだけで、頭も心もすーっとリセットされていくのです。

ちなみに、デジデトですっきりした後は、近くの洗足池駅か、となりの長原(ながはら)駅まで歩いて商店街をふらつくのもおすすめです。

地域に根づいたカフェやケーキ店、美味しい総菜店やベーカリー、イタリアンの店などが軒を連ね、五感をやさしく刺激してくれます。

洗足池のほかにも、私は東京都世田谷区の二子玉川(ふたこたまがわ)とその周辺も好きで、都内に用事があるときはたびたび立ち寄っています。

東名高速道路の東京インターに近く、浜松と都内とを行き来する際に立ち寄りやすいのです。

駅はつねに人が多く、街の中心部も大型百貨店や飲食店などでにぎやかですが、品ぞろえのよい大型書店があるかと思えば、裏通りには個性派のオシャレな雑貨店兼ブックスペースなどもあり、クリエイティビティを刺激してくれます。

人通りはあるものの都心ほどではなく、喧騒(けんそう)に疲れたらすぐ近くの多摩川沿いの広々とした空間に逃げることもできます。

昔から人混みが苦手な私。

混雑からすぐ「逃げられる」選択肢があるのはポイントが高い(空間の多様性って大事ですよね)。

秋の紅葉が見事な洗足池公園〔出典=『スマホに振り回されないデジタル解毒(デトックス)のすすめ』より〕
洗足池の住人たちとの(心のなかでの)対話もデジデトの潤滑油に〔出典=『スマホに振り回されないデジタル解毒(デトックス)のすすめ』より〕

そして、二子玉川も、なんといっても空が広い!

真冬の空気が澄み渡った日など、多摩川に面した河原の草原の向こうに、運が良ければ遠くの雪山をバックに走る列車(田園都市線)をのんびり眺めることもできます。

なんともシュールな景色でもありますが、まるでスイスの高地にいるかのような感覚にさえなるのです。

二子玉川もまた東京都心の近くにありながら、気軽に非日常の世界にトリップ(「逃避」とも言う)させてくれる、私にとって貴重な土地なのです。

■ぼーっとしたら大企業の部長に刺さった

【効果と成果】

講演前日の、わずか1時間の洗足池デジデト散策。

帰りの道すがら、話したいキーメッセージが「ふっ」と浮かんできて慌ててメモしました。

書きとめたメッセージを講演で伝えたところ、聴講した大企業の部長に刺さって意気投合。仕事の話を進めることになりました。

今度は、洗足池の神社にお礼の報告をしにいかなくちゃ。

皆さんもご自宅や仕事場からそう遠くない、ちょこっとデジデトできる場所を探して歩いてみてはいかがでしょうか。

意外な穴場がきっと見つかるはずです。

■強制的にスマホを手放す環境をつくる

ここまでで、皆さんもなんとなく「デジデトいいかも?」と思うようになったのではないでしょうか。

では、具体的にどう実践するか?

いきなり「週末まるごと」、ましてや「2泊3日」は現実的ではなく、ハードルが高いでしょう。まずは小さなデジタルデトックスに慣れてみることをおすすめします。

いっそのこと、物理的にデジタル機器を使いにくい環境に身をおくのも手です。

● 昼休みだけ、スマホの電源をオフにする
● 土曜だけ、メールやメッセージの通知を切る
● 電車やバスでの移動を、クルマや自転車やオートバイに切り替える

このように小さくデジタル機器から離れてみるのです。

鉄道やバスなどの公共交通機関はラクな反面、手持ち無沙汰にスマホをいじりがちです。

それは、駅やバス停で待っている人たち、車両に乗りあわせた人たちの姿を見ても明らかでしょう。

先日、久々にバスに乗ったところ、バス停にいる10人中8人、車内の23人中18人がスマホに見入っていました。

それくらい、私たちは移動時間や待ち時間を、デジタル機器に奪われているのです。

写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

ところが、クルマや自転車やオートバイでは、そうはいきません。

自分が同乗者ならさておき、運転者なら今や運転中のスマホなどの操作は道路交通法で禁じられていますから、デジタル機器をいじるわけにはいきません。

せいぜい、一定の制約条件の下でカーナビを操作するくらいが限度です。

このように、デジタル機器を操作しにくい環境に“強制的に”身をおくのも、デジデト習慣を身につける小さな一歩かもしれません。

私はふだん、クルマでの移動がほとんどです。

運転の大変さを感じつつも、いいデジデトの機会になっているメリットを感じています。

■「When条件」で毎日ぼーっとする習慣を

私たちはなにかと気になってスマホやパソコンの画面を見続け、メールの返信などの仕事に没頭しがちです。

そうならないために、ぼーっとする時間を「発動」するための「When 条件」「If 条件」を設けてはいかがでしょうか。

「○○したら、5分間ぼーっとする」などの発動条件を決めておくのです。

たとえば、次のとおり。

● 午前10時と午後3時に、10分間のコーヒータイムを設けてぼーっとする
● 正午と午後5時のチャイム(「夕焼け小焼け」などを流す自治体は多いですね)が聞こえたら、5分間ぼーっとする
● 日次報告書の作成が終わったら、ひと休みする

毎日のルーチン作業と組みあわせると、「毎日必ずやる」リズムを刻みやすくなります。

ちなみに私は「行き詰まったらぼーっとする」を、脳を休める発動条件にしています。

「メールにどう回答しよう」
「いい案が浮かばない」

こうして行き詰まったら、考えるのをいったんやめて遠くを見てぼーっとする。

散歩に出かける。

それだけでもいったん脳が休まり、その後考えが研ぎ澄まされて、深く考えることができ、いい回答案やアイデアが浮かぶことがよくあります。

意思決定の質も高まります。

このとき、「やばい、行き詰まった」などとつぶやいてみるのもおすすめです。

行き詰まった状態を言葉にすると、自分自身に「いまが、ぼーっとする時間を発動するタイミングだ」とリマインドする効果があります。

周りの人が「ひと休みしたらどうですか?」「コーヒーでも飲みましょうか?」など休憩をうながしてくれることもあります。

チームで、ぼーっとする時間を発動する「When 条件」「If 条件」を決めておくのも面白いかもしれませんね。

■「ひと作業終わったら、腕立て腹筋」

在宅勤務など、プライベートな空間で仕事をするときにおすすめです。

たとえば、メール対応やスライドの作成、いま取りかかっている突発業務など、ある程度まとまった仕事が完了したら、10回腕立て伏せをする。

または、20回腹筋運動をする。

「ひと作業終わったら、腕立て腹筋」を自分のルールにして取り組んでみるのです。

適度なデジデトや、運動不足解消にもなり一石二鳥です。

■午後の会議は午後1時30分以降に

沢渡あまね『スマホに振り回されないデジタル解毒(デトックス)のすすめ』(青春新書)

昼休みが正午〜午後1時だとしたら「会議は午後1時30分以降」と自分や職場のルールにします。

昼休み直後に会議があると、丸1時間は十分に休めません。

会議準備のために、慌ただしく食事しながらパソコンを操作したり、たまったメールやチャットをひたすら打ち返したりと、気持ちも落ち着きません。

昼休みにデジデトするためには「会議は午後1時30分以降」とし、準備や返信は昼休み明けの30分間に集中する。

そのようなタイムマネジメントも、デジデトしやすい環境をもたらします。

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沢渡 あまね(さわたり・あまね)
作家/ワークスタイル&組織開発専門家
1975年生まれ。あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/浜松ワークスタイルLab所長/国内大手企業人事部門顧問ほか。「組織変革Lab」主宰、DX白書2023有識者委員など。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『問題地図』シリーズ(技術評論社)をはじめ、『新時代を生き抜く越境思考』(同社)、『職場の科学』(文藝春秋)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『仕事は職場が9割 働くことがラクになる20のヒント』(扶桑社)など著書多数。
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(作家/ワークスタイル&組織開発専門家 沢渡 あまね)