「建物から言い争う声が」参政党・神谷代表の講演会が火ダネに…全企画中止「東大五月祭」悪いのは誰?

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事前からあった反発の声

5月16〜17日に東京大学本郷・弥生キャンパスで行われるはずだった「五月祭」で、16日午後にこの日のすべての行事を中止すると発表された。

この日は参政党神谷宗幣代表の講演会が開かれる予定だったが、16日朝に爆破予告があったために五月祭常任委員会が13時ごろに講演会中止を決定。14時には「安全確認のため」といった理由で、他の行事も中止することになったのだった。

講演会は保守系学生サークル『右合(うごう)の衆』が企画。16日午後、本郷キャンパス法文1号館25番教室で参政党神谷宗幣代表の他、同党所属の塩入清香参院議員、右合の衆の山田泰代表が登壇する予定だった。

講演会については、開催が発表された段階から学生有志らが抗議活動を行っていた。東大憲章の理念に掲げる「差別から自由な知的探求の空間」を守るために、神谷氏が過去に行っていた差別的・虚偽の発言の撤回をしたうえで講演を行うという誓約書に署名を求めるものだった。

16日の午前に五月祭に足を運んでみると、かなりの人が訪れていた。学生たちだけでなく近隣住民や、制服姿の高校生などさまざまな人たちがいる。神谷氏の登壇予定は12時だった。しかし、時間になっても一向に始まる気配がない。時間だけが進んだ13時ごろ。東大正門前に行ってみると、座り込みをして抗議をする者、プラカードを持ちキャンパス周辺を巡回する者たちが、続々と駆けつけていた。

神谷氏の登壇に反対していたのは学生たちだけではなかった。参政党への抗議団体にまで飛び火したようだ。

〈なんで神谷が東大に?〉〈くたばれ家父長制〉などの文言や、抗議声明文が書かれた看板などを持っている人たちが多数。正門前だけではなく、神谷氏が登壇する法文1号館前にもいる。

突然の中止に困惑する学生たち

法文1号館周辺には、入場券を求める人や、神谷氏の講演が始まらないことに対して常任委員に説明を求める人などが集まり、いつもの五月祭の雰囲気とは違う殺伐とした空間となっていた。神谷氏の講演に来ていた人は、若い人よりも年配の人が多いようだ。また、建物の中からは言い争う声も。常任委員会に建物の中に入らないように言われたので、講演を聞きに来たという男性(74歳)に中で起きていたことを聞いた。

「最初、11時から12時ごろに建物の中にいたのは数名の東大生たちで、座り込みをして抗議をしていました。そこに、15〜20名の参政党関係者が現れて、学生との間で口論のような言い争いになったのです。参政党の人たちは声が大きく、学生は言葉数が少なかったです。外部の抗議団体も建物内に入り込んで階段に座り込んでいたりと、かなり混乱していました。そんな状況で13時に常任委員会が神谷氏の講演中止を発表したのです」

そして14時ごろになると常任委員会からの「安全上の理由により全企画を中止します」というアナウンスが流れたのだった。

学生たちは「どういうこと?」「なんで?」といった言葉を発しながら出店を片付け始めていた。皆「何が起きているのかわからない」と、不安そうで状況がのみ込めていない様子だ。ある出店にいた学生も納得のいかない表情で語る。

「先ほど常任委員会から通達があり、企画の中止を求めてきました。何が起きているのかわかりませんが、恐らく神谷関連だと思っています。門の前に参政党への抗議団体がたくさん来ていたので、彼らが何かしたのではないでしょうか」

このような事態に学生の各団体のグループラインでは「ウゴウヲサガセ」という言葉まで飛び出していた。とくに五月祭を楽しみにしていた一般の学生たちからは、一連の騒動に対して憤りの声が上がっていた。

「五月祭でサークルを卒業する人もいます。中止を残念に思う人は多いでしょう。僕も数ヵ月前からずっと準備していた企画を、当日になって中止させられるのは、やるせない気持ちでいっぱいです。出店は基本学生がお金を出し合って運営をしているため、午後からの売り上げが全くない状態だと赤字になる。売り上げに関してはあきらめられますが、学園祭という思い出に影響が出ることは許せません」(別の学生)

学生たちからは「損害賠償請求」の集団訴訟を呼びかける声も上がっていたのだった。

カウンター団体が便乗した!?

そもそも神谷氏のように根強いアンチがいる人物を学園祭に招くことは妥当なのだろうか。東京大学が定める五月祭における「五原則・二附則」では、「事故の危険性がないこと」「本学学生が主体であること」「特定の宗教・政党の宣伝活動の禁止」などの5つの原則と、「公序良俗に反しないこと」「企業その他の諸団体の宣伝につながる行為の禁止」が附則として定められている。今回五月祭を案内してくれた卒業生によれば「原則はありますが政治的な人は呼べる」という。

「五月祭を含め、政治家を呼ぶことは可能です。今までも学生の企画で政治家などが登壇したことは多々あります。むしろ、このような事態になることを予見できなかった常任委員会側に問題があります。最近だと東大の学費値上げ問題で、パレードのようなことをしたときは、常任委員会が数名の学生を手配して人流の誘導を行い、混乱を避ける取り組みが行われていました。規模の大きい五月祭で、こうしたことができなかったのは準備不足だと思います」

だが、騒動が拡大した大きな要因は、学内手続きを通過させて講演会を企画した右合の衆や、企画を承認した五月祭常任委員会ではないとも語る。

「学生たちからすると、左派や右派の論争ではなく、大学と関係ない外部のカウンター団体が、五月祭の企画に便乗していると見えているようです。そして、直接的な中止の原因は爆破予告。愉快犯なのかどうかはわかりませんが、犯罪という暴力を仄めかすことによる言論への弾圧には断固反対です」(前出・卒業生)

16日の夜、五月祭常任委員会より17日は「夜間の警戒態勢の強化や、入構時の手荷物検査等により、安全を確保」したうえで開催するとの発表があった。17日は入場時のセキュリティチェックに時間がかかったものの、何事もなく無事に行われたようだ。

神谷氏は16日にXにて、〈今日の講演会は会場に聴衆が入れなくされたようで、中止とのこと。待機していましたが、やむなしですね〉と投稿していた。

五月祭は学生たちや訪れる一般市民の善意で成り立っている学園祭だ。何ヵ月も前から企画を準備してきた学生たちや、運営の学生たちの「無事に終わってほしい」という願いが暴力で踏みにじられることがあってはならない。

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取材・文・写真:白紙緑