Image: SpaceX

長く健康に暮らすのは無理?

いつか人類は火星でも居住空間を整えられるのでしょうか。その宇宙計画は世界各国で進められているものの、たとえ環境的に整備されたとしても、宇宙空間での生活が健康におよぼす影響が懸念されています。

重力と筋肉の関係性

2023年3月に24匹のマウスが、国際宇宙ステーション(ISS)へと送られました。NASAと宇宙航空研究開発機構(JAXA) の共同研究として、可変人工重力研究システム(MARS)で整えられた特殊な小動物飼育システムを用い、さまざまな異なる重力でマウスを飼育。重力の大きさが筋肉に与えた影響を調査分析した研究論文が、科学ジャーナルの「Science Advances」に掲載されています。

宇宙空間の微小重力、地球と同じ1Gの重力に加え、地球の重力の約67%となる0.67Gや、火星の重力に近い0.33Gの4環境を準備。そこでマウスを28日飼育した後、2023年4月に地球へ生還してきた23匹のマウスの筋肉などを詳細に調べました。その結果、筋肉の萎縮や筋機能の低下と重力の大きさは密接に関連していることが明らかになりました。

健康に生き続けられる重力のボーダーライン

いわゆる無重力空間において、筋肉の萎縮は避けられないことが判明してはいました。今回の研究において、たとえ0.33Gという、地球上に比べて小さな重力ではあっても、その大きさの重力があるならば、筋肉の萎縮は抑制されることが実証されました。とはいえ、骨格筋の変化は如実に認められ、火星の重力(0.38G)で生きるなら、大幅な筋機能の低下から逃れられない危険性が指摘されています。

一方、地球ほどの重力はキープできなくとも、0.67Gの重力下で飼育されたマウスは、筋繊維、筋機能ともに、目立った変化や低下を認めることはできませんでした。実験用マウスと人間では異なるかもしれませんが、この大きさの重力が、どうやら境界値ともいうべきボーダーラインとなり、筋力を保って健康に生き続けるうえで必須となってきそうですね。

ボーダーを下回る宇宙生活の課題

実は同様の重力の境界値を指摘した研究は、NASAの「Exercise Physiology and Countermeasures Project」 で研究プロジェクトを率いたLori Ploutz-Snyder博士によっても発表されていました。同博士は、人間の宇宙飛行士の筋肉の変化を調査分析したプロジェクトにおいて、筋機能をキープできる重力のボーダーラインは、最低でも地球上の半分の重力となる0.5Gが必要と結論。望ましいのは0.75Gの重力を保てる環境だとの見解が表明されています。

人間が健康に生き続ける筋力を維持するうえで、重力の境界値はどこになるのか? たとえボーダーラインを下回る重力環境においても、日々の運動でカバーできる限界値はどれほどか? その正確な数字を求め、今後も研究が進められる予定ですが、火星の重力のまま元気に暮らすことができないのは明白でしょう。ましてや月面の重力は、さらに小さい0.17Gとされており、これから人類が月に定住する環境を築こうとするなら、高いハードルとなってきそうですよね〜。

Source: Science Advances

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