茨城県が不法就労の「通報報奨金制度」受け付け開始…農家「フホーに頼らざるを得ない」「暗黙の了解」
外国人を不法に雇う事業者を対象とする「通報報奨金制度」について、茨城県は11日、ホームページで通報の受け付けを始めた。
外国人の不法就労者の高止まりへの対応措置だが、農家からは「人手不足で手が回らない」と切実な悲鳴も上がる。制度の実効性が注目される一方、専門家は「自治体が不法就労に頼らなくてよい仕組みづくりを進めていくべきだ」とも指摘する。(市川莉瑚、伊能新之介)
忙しい時の「不法さん」
「忙しい時に一時的に『不法さん』を雇っているという話は聞く」。八千代町の農家男性は、打ち明ける。不法就労の外国人は「不法さん」「フホー」などと呼ばれていて、男性のもとには、2年ほど前までは外国人が飛び込みで「仕事ありますか?」と訪ねてきていた。最近は「特定技能を使いませんか」という片言の電話もかかってくるという。
男性は技能実習や特定技能の在留資格がある正規の外国人を雇っているが「農家同士で通報し合いになったら怖い」と懸念する。
「暗黙の了解」、取り締まり増えれば回らない
県内の不法就労外国人は過去10年間で、2021年の2位を除き、いずれも1位で、昨年まで4年連続で全国最多となった。背景にあるのが人手不足の深刻化だ。鉾田市でサツマイモを栽培する農家男性は「書き入れ時に人が足りない。『フホー』に頼らざるを得ない」と話す。農業従事者が減り日本人を雇うのは難しく、「悪いことは分かっている。ただ、(ルールの)範囲内でやっていたらもうからない」と苦悩する。

市内で正規に外国人労働者を雇用している別のメロン農家の男性も「不法就労は暗黙の了解。おかしな話だが取り締まりが増えれば、鉾田の農業は回らない」とため息。制度の導入には「通報されることをしているんだからしょうがない」と理解を示す一方で、自身は「不法就労者を見ても通報はしない」と一歩引いた立場だ。
実効性に疑問も
県は受け付け開始に合わせ、注意点を記したガイドライン(指針)を公表した。外国人個人に関する通報や差別的な表現が含まれている通報は受け付けないことなどを記載し、「皆様からの通報は、不法就労の防止に欠かせない重要な情報源」と適切な通報を呼びかけた。通報が、警察の検挙などにつながった場合、報奨金1万円を支払う。
ただ、制度が実際に効果を持つかは見通せない。入管難民法にも外国人個人を対象とした同様の通報制度があるが、出入国在留管理庁によると2021〜25年度の直近5年間での支給実績はないという。
外国人の労働問題に詳しい東京都立大の丹野清人教授は「劣悪な環境・条件で働かされるケースもあり、雇用主の責任を問う視点は大事だ。ただ不法かどうかは外部からは分かりづらく、実効性に疑問が残る」と指摘する。問題の本質は、農家の人手不足だとし「地域や作物によって繁忙期は異なる。一農家が通年で雇うのではなく、各地の農家のニーズに応じて、労働者が移動しながら農業する仕組みの充実などが有効だ。県には、国などと連携し、農家が不法に頼らなくてすむ施策の強化を期待したい」と話す。
