《実態は中国製》事故多発で倒産のEVバスは、なぜ万博に採用されたのか きっかけは西村康稔・元経産相の「奨励」、“国産”のお墨付きを与える要素となった巨大工場の今
本誌・週刊ポストが問題を追及してきた「万博EVバス」は事実上の倒産となったが、導入後にトラブルが続発するようなバスがなぜ国家イベントで独占採用されるなどの扱いを得られたのか、謎は残る。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏がレポートする。
工場内には返品されたEVバスなどが数十台放置
大型連休中の敷地内は人気がなく、オフィス棟の裏に大阪・関西万博の"レガシー"として自動運転実証実験に転用するはずだった電気自動車(EV)バスが所在なく駐まっている。
関係者によると、工場内には全国のバス事業者から返品されたEVバスなどが数十台、放置されているという。
筆者が訪れたのは北九州市にあるEVモーターズ・ジャパン(以下、EVMJ)の巨大工場。
約5万8000平方メートルの広大な土地に最終組み立て工場や検査棟などを整備し、年間1600台のEVバス生産を目指すことを掲げていた。
大阪・関西万博では、EVMJのEVバスが一社独占で採用され、最終的に約190台が導入されるなど、その実績にも注目が集まった。だが、国内生産の計画は頓挫し、EVMJは4月に民事再生手続きに入り、事実上倒産したのは既報の通り。
しかしなぜ、閉幕後1年も経たずに倒産するような企業のバスが万博で採用されたのか。
運行事業者の大阪メトロの100%株主である大阪市の横山英幸市長は自身の「就任前」だからと選定過程を語らないが、EVバスの調達に対し、当時経産相だった自民党衆院議員の西村康稔氏が「激怒」したことが大きなきっかけだったという。
万博関係者が語る。
「2022年11月の西村大臣と吉村洋文・大阪府知事との会談時に、国産EVバスの入手に苦労しているとの話題が出ました。さらに会場と駅を結ぶシャトルバスに中国のEVメーカー大手・BYDからの調達が固まっていたことに西村大臣が激怒し、関係省庁や事業者などがBYDとは別のバスを調達する検討を始めました」
西村元経産相は「日本企業製バスの導入を奨励しました」
そうしたなか、創業間もないEVMJのバスが割り込めたのは、同社が「国産EV」を最大の武器として宣伝していたからだという。
「万博で世界に日本のEV技術をアピールすることが関係者から要望されたが、当時EVバスを量産する国内メーカーは皆無でした。『国内で最終組み立てを行なう国産EVバス』を猛アピールする新興企業のEVMJが重宝されたのです」(前出・万博関係者)
事実、キーマンのひとりの西村氏は万博開幕直後、Xにこう投稿した(2025年4月15日の投稿)。
《大阪のバス会社が中国製EVバスの導入を進めていたことに危機感を持ち、日本企業製バスの導入を奨励しました》
重要な役割を担ったのが冒頭の工場だ。大阪府内部では、中国製バスに激怒する西村氏に対し、EVMJについては「部品は中国製だが日本企業。北九州に巨大工場を建設中で、今後はこの工場を拠点にEV製造を展開予定」との認識をまとめた。建設中の工場が"国産"としてのお墨付きを与える要素になっていたことが窺える(府は補助金が支払われた実績を挙げ、「国産かどうかは補助要件にはない」とし、西村氏からは回答がなかった)。
大阪府だけではない。商用EVの国産化を目指し、最終組み立て工場の建設を進めると訴えるEVMJに対し、経産省所管の中小企業基盤整備機構は銀行団からの融資50億円のうち25億円の債務保証契約で、資金面でも支えた。
だが既報通り、EVMJが謳う「国産EV」の実態は、3C認証(中国の安全認証)を得ていない中国メーカーが製造した車体を並行輸入したものに過ぎず、工場内でEVバスを組み立てた実績は未だ確認されていない。
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【プロフィール】
加藤久美子(かとう・くみこ)/自動車生活ジャーナリスト。山口県下関市生まれ。大学在学中に国産車ディーラーで納車・引き取りのアルバイトに明け暮れ、卒業後、日刊自動車新聞社に入社。1995年からフリーに。『くるまのニュース』『ニューモデルマガジンX』『ベストカー』などの自動車メディアのほか、週刊誌に寄稿。年間約300本の自動車関連記事を執筆している。
※週刊ポスト2026年5月22日号
