磐越道バス事故「予算を抑えたい」要望あった? 食い違う説明、学校の責任はどこまで
福島県郡山市の磐越自動車道で北越高校の生徒20人を乗せたマイクロバスがガードレールに衝突し、男子生徒1人が死亡した事故。
運転していた男性は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで逮捕され、福島県警は同じ容疑でバスの運行会社を家宅捜索した。
報道によると、運行を手配した新潟県五泉市のバス会社「蒲原鉄道」は5月6日夜の記者会見で、北越高校側からの依頼を受け、レンタカーのマイクロバスを手配したと説明。学校側からは、ドライバーの手配に加え、「予算を抑えたい」といった要望があったと主張した。
一方、学校側は5月7日の会見で「事実ではない」と反論しており、双方の説明が食い違っている。
さらに、5月10日の2回目の会見では、バス会社との間で見積書や契約書は交わしていなかったものの、過去にも依頼してきた経緯から、「蒲原鉄道のバスを蒲原鉄道の運転手が運転する」と認識していたとした。
次々と明らかになる事故の背景。学校側の責任はどこまで問われるのか。澤井康生弁護士が解説する。
●学校が「予算優先」を求めていた場合の法的責任
学校側とバス会社側の主張が食い違っているため、現時点では場合を分けて検討する必要があります。
仮に、バス会社側の「学校が予算を抑えたいと要望した」という主張が事実だとすれば、バス会社は学校側の意向に沿って、レンタカーと運転手を紹介したことになります。
ただし、学校は生徒との関係で安全配慮義務を負っています。
最高裁も、課外活動における学校側の責任について、次のように判示しています。
「教育活動の一環として行われる学校の課外のクラブ活動においては生徒は担当教諭の指導監督に従って行動するのであるから担当教諭はできる限り生徒の安全にかかる事故の危険性を具体的に予見し、その予見に基づいて当該事故の発生を未然に防止する措置を執りクラブ活動中の生徒を保護すべき注意義務を負うものというべきである」(最高裁平成18年3月13日判決)
今回の事故では、バス会社側が「レンタカー」と「運転手」をセットで手配していたと説明している点も注目されています。
一般に、自家用車を使って運転手付きで有償運送をおこなう、いわゆる「白タク」行為は、道路運送法で禁止されています。(道路運送法47条)。
旅客運送をおこなうには、国土交通大臣の免許が必要です。無免許営業の場合、運転手の健康管理や車両の安全管理が十分におこなわれていないおそれがあります。
そのため、学校側がこうした運行形態の問題性を認識していながら依頼していた場合、生徒に対する安全配慮義務に違反したと判断される可能性があります。
●「バス会社任せ」でも学校の責任は否定されない?
一方で、学校側の主張が正しいと仮定すると、学校は貸し切りバスを依頼したにもかかわらず、バス会社側がレンタカーと運転手を手配していたということになります。
この場合、学校側は専門業者であるバス会社に依頼しているため、一見すると安全配慮義務を尽くしているようにも思えます。しかし、必ずしもそれだけで責任を免れるとは限りません。
前述のとおり、学校側は生徒に対する安全配慮義務を負っています。そして、学校側が依頼したバス会社や運転手は、学校側が安全配慮義務を履行するための「履行補助者」として評価される可能性があります。
そのため、履行補助者に過失が認められる場合、学校側も、そのような補助者を利用したことについて責任を問われる可能性があります。
実際、過去の裁判例でも、高校の野外活動中に発生したカヌー転覆事故で生徒が溺死した事案について、学校側が専門業者を利用していた場合でも、安全配慮義務違反を認めたケースがあります(東京地裁平成20年10月29日判決)。
さらに、今回の事故では、レンタカーと運転手を組み合わせた運行形態が、実態によってはいわゆる「白バス」(道路運送法78条)に該当する可能性も指摘されています。
また、報道では、運転手が二種免許を持っていなかったことや、足が不自由で、免許返納も検討していたことなども伝えられています。
こうした事情を踏まえると、学校側にも、実際に運行を担う運転手や運行形態に問題がないかについて、一定程度確認すべき義務があったと評価される可能性があります。
【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(2等陸佐、中佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/
