黒島結菜が「家族から愛されている、大切にされている」と感じた瞬間
虐待、ネグレクト、性暴力……ひとり親家庭を取り巻く苛烈な現実を描いた湊かなえさんのミステリー小説『未来』が映画化される。この作品の主人公は、複雑な家庭環境に育った小学校教師・篠宮真唯子。
真唯子を演じた黒島結菜さんにインタビュー。黒島さんは前編で「20代から子どもの虐待問題に心を寄せていた」と話している。監督の瀬々敬久(ぜぜ たかひさ)さんも、苦しい状況を生きる人々の背景を丁寧に描く作品に定評がある。黒島さんとは、2015年映画『ストレイヤーズ・クロニクル』以来、11年ぶりの作品だ。後編では、物語の鍵になる愛や言葉について、さらに掘り下げていく。
こういう現実があることを多くの方に知ってほしい
――多くの子供たちが健全な環境で育つようにするために、現実的に考えている黒島さんにとって、子どもの虐待シーンも多い『未来』で真唯子を演じることは、辛さや苦しみを伴ったのではないでしょうか。
黒島「撮影はハードで、辛く苦しい気持ちになることが多くありました。でも、それと同時に困難な環境にいる子どもたちの切実な思いが伝わってきたのです。撮影中も、『このような現実があることを、多くの方に知ってほしい』『この作品が子どもたちの未来につながってほしい』という一心で取り組んでいました。
真唯子は辛く苦しい経験を乗り越えて教壇に立っています。だからこそ、子どもたちの気持ちがわかり、手を差し伸べることができる。その強さや弱さ、優しさについて、繊細に表現しました。なかでも思いを伝える言葉を大切に演じていきました。子どもは大人の言葉をよく聞いていますし、ふるまいを見ていますから」
子どもたちにかける言葉
――確かに子どもは大人のことをよく見ている。些細な一言は大きな自信になったり、深く傷つくこともあります。黒島さんが、大人の言葉に違和感を覚えた経験はありますか?
黒島「難しいですね……そういえば、3歳くらいの時に、保育園で友達とおもちゃの取り合いをしたことがあったんです。結局、相手に譲ることになってしまい、先生に言いに行きました。すると、先生から『おめでとう』という言葉が返ってきて……」
――会話の流れとしては、「えらかったね」とか「次、譲ってもらおうね」ですよね。
黒島「そうですよね。まさかの『おめでとう』があまりにも衝撃的で、子どもながら『どういう意味なんだろう?』と考えてみましたが、わからず、時々思い出すのです。
言葉はそれほど心に与える影響が大きい。ポジティブな言葉でも、ネガティブな言葉でもそれを記憶し、その人の人生の中に生きるものだと考えています」
――考えると、先生は「譲れるようになっておめでとう!」という意味でおっしゃったのかもしれませんね。黒島さんがご自身のお子さんに意識的にかけている言葉はありますか?
黒島「まだ会話は難しいのですが、『ありがとう』とか『大好きだよ』など、ポジティブな言葉をかけるように、意識しています。ただ、危ないことをやり始める時期なので、とっさに『それはだめ!』と言ってしまう。その後すぐに『もう少し見守ってあげればよかった』とか『自由にさせてあげればよかった』と思うのですが。子育ては難しいですね。
今は、この程度ですが、これから言葉を話すようになり、意思を伝えるようになり、小学生、中学生と成長していきます。その過程でお互いに意見を言い合うことが増えるでしょう。その時々で丁寧に向き合っていきたいと思っています。私の思いは、きっと伝わりますから」
父から愛されていると感じたこと
――では、黒島さんご自身が最近、ご両親から「愛されている、大切に思われている」と感じたことはありますか?
黒島「先日、地方のロケがあり、私がロケ先まで子どもを連れて行くことになったのです。ですが、やはり一人では心配。両親に相談したら、父が『サポートに行くよ』と言ってくれました。わざわざ沖縄から来てくれて、本当にありがたかったですし『私はこれほどまでに愛されているんだ』と改めて感じました」
――黒島さんが真摯に仕事に向き合っていることをサポートしたいし、お孫さんにも会いたかったんですね。何歳になっても親と子は親と子ですが、映画でも子供が大人のことをよく見ることが伝わってきます。
黒島「それは、お芝居をしていても感じました。『未来』で、私が担任を受け持つ生徒・章子を演じた山粼七海さんは、目に力があって、何かを強く思いながら私を見ていました。子どもには、人を見抜く力がある。子どもの目に見つめられても恥ずかしくない大人になろうと、より強く感じました。子どもは子どもなのですが、子ども扱いすべきではないと改めて思います」
手紙は、誰かがその人を考えて書いているもの
――子どもは弱い存在ですが、物事の真実を見るほか、大きな力を持っている。これを未来につなげるのは大人の役割です。章子も「20年後、30歳になった大人のわたし」から手紙を受け取り、将来への希望を持つようになります。
黒島「きっと章子は『ホントに未来からの手紙なの?』と疑ったと思いますが、手紙が手元に来ることは、誰かが章子のことを考えながら、書いているということ。父が亡くなり、無気力になった母と生活する章子にとって、手紙の存在は希望そのものであり、心の支えになったのではないかと思うのです」
大人も余裕がないと希望を感じられない
――子供の未来を思うほど、大人も希望が持てる社会になってほしいと願います。そのために、何をすればいいと思いますか?
黒島「やはり、自分に余裕がないと希望を感じられないと思うので、まずは自分をケアすることから始めるといいのではないでしょうか。私自身も、日々いい状態でいられるように、自分の時間を作るようにしています。子育て中の私は、お風呂がその時間。一人の空間で、自分自身と向き合い、その日あったことは、水と一緒に全部流してしまう。このリセットをするだけで、気持ちが切り替わり、心に余白ができると感じています。
小さなことの積み重ねで、余裕は生まれていく。小さな力が集まって、社会全体がいい方向に変わってほしいと思います。
一人で抱えきれない苦しみの中にいる人は、誰かの力を頼ったり、声をあげたりすることも大切です。声を出せば、きっと誰かが助けてくれるでしょう。『未来』はそういう希望も感じさせる作品です。ぜひ、劇場で大きなパワーを感じてください」
『未来』は社会問題を題材とした、ドキドキハラハラのエンタメミステリー作品です。子ども達の友情や、親子の愛情、子どもを思う母の愛情など、心が満たされるシーンもたくさん。スピード感あふれる物語を楽しんだ後、心に残った“何か”は、きっとあなたの人生を深めるエッセンスになるはずです。
黒島結菜(くろしまゆいな)
1997年沖縄県生まれ。2013年映画『ひまわり』で俳優デビュー。2019年映画『カツベン!』で、「第43回日本アカデミー賞」新人賞を受賞。2022年、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』でヒロインを演じる。NHK大河ドラマ『花燃ゆ』(2015年)・『いだてん 〜東京オリムピック噺〜』(2019年)、『時をかける少女』(2016年・日本テレビ)、ドラマ『クロサギ』(2022年・TBS)『絶対零度〜情報犯罪緊急捜査〜』(2025年・フジテレビ)NHKスペシャル時代劇「眠狂四郎」(2026年・NHK)映画『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』ほか、話題作に出演。
『未来』
小学校4年生の担任を受け持つ篠宮真唯子(黒島結菜)の教え子・章子(山粼七海)のもとに一通の手紙が届いた。差出人は「20年後のわたし」。章子は返事を書くことで、父(松坂桃李)を亡くした悲しみや、心を閉ざした母(北川景子)との孤独な日々を乗り越えていく。やがて中学校へと進んだ章子を待っていたのは、担任も加担する壮絶ないじめ、母の新しい恋人からの暴力ほか、理不尽な力に翻弄される。尊厳や生活の安全が奪われる深い絶望の中、章子は唯一の友人・亜里沙と「親を殺そう」と計画を立てる。真唯子は章子を救おうと手を尽くすが……。過酷な環境に飲み込まれる中で、「未来のわたし」から届いた手紙は、皆の希望につながっていくのだろうか。
ヘアメイク:加藤恵/MEGUMI KATO スタイリスト:伊藤省吾(sitor)/shogo ito(sitor)
●衣装クレジット
・ニット74,800円
・スカート84,700円/共にマメ クロゴウチ(マメ クロゴウチ オンラインストア)
・シューズ176,000円/ジェイエムウエストン(ジェイエムウエストン 青山店)
・イヤーカフ455,400円
・リング(ピンクゴールド)916,300円/共にレポシ(レポシ日本橋三越本店)
◎問い合わせ先リスト
・マメ クロゴウチ オンラインストア
www.mamekurogouchi.com
・ジェイエムウエストン 青山店
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03-5485-0306
・レポシ日本橋三越本店
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03-6262-6677
