元プロ野球選手の父が「山田家は土方歳三と家紋が一緒だぞ」と…山田裕貴にハードスケジュールを走り続けることを決意させた“運命的な出来事”
2025年は“山田裕貴イヤー”だった。主演映画が立て続けに3本公開。そのひとつ『爆弾』で第49回日本アカデミー賞・優秀主演男優賞に輝くなど、獅子奮迅の活躍ぶりだ。
【画像】山田裕貴が撮った“運命的な出来事”の瞬間の写真
2026年もその勢いは止まらず、日曜劇場『GIFT』に出演中のほか、新撰組を描いた主演ドラマ『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の全世界配信が決定(スペシャルドラマ「江戸青春篇」、ドラマシリーズ「京都決戦篇」がU-NEXTで配信中)。100以上の国と地域に発信されるビッグプロジェクトだ。
『週刊文春』2026年4月30日号(4月23日発売)では、巻頭グラビア「原色美男図鑑」にて、“山田裕貴の善と悪”をテーマにした撮り下ろしカットを5ページにわたって掲載した。
『ちるらん』で土方歳三を生きた彼が志す“正義”、“最強”、そして“散り様”とは? 誌面には掲載しきれなかった、およそ1時間、ノンストップで語ってくれた熱い想いを、特別にロングバージョンでお届けする。(全2回の1回目)

山田裕貴さん Ⓒ橋本エイジ・梅村真也/コアミックス ⒸTHE SEVEN
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山田さんの故郷・名古屋発祥のものと言えば…
――「原色美男図鑑」でご登場いただくのは初めてですね。とても嬉しく思っています。
山田 こちらこそです。僕も知っていた企画なので、お声がけいただき嬉しいです。
――光栄です。俳優としてはもちろん、「カレーハウスCoCo壱番屋」のアンバサダーとしても注目しています。山田さんと同じく愛知県出身なので。
山田 ありがとうございます(笑)。
――山田さんは俳優を志して18歳で上京し、2011年にデビュー。そして今や30代にして出演作がすでに100作を超えているとのこと、まさに破竹の勢いです。昨年は『木の上の軍隊』『ベートーヴェン捏造』『爆弾』と主演映画が3本公開。そして今春公開されたドラマ『ちるらん 新撰組鎮魂歌』では、主人公・土方歳三がバラガキから武士へと成長していく姿を演じています。全世界100以上の国と地域へ配信されるビッグタイトルです。
山田 こうしたプロジェクトに呼んでいただける、それも主演に選んでいただけるありがたさをとても感じました。
オファーを受けた理由は…
――正直に申し上げると「また主演!?」と驚きました。常に第一線を走られていますね。
山田 『ちるらん』のオファーをいただいた時、僕としては「お休みをいただこうかな」と考えていたところで……葛藤しました。ありがたいことに主演作が続いていたこともあって、お引き受けするとなると、準備期間がかなり限られてしまう状況で、10日間連続で10パートくらいあるアクションをすべて体に叩き込んで、そのまま現場にイン。幕末の志士たちの生き死にを演じるのに、こんなにもタイトなスケジュールで臨んでいいのだろうか、そんな俳優になっていいのだろうかと。
――それでもオファーを受けたのはなぜですか?
山田 『ちるらん』のプロデューサー・森井(輝)さんが「山田くんが抱えている鬱憤を、全部晴らしてほしい」と言ってくださったんです。僕、人の熱意に弱いんですよね……。「本当にちょろいな」と思うくらい、すぐにやられてしまうんです(苦笑)。こんなに熱を込めてオファーしてくださるなら、立ち止まるのはやめて、刀を振っていた方がいいか、と。何より「やらずに文句言うな。逃げるな」という話じゃないですか。
「いやお前、山田家は土方歳三と家紋が一緒だぞ」
――まずは飛び込んでみようと。
山田 はい。そう腹をくくったら、とても運命的な出来事が次々と重なっていったんです。去年亡くなった父(元プロ野球選手・山田和利)が「山田家は土方歳三と家紋が一緒だぞ」と教えてくれました。
――それは震えますね。
山田 しかも、そのご縁を知って(新撰組隊士の練習場だった)壬生寺に行き、参拝後に振り返ったら、虹が出ていたんです。「ああ、これは土方歳三として生きろってことなんだろうな」と。そうした日常の一瞬一瞬に突き動かされました。
自分の中での歯車がはまった瞬間
――現場に入られる時には、迷いは晴れていましたか?
山田 撮影の初日に挑んだのが、試衛館で(鈴木伸之演じる)近藤(勇)さんと戦うシーンでした。そこで歳三は「弱けりゃ死ぬ、それだけのことだろ」と啖呵を切るのですが、その時に「ああ、僕も歳三と同じで、戦うことに血が滾るし、命を燃やすのがきっと好きなんだろうな」と実感したんです。
その後の「誰にもできねぇことやんのがかっけぇんだろうが!」という叫びがまたすごく響いて。……自分で言うのも烏滸がましいのですが、これだけハードなスケジュールをずっと走り続けている人って、もしかしたら、そんなに多くないのかなと思うんです。
――尋常ではないですよ。
山田 いったん立ち止まるべきじゃないかというモヤモヤもあったけれど、もうそこは無視する。考えない。山田裕貴という人間だから、がむしゃらに走り続ける生き方になっているんだろうし、だからこそ、孤高のバラガキだった土方歳三という男に役として出会ったのだろうし。
幕末の時代はきっと「明日死ぬかもしれない」という出来事の連続だったと思うんです。なら、そういう人を生きるのに、僕はちょうどいいかと。「余計なことは全部捨てて、ただ作品に真っ直ぐ向き合えばいいんだ」と自分の中での歯車がはまった瞬間でした。
それに『ちるらん』という作品に向かって一緒に走ってくれる仲間が大勢いてくれて、それが何より大きかったです。
『ちるらん』の現場に入るまでは、とても強く、孤独を感じる日々だった
――そこも土方とどこか重なりますね。たった独りで生きていた彼を変えたのは、試衛館で出会った仲間たちでした。
山田 そうなんです。『ちるらん』は新撰組の善と悪を問う物語でもありますが、僕もそれに通じることを深く考えていた時期でした。「僕が守りたい正義とは何なのか」「僕はこれからどこへ向かうべきなのか」という問いにずっと向き合っていたんです。なんでしょうね……、『ちるらん』の現場に入るまでは、とても強く、孤独を感じる日々でした。
――「孤独」ですか?
山田 『ちるらん』に限らず、これまでの撮影の現場では一切感じたことはないです。スタッフの皆さんやキャストの方々と、心をひとつにして「この作品を絶対に良いものにするんだ!」と命懸けで突き進めるので。
――全員で同じ船に乗って、目指すべき方角を共に見つめられると。
山田 はい。だから外の現場には「仲間」がたくさんいる。でもそこを離れれば、僕もみんなも結局ひとりの人間です。誰もが「人生の主人公」を生きているわけなので、他人のために命を懸けられる人はめったにいない。
もっと身近にも「仲間」が欲しいと願ってしまう
――どうしても、自分が第一、他者は二の次、となりがちですよね。
山田 そうなんです。誰だってまずは自分を守る行動に徹するじゃないですか。「僕はあの場所に行きたい。そのためなら何でもする!」と言った時に「じゃあ、私もあなたに命を預けるよ」と一緒に汗を流して懸命に走ってくれる仲間は、もう限りなく少ないと思うんですよね。
それは仕方がない、そうわかってはいるんです。人それぞれ守りたいものはあるし、組織に属せばさらに様々な思惑が働くでしょうし。でもやっぱり、僕は孤独を感じてしまう。現場に入ってみんなで熱意を燃やせば燃やすほど、そこを離れた時の温度差に悩み、苦しみ……。もっと身近にも「仲間」が欲しいと願ってしまうんです。
――そんな時に『ちるらん』と出会ったわけですね。
山田 撮影に入ってみて「僕はやっぱり、作品に向かって仲間と命を燃やすのが好きなんだな」とあらためて強く感じました。強力な先輩たちが味方してくださったり、「(主人公が)裕貴だからやろうと思った」と新撰組隊士のみんなが言ってくださったり。鈴木伸之なんて自分も出演者なのに「山田裕貴の代表作を作りたい」と熱弁してくれて。
――鈴木さん、制作発表のイベントでもおっしゃっていましたね。
山田 本当にずっと言ってたんですよ。撮影の裏でも、お酒を酌み交わしていても、ずっと。「な、なんなんだコイツは」と感動しました。僕が死に物狂いでやっている姿がみんなの心を動かしたのだとしたら、モヤモヤを振り切って飛び込んだ意味があったのかもしれません。
……きっと、歳三さんもそうだったんだろうなって。全力で生きている姿が周りの魂を揺さぶった。そのリンクを軸に役をつくっていけばいいんだという気持ちになれました。本当に、今回も外の仲間に助けられましたね。
リアルな想いが、脚本を超えてしまうことも
――戦いを重ねるごとに、土方の剣には、仲間や、時には敵の想いや人生も乗っていきます。『ちるらん』の物語とも非常に響き合うお話だと感じました。
山田 僕らのリアルな想いが、脚本を超えてしまうこともありました。『ちるらん』は漫画原作で、スタッフ・キャスト一同、その世界観をとても大切にしていたんです。セリフも漫画からほぼ書き写したといっていいほど忠実でした。
――確かに。言葉遣いも現代的で、一般的な「時代劇」のイメージに収まらない大胆な脚色がなされています。
山田 おっしゃるとおりで、全員が原作をリスペクトしていたので、時代劇よりは「漫画の実写化」という色が濃い作品だと思います。再現すべき絵や言葉は原作に詰まっている。ただ、演じる僕らはリアルタイムを生きていますから、芝居をしていくうちに“生の感情”がどんどん湧き上がってくるんです。
(綾野剛演じる芹沢)鴨に対峙した時や、ケンティー(中島健人)が演じる(岡田)以蔵に会った時、脚本に書かれている以上の気持ちが溢れ出してきてしまって。ここには書かれていないけれど、思うことがあまりにもありすぎる。それを僕たちはどこまで表現すべきなんだろうと。
史実に重きを置いた時代劇では叶わない芝居ができるのが『ちるらん』
――そんな時は渡辺一貴監督と相談を?
山田 監督はもちろん、助監督さんも、カメラマンさんも、照明部さんも、みんなで現場を止めて話し合いました。僕は「新撰組会議」と呼んでいたんですけど、本当に1時間くらいずっと意見を出し合うこともありました。それを良しとしてくださる渡辺監督がいて、「こうした方がいいのでは」と怖気づかずにアイディアを出してくださる皆さんがいて……。『東京リベンジャーズ』でご一緒したスタッフさんも多かったので、僕がしっかり意見交換したいタイプなのをわかってくださっていたのだと思います。でも僕だけでなく、本当にみんなが「溢れてくる気持ち」を抱えていて、その表現を真剣に突き詰めていました。
――現場で生まれたアイディアのひとつが、松本潤さん演じる会津藩主・松平容保に土方が剣を向けるシーンだそうですね。あの時代だったら即首が飛ぶ「ありえない」所業で、史実に重きを置いた時代劇であれば、まず叶わないお芝居だろうなと。
山田 それができるのが『ちるらん』なので。さらに殿が……あ、普段も殿って呼んじゃっているんですけど(笑)、松本潤さんとの関係性があったからできたお芝居でもあります。
――大河ドラマ『どうする家康』でも主従関係の役柄でしたものね。
山田 はい。そこで築いた信頼があったからこそ、血気盛んで向こう見ずな歳三を象徴する大胆なシーンに挑戦できました。『ちるらん』は何でもありですが、それはキャラクターの本質を伝えることにとてもこだわった結果なんです。
『ちるらん』に限らず、歴史ものはファンタジーに振りやすい分野ではないのかなとも感じています。現代を生きる人は誰もその時代の「本当」を目撃していませんから。もちろん、歴史の学者さんたちが明らかにされた真実も多くありますが、僕らの想像も同じくらい、いえ、それ以上にたくさんあるはずなので。
――実体験ではありませんからね。
山田 はい。タイムスリップしてこの目で見ることができない限りは、推測や憶測を信じないようにしています。鵜呑みにしない、という表現の方が近いかな。
俳優をやっていると、とくにその姿勢は大切だと感じます。どんな役のことも100%はわかってあげられませんから、理解した気になってはいけない。そこはちゃんと忘れずにいたいなと思います。そもそも現実の世界でも自分のことすら完全にはわからないじゃないですか。
喧嘩殺法から「武士になったな」と感じられる剣になるまで
――「わからない」ゆえに、役に真摯に向き合えるのですね。『ちるらん』は殺陣においても規格外で、肉弾戦のように超高速・超高密度で、感情のうねりが伝わってきます。「ジャパニーズ・ソード・アクション」と銘打ったこの殺陣は、どのように生まれたのでしょうか?
山田 それはもう、園村(健介)アクション監督のおかげです。歳三の戦い方って、最初は本当に喧嘩殺法なんですよね。
――金的への攻撃も辞さないという。
山田 そうです(笑)。それが最後の戦いでは「うわ、武士になったな」と感じていただける剣になっている。歳三の成長の流れまで表現する、素晴らしいアクションを作ってくださいました。プロローグの「江戸青春篇」だけでも、後半の(安藤政信が演じる田中)新兵衛と橋の上で一瞬対峙するあたりでは、もうだいぶ型が出来てきていますしね。バラガキから武士への変化を楽しんでいただけたら嬉しいです。
――言葉だけでなく、剣を交わすからこそ、感じられるものはありますか?
山田 ほんと、楽しいです。無駄なことを考えず、己の体を信じるのみ。やっていくうちに見えてくると言いますか、ああ、「刀が見える」ってこういうことなんだろうなと。生死を懸けていた「本物の武士」の領域には絶対に入れませんが、その片鱗を齧ったくらいの気持ちは味わえました。
それにアクション練習は人間性がものすごく出るんです。そこがまた面白い。例えば(佐々木只三郎役の)金子(ノブアキ)さんは、まるでコットン100%みたいな優しい方なのですが、アクションではめちゃくちゃ力強くて。「痛くなかった? 大丈夫だった?」ととても気遣ってくださるので、僕も「大丈夫です」と答えつつ……、実は痛い時もありました(笑)。でもやっぱり痛みを感じないと、こちらも次の刀を出す時に力がグッとこもりませんから。
「幕末の世に生まれていたら、殺し屋にはなれないんだろうな」
――全力で向かってきてくれるからこそ、全力を発揮できると。
山田 はい。お互い本気でぶつかり合える方が、僕は嬉しい。……って言っている僕が一番気にしいなんですけど(苦笑)。練習が終わるとすぐに「大丈夫ですか、大丈夫ですか!?」って駆け寄っちゃうんです。「もし本当に幕末の世に生まれていたら、武士にはなれたとしても、殺し屋にはなれないんだろうな」とつくづく感じました(笑)。
――山田さんは非情になれないイメージです。
山田 ただ、痛みが喜びに変わる瞬間は何度もありました。殺陣とはいえ、本気で魂を懸けたやり取りをできるのが嬉しいし、たまらなく楽しいんですよ。その究極が鴨じゃないですか。「本当に俺を殺してくれよ」と心底欲している。
――「暴力」が人生の核になっていて、それこそ「本気の命のやり取り」を求めているキャラクターです。
山田 だから、僕の中には鴨も眠っているのかと。それがまた、歳三と鴨が「俺たち似た者同士だよ」と通じ合うところにもリンクするんです。
やっぱり刀には人が出る
――なるほど。
山田 それは綾野さんと刀を交わして得た気づきでした。金子さんも安藤さんもケンティーも、みんなが色んな面を僕に教えてくれたし、与えてくれました。ノブ(鈴木伸之)とはこれまでもアクションの作品で共演していて、どんな力で臨むか、どう動くかもわかっているつもりでしたが、それでもやっぱり新しい発見があるんですよね。彼は本当に繊細な子で、周囲への気配りができるタイプ。ああ見えて意外に優しいんです(笑)。本当に色んな人間がいて、面白いなと感じられる。やっぱり刀には人が出るんでしょうね。
――新撰組結成を描く、プロローグの「江戸青春篇」からすでに疾風怒濤のアクションだったので、「京都決戦篇」のラストはどんな戦いが繰り広げられるのか、とても期待しています。
山田 「江戸青春篇」は本当に始まりの始まりですから! もちろんそこでも新兵衛をめぐるエピソードなど熱いドラマが描かれていますが、『ちるらん』全体を通して言えば序章です。アクションはもちろん、キャラクターの成長や変化の波も、大きく高まるのは「京都決戦篇」なので。最後まで観ていただければ、真に楽しんでもらえると思います。
【原色美男図鑑(『週刊文春』2026年4月30日号掲載)】
撮影 神藤 剛
ヘアメイク 小林純子
スタイリング 森田晃嘉
衣装協力 A LEATHER/saby/YUTA MATSUOKA/PORTER CLASSIC
〈「僕もエキストラ出身で、ずっとコンプレックスを背負ってきて…」山田裕貴が共演者・佐藤二朗の日本アカデミー賞受賞に「わけわからないくらい泣いた」深い理由〉へ続く
(「週刊文春」編集部/週刊文春)
