いつのまにか全国に拡大「オレンジ色の花」 実は「アルカロイド系の毒素」を含む″地中海沿岸″うまれ
通勤途中、道ばたや空き地にふわりと咲くオレンジ色の花が風に揺れていました。きっとみなさんも、一度は目にしたことがあるはずです。
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一見すると、きれいな雑草ですが、その正体は外来種の「ナガミヒナゲシ」です。昔は日本にはいなかったのに、気づけば全国に広がっていた静かな侵入者です。
原産地は日本から遠く離れた地…
──どこからやってきたのでしょうか。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「ナガミヒナゲシの原産地は、乾燥した地中海沿岸。日本には1960年代頃に持ち込まれ、今ではすっかり定着したとされています。
こんな場所にまで咲いている
──街路樹の根元や石垣の隙間などで咲いているのを見たことがあります。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「周りを見てみると、他の植物がちょっと遠慮する場所に、すっと入り込んでいる。都市の隙間にぴたりとはまり込んだ、いわば植物界の隙間産業の成功例です。
ナガミヒナゲシは漢字で『長実雛芥子』。
ヒナゲシに似た花と、細長い実が名前の由来です。分類はケシ科。茎や葉を傷つけると、白く少し粘りのある乳液が出てきます。
この乳液にはアルカロイド系の成分が含まれており、人によってはかぶれを起こすことがあります」
「草刈りなどの際はゴム手袋などを使い、付着したかも、と思ったら早めに洗い流す。
この程度の対策で十分ですが、きれいに見えるけど無害ではないというのは覚えておきたいところです。
なお、ケシ科と聞くと少し身構えますが、麻薬成分は含まれていませんのでご安心を」
いずれ実をつけ 堅実な拡散戦略で次世代に…
──この花、気がつけばいつの間にか増えていますね。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「今、目の前で咲いている花も、やがて細長い実をつけます。この実の中には、ひとつあたり1,500粒以上。
株全体では種の総数は数万粒に達することも珍しくありません。
そして、この植物の種まきは小さくもよくできています。
実が熟して乾燥すると、上部に小さな隙間ができ、まるで塩こしょうの容器のような構造になります。
隙間から風や人の動きで揺れるたびに、中の種がパラパラと少しずつこぼれ落ちます。一気にばらまかず、揺れた分だけぱらぱら長い間種をまき続けます。
実に堅実で、しかも見えにくい拡散戦略です。気づいたときには、周囲一帯にしっかり次の世代を仕込み済み。なかなかしっかりした戦略です」
駆除のコツは?
──庭などに生えていて駆除したい場合は?
(東洋産業 大野竜徳さん)
「この植物は弱いながらも毒がある外来種、おうちの周りに生えているのはあまり気持ちが良くないかもしれません。対策は明快、実ができる前に抜くこと、これに尽きます。
きれいな花や実の形は特徴があります。開花から若い実をつけている株の段階で、根ごと引き抜くこと、そして、実がついている株は必ず回収すること、これだけです。
ここで油断してその場に置いておくと、駆除したつもりが丁寧な種まきになるという、少々皮肉な結果になるかもしれません。袋に入れて捨てましょう」
更地、工事跡、道路脇…あなたはどこで見た?
ナガミヒナゲシがよく見られるのは、更地、工事跡、道路脇、お庭の片隅、駐車場、塀際など、どこも人の手が入り、その後少し空いた場所です。
いまきれいな花が咲いているその姿は、自然の豊かさの象徴ではなく、人間活動の余白を埋める存在。言い換えれば、『ここ、ちょっと手が離れていますのでお邪魔しますよ』と教えてくれる植物でもあります」
ナガミヒナゲシに虫はくる?
──この花には虫は来るのでしょうか。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「一言でいうと、虫は来ますが、深くは関わらないようです。
ナガミヒナゲシはアルカロイド系の毒素を含むため、葉や茎を積極的に食べる昆虫はあまり多くありません。害虫がびっしり付く、という光景はまず見かけないでしょう。
一方で、花を咲かせる以上、訪花昆虫はやってきます。ハナバチやハナアブ、小型の甲虫類など、花があればとりあえず行くタイプの食べ歩きタイプの虫たちです。
ただし、この植物は外来種。日本においては多くの在来植物のようにこの虫たちがいないと結実が成立しないといった強い関係はほとんど見られません。
花の側からすると、来るもの拒まず、去る者追わず。どこか距離感のある、あっさりとした付き合いです。
道ばたの一株。興味がなければただの雑草ですが、通勤、通学であわただしく歩いている毎日の道すがら、足元の風景も少し目を向ければ、そこには季節の移ろいのおもしろい世界が広がっているかもしれませんね」
