Image: Apple

ジョン・ターナスってどんな人?

これまでAppleのCEOをやってきた人の名前、3名挙げられますか? スティーブ・ジョブスとトム・クックはすぐに出てくるでしょう。もう一人は、ジョン・スカリーとかですかね?マイケル・スピンドラーがいるじゃないかと思った皆さん、なかなかです。そう、Appleには、みなさんが思っている以上に印象の薄いCEOが結構多くいたんです。

9月にティム・クックの後任としてAppleのCEOに就くことが決まったジョン・ターナス。果たしてスティーブ・ジョブスやトム・クックのような有名CEOになるのか。あるいは、ギル・アメリオのような存在になるのか。ターナス氏がどんなタイプのCEOになりそうか予想するまえに、どんな人物なのかざっと見ていきましょうか。

いい人として知られている

ターナス氏がAppleに来て最初に彼の上司となったSteve Siefert氏は、ニューヨーク・タイムズにターナス氏のエピソードを話しています。ターナス氏は、自分の部下たちと共用のデスクスペースから、個室へ移る機会があったにもかかわらず、それを断ったとのこと。ターナス氏は、誰とでも分け隔てなく接するタイプの人だと表現しています。

また同じ記事の中で、ターナス氏とAppleで一緒に働いていた元社員Cameron Rogers氏も、「一緒にいたくなるような人」で、「彼は素晴らしい人だから、みんなに好かれている」とターナス氏について話しています。

Appleで働く人たちにとって、CEOの人の良さは社内の空気を変えることになるのでしょうか。スティーブ・ジョブスは、社員が自分の望む成果を出さないと鬼のようになる人物だったと言われていますし、ティム・クックは、利益を生み出す達人という印象のほうが強いですよね。

とはいえAppleは、テック業界に厳しい目が向けられる今の時代でも、職場環境は比較的いい方です。ニュースになるような大規模レイオフもあまり行っていませんしね。なので、いい人と評判のCEOが来るなら、特に社内の雰囲気が変わることはなく、これまで通り雰囲気はいいままかもしれないですね。

エンジニアが率いるApple

ターナス氏は、どの製品にどのチップが入っているか、そしてその理由や背景を延々と語れる人物なんです。

ターナス氏はペンシルベニア大学で機械工学を学び、その後、あるバーチャルリアリティ企業でエンジニアとして働いたのち、Appleに入社。Appleでは外部モニター関係のエンジニアとしてキャリアをスタートし、初代iPadとAirPodsの開発を統括。その後はMac、Apple Watch、iPhoneの新世代モデルでも中心的な役割を担ってきた人物です。

Bloombergによると、ジョブス時代とクック時代の両方でAppleに在籍していたというある社員は、ティム・クックは製品開発の細かい部分にはあまり踏み込まなかったけれど、ターナス氏は「本物のエンジニア」だと語っています。ニューヨーク・タイムズの記事ではターナス氏は、Apple製品の内部構造を深く理解する、非常に厳密な技術屋で、彼が製品品質の低下傾向を食い止めたと書かれています。また、創造的な一面もあり、まだ発表されていない卓上ロボット機器の開発も統括してきたとされています。

半導体そのものに詳しいというより、半導体をどう調達して流通させ、ビジネスとして回すかに長けた人物として知られるクックとは、対照的な人のようです。

ただクックとの共通点もあるようです。それはリスク回避という点です。AppleがAIやスマートホーム機器に対して慎重すぎることについて、ターナス氏の姿勢の影響もあるとBloombergは伝えています。またターナス氏は、新しい刺激的な製品や、より強いAI対応が必要だという批判も理解しているとも書かれていました。

Appleの未来はわからない

わざわざ言うまでもないことかもしれません。ですが、今は本当に多くのことが宙に浮いているので、あえて触れておこうと思います。AppleはAIに対して慎重すぎると批判されてきましたが、この先数年の展開次第では、もしターナス氏が、AIが結局はバブルだったとなる前に会社のすべてをAIに賭けることを避けたCEOとして歴史に残るなら、それは失策ではなく、見事な判断だったと評価されるかもしれません。

また、ターナス氏が舵を取ることになるのは、米中関係の不透明感の真っ最中でもあります。クック時代のAppleは、当初からアメリカと中国の通商関係に大きく影響されてきました。Appleはもともとアメリカ企業でありながら、中国で製品を組み立てていました。クックはそれを、中国を顧客基盤としてもより強く頼る企業へと変えていきました。Appleは今でも中国の工場への依存を断ち切れていない一方で、生産の一部をベトナムやインドにも移しています。しかし揺らぎも見え始めています。中国ではiPhoneの市場シェアが落ちてきているのです。

それに加えて、政治状況は刻一刻と変わるものです。現在クックはトランプ大統領と親しくしているようですが、それが純粋に企業上の都合によるものなのか、それとも大統領の政治姿勢に共感しているのか、あるいはその両方なのかはわかりません。クックは非常に私的な人物なので、その辺ははっきりわからないですね。しかし12年前のAppleは今とは違う政治的な雰囲気でした。当時のクックは、実際にそうだったかどうかは別として、「反黒人ヘイトクライムを目撃したことが、自分の脳裏に永久に刻み込まれ、人生を変えた」と語るヒーロー的な人物として見られていました。

一方のターナス氏にも、胸を打つようなエピソードがあります。ニューヨーク・タイムズによると、彼がペンシルベニア大学で取り組んだ卒業研究は、「四肢まひの人が頭の動きで操作できる機械式の給餌アーム」の開発だったそうです。今は、テック企業に対して善意を期待するような風潮はあまりありませんが、もし万が一、空気が少しでも良い方向に変わることがあるなら、ターナス氏はわずかに希望を感じさせてくれる存在なのかもしれません。

Source: The New York Times, Bloomberg

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