国内最大級のカルスト台地「秋吉台」、ユネスコ世界ジオパークに認定へ…住民ガイドが車いす用散策ルート・英語ボード作製
国内最大級のカルスト台地・秋吉台を含む山口県美祢(みね)市の「Mine秋吉台ジオパーク」が、23日にパリで開かれる国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の会議でユネスコ世界ジオパークに認定される見通しとなった。
ガイド活動を通じて来訪者に価値を伝えてきた住民たちは悲願の実現を心待ちにし、多様な人々を案内する体制を模索している。(内田詩乃)
「世界に認められることで、国内外からたくさんの人が訪れてくれるのが今から楽しみ」。秋吉台ジオパークを案内する「ジオガイド」の一人、高橋明海(あけみ)さん(43)は17日、緑の大地に無数の岩が散らばる絶景を眺めながら語った。
同ジオパークは美祢市全域が対象。3億5000万年前に海底火山が噴火したことによってできたサンゴ礁が、8000万年かけて大きくなりながら、地殻変動で現在の秋吉台の位置まで移動した。その石灰分が雨水で溶かされて白い岩肌が露出したカルスト台地や、日本屈指の大鍾乳洞「秋芳洞(あきよしどう)」などの自然の造形美が訪れる人を魅了する。
2015年に日本ジオパークに認定され、世界ジオパーク認定を目指したが、「来訪者にその価値を十分に伝えられていない」などと指摘され、19年には日本ジオパーク委員会からの推薦が見送られた。
この間、市などでつくる推進協議会は住民団体とも連携し、16年には住民らが観光スポットを案内する「ジオガイド」制度を導入していた。推薦見送りを受けてさらに連携を密にし、ジオガイドたちは手製の説明用ボードを作り直したり、外国人観光客に対応する英語版も作製したりした。
24年に日本からの推薦が決まると、昨夏のユネスコによる現地審査では、ガイドらに接した審査員から「地域に力があるのがよく分かった」と評価された。
住民ガイド「誰もが楽しめるよう」
これまで認定されたジオガイドは約80人。個人客でも1時間から依頼でき、クイズ形式で情報を提供するなど、ガイド各自が工夫を凝らしてツアー客をいざなってきた。
「自然」が造り出した場所を訪れるだけに、身体に障害のある観光客の案内も課題だった。高橋さんは介護職員として高齢者施設に勤めた経験を生かし、車いすに乗ったままでも堪能できるツアールートを作成中だ。きっかけは、車いす利用者が秋吉台の観光交流施設に1人で残り、散策に出かける家族を見送っていたのを目にしたこと。「この素晴らしい自然をみんなで共有してほしい」との思いを強くした。24年夏から秋吉台と秋芳洞のルート作成に着手し、特別支援学校の勤務経験があるジオガイドの藤井妙子さん(69)と、車いすで散策して段差や砂利道などを把握していった。
ルートはほぼ完成し、昨年は車いすに乗る人のガイドを3件引き受けた。「安心して回れた」「自分たちだけならここまで来られなかったと思う」と好評だったという。
世界ジオパークに認定されれば、さらに注目されることになる。高橋さんは、ガイドを依頼しない車いす利用者のために、砂利道の場所などを記したマップの作成にも取り組んでいる。「誰もが安心して楽しめるように、これからも手助けをしていきたい」と思いを新たにしている。
◆ユネスコ世界ジオパーク=国際的に価値がある地層や地形など地質学的な遺産を保護し、研究や教育、地域振興に生かすことを目的にユネスコが認定する。国内では10か所が認定され、九州では島原半島(長崎県)と阿蘇(熊本県)が登録されている。
