ただ、スケジュールはかなり過密でした。月・水・金と土日は塾で、空いているのは火曜と木曜くらい。そのどちらかの夜にオンライン家庭教師を入れていました。

――費用をかけたことで、成績に変化はありましたか。

島田:劇的に伸びた感じはなかったです。オンライン家庭教師の時間中、妙に静かだなと思って様子を見に行ったら、マンガを見てサボっていたこともあって……。相変わらずやる気があるとは言えない状態で、成績も「ちょっと偏差値が上がったかな」くらいでした。

オンライン家庭教師に50万円もかけた価値があったのかと言われると、よく分からないですね。普段でも月6万円ほど払っていたんですが、受験直前の1月は、妻が息子に学校を休ませてオンライン家庭教師を入れていて。1月の請求が18万円。塾代の6万円と合わせると、1月だけで24万円以上かかっていたことになります。明細を見た時は衝撃でした。

◆夫婦仲が悪くなってしまった

――これまでに中学受験にどのくらいの費用を使われましたか。

島田:息子の4年間の塾代と、半年分の家庭教師代で400万円以上。そこに上の子の3年間でかかった約320万円を足すと、合計で720万円以上になります。改めて計算すると、ちょっと憂鬱になりますね。

自分でNISAなどで資産運用を続けていることもあって、どうしても考えてしまうんです。「子ども2人で6年間かけて、受験に720万円使ってきたわけですけど、それを年利5%くらいで運用していたら、1000万円近くになってたんだろうな」と。

――中学受験という経験を通じて、お金で測れない価値というのは?

島田:あまり感じていないですね。なぜかというと、受験を通じて「勉強=やらされるもの、塾や学校、親が用意するもの」と思うようになり、自分から学ぼうとする主体性が見られなくなったんです。受験で大事なはずの気力や主体性が削がれてしまうくらいなら、別の形で、自分でモチベーションを上げて学ぶ力を身につけさせた方がよかったんじゃないか、と思いますね。

もちろん、進学した学校でそういう力を育める環境があるかもしれません。ただ、それってもう運じゃないですか。少なくとも、1000万円近くかけた受験の対価として得られるものではない気がしています。

なので、「得たものがあったか」と言われると、あまり実感はないですね。むしろ、夫婦仲が悪くなりました。自分のストレスを息子にぶつけている姿を見続けてきたので、「この人と老後までやっていけるのか」と思ってしまいますね。

◆「行きたくないと」逃げ出した息子、でも…

――夫婦間で衝突する場面もあったんですね。

島田:ありましたね、何度も。ある日、台所で口論になって、妻から「あなたのサポートが足りないから成績が上がらないんだ」と言われたんです。

それで、「息子が計算ミスしたくらいで泣かせてるお前に言われたくないわ」と思って、思わず「うるさい!」と言い返して。その勢いで、手に持っていた皿とフライパンを床に叩きつけてしまいました。一瞬、妻は動揺した様子を見せましたが、すぐに何事もなかったかのように振る舞いました。

当然、皿は割れるし、フライパンも歪むしで……。後片付けをしながら、「何やってるんだろうな」と、虚しくなりましたね。

――家庭内の空気が重い中、息子さんのモチベーションには影響はなかったですか。

島田:成績自体は、じわじわ微増という感じだったんですけど、モチベーションは下がっていきました。「もう公立でいいや」とか言っていた時期もありましたし、ずっと「受験勉強をやめたい」と言っていました。

ある日、塾から「授業の時間になっても来てない」と連絡があって。慌てて通塾路を探しに行ったら、駅前で泣きながら「塾に行きたくない」と言って、本屋の中で歩き回っていたこともありました。