「GMARCH」を目指す偏差値40の息子に「720万円溶かした」47歳父。中学受験で世帯年収2000万の夫婦関係に亀裂が入るまで
――それでも最後まで、どうやってやめずに続けられたのですか。
島田:もう、“人参”をぶら下げまくってましたね。次のクラス分けテストで上のクラスに行ったら欲しいものを買ってあげるとか、第一志望に受かったら旅行に行こうとか、ペットを飼おうとか……。手を変え品を変え。それで、なんとか最後までやり切った、という感じです。
◆いつになったら自由になれるのか
――中学受験を終えた今、どのようなお気持ちですか。
ただ、妻はまだその学校に未練があるようで、高校受験での再チャレンジも考えているようです。私としては、「もうそこまでやらなくてもいいんじゃないか」と思っていて。第三志望とはいえ入れたわけですし、進学先は大学附属なので、息子が望むならそのまま内部進学でも全然いいと思っています。でも、妻を見ていると、そうはいかなそうですね。
――中学受験が終わった後も、また次の受験に向けた動きが始まっていることについて、どう感じていますか。
島田:社会人になってからも感じることですけど、いわゆる“ムービングゴールポスト”みたいな状態だな、と。一つクリアしたと思ったら、また次の目標が設定される、というか。
「中学受験を終えたら、6年間は少し自由になるんじゃないの?」と思っていたんですが、全然そんなことはなくて、また新しいゴールが置かれているような感じがします。塾でも、中学受験が終わった直後から中学進学準備講座が始まっていて、息子も受講していますし……。正直、終わりが見えないですね。ずっと続いていく課金ゲームみたいだな、と。
中学受験って、第一志望に受かるのは3割くらいと言われていますよね。残り7割はどこかで折り合いをつけることになる。そんな中で、塾から「中学受験経験者は早慶附属の高校に受かりやすい」と言われると、「じゃあ次は高校受験でリベンジを」って思ってしまう親も少なくないと思います。うちの妻も、まさにそんな感じで。
◆「課金がやめられない」親の不安と承認欲求
――先の見えないゴールに向けて、課金が続いていく背景には、どのようなものがあると思いますか。
島田:均質化みたいなものはあるのかなと思います。高学歴で高収入、社会的地位も高い人たちが集まる環境に長くいると、その中の基準や価値観に引っ張られていくというか。
気づかないうちに、プライドとか見栄の張り合いになっていく部分はあると思います。自分が高学歴だと、子どもにも同じレベルを求めてしまうし、逆に、自分の中の学歴コンプレックスを子どもで埋めようとするケースもあるでしょうし。
妻は前者で、熱が入りすぎてモンスターペアレンツ化していました。塾に頻繁に電話したり、面談を求めては、「成績が上がらないのは、先生の指導に問題があるのでは」と言ったりしていました。問題なのは、子どもの学ぶ姿勢のはずなのに……。
――奥様は、学校など他の場所に対しても同じように主張されることはあったのでしょうか。
島田:受験前までは、そこまでではなかったと思います。学校に対して強く要望を出すようなこともなかったですし。ただ、中学受験を始めてから、完全にスイッチが入った感じで。
本来は子どもの受験のはずなのに、だんだん“自分の戦い”のようになっていったように見えました。共依存とまではいかないかもしれませんが、同一化している感じというか。
だから、第一志望校に入れなかったことにも、すごく悔しがっていましたし、「クラスの〇〇君はどこに合格したのか」と、知り合いの子どもたちの進学校を息子から聞き出している様子を見ていると、妻にとってもこの受験は“自分が参加している競争”だったんだろうな、と。
