仕事量にも人間関係にも思い悩んでいた頃、妻に「本当はどう生きたいの?」と聞かれたことを機に、対話を通じて相手の目指すべき地点を引き出す「コーチング」を知った。その後、妻が出産し、1年間の育児休業期間を取得したことを機に、自身もコーチングについて学び始めた。このキャリアブレイク期間が、結果として生き方を変える転機になったという。

「人の相談に乗る以上、まずは自分自身の価値観を明確に把握できていないといけません。それで自覚したのは、自分は『顔の見える相手を助ける姿を子どもに見せたい』という思いがあるということ。特に規模の大きな会社ほど、一つの案件に関わる関係者の数が増え、自分が誰を助けているのかが見えにくくなってしまう。それよりも顔の見える相手を助ける姿を見せられたほうが、子どもに胸を張れると思いました」

◆「『妻』が家事をする必要はない」という気づき

あわせて考え直したのが、夫婦がどのような働き方をすれば、お互いの能力を最大限に発揮できるのかという「全体最適」の視点だった。

「妻は、元々バリバリ仕事をするのが好きな人。一方、僕は忙しくはしていたものの、仕事自体が好きなわけではなかった。妊娠中、妻のつわりがひどかった時期に家事を積極的に代わっており、それを機に『妻が動けないときは自分が動く』『自分が動けないときは妻が動く』という柔軟な視点を得ました。そしてそのためには、会社員よりもフリーランスの方がより柔軟に働けるだろうという結論にたどり着きました」

会社員からフリーランスへと転身して約2年が経つ今、メリットとして感じているのが「時間の裁量権」だという。

「会社員の場合は勤務時間があらかじめ決められており、その時間は会社のために働かなくてはいけません。けれどもフリーランスの場合、成果物さえきちんと出していれば時間は問われず、自分のペースで働くことができます。家庭を大切にしつつも、顔の見える相手を助けているという実感も得られて、フリーランス転身後の方が『生きやすい』という実感が得られるようになりました」

近年では「イクメン」という言葉も浸透してきてはいるものの、男性が家庭を優先する働き方は、現在の日本でまだ一般的とは言いづらい。記事の後半では、吉岡さんが「主夫兼フリーランス」というスタイルを受け入れられるようになるまでの葛藤や、仕事を引き受ける際に重視しているポリシーにフォーカスする。

【吉岡 茂樹】
大阪教育大学総合学習専攻卒業。大学卒業後、広告代理店にてWEBマーケティング支援に従事。2022年より事業会社にて、企業向け研修のプログラム設計やマーケティングを担当。現在は障がい者雇用事業の立ち上げや特定非営利活動法人の運営支援など、社会課題領域を中心に経営企画・組織開発などの伴走支援を行っている。

<取材・文/松岡瑛理>

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【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san