【A4studio】「バーガーキングのほうが安い」マクドナルド相次ぐ値上げも「客離れ」が起きない理由

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日本マクドナルドは2月24日、商品の約6割について10円〜50円の値上げを発表。看板商品のビッグマックは480円(税込、以下同)から500円へ、フライドポテトも全サイズで20円の値上げとなった。背景には、原材料費やエネルギー価格、人件費の高騰があるとされる。

もっとも、今回の値上げは単発の動きではない。マクドナルドはここ数年、価格改定を繰り返してきた。毎年値上げを実施しており、着実に商品価格は上昇している。こうした動きに対しSNSなどでは「さすがに高くなりすぎた」、「もうバーガーキングに行く」といった声も見られる。一部では「マクドナルドは殿様商売ではないか」といった批判も散見されるようになった。

これらの値上げについて、経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏に解説していただいた。(以下「」内は鈴木氏のコメント)

記事前編は【「低価格路線」をやめたマクドナルド…相次ぐ値上げも過去最高の業績を達成できたワケ】から。

値上げも「客離れ」起こらず

一般的に外食は“選択的な消費”とされ、値上げをすれば客数が減りやすい業態だ。しかし、マクドナルドは例外だという。

マクドナルドの場合、値上げをしても想定されるほど客数が減っていません。そこが大きな特徴です」

では、なぜ大きな客離れが起きにくいのか。鈴木氏は、その理由として顧客構造と利便性を挙げた。

マクドナルドには、価格の変化に影響を受けにくい顧客層が存在します。特に大きいのがファミリー層と、Z世代より上のビジネスパーソン層。共通しているのはタイパ(タイムパフォーマンス)を重視している点です。

マクドナルドの店舗数は現在およそ3000店舗。全国どこにでもあります。注文から商品提供までのスピードも早い。さらに外食というカテゴリーのなかでは比較的価格も抑えられており、手軽に食事を済ませることができます。こうした“利便性”は単純な価格比較では測れない価値となっており、多少の値上げでは利用が大きく落ちにくい構造になっているのです」

Z世代は「バーガーキング」を支持する声も

だが、SNS上では“マクドナルド離れ”を指摘する声も見られるが……。

「『マックが値上げしたからバーガーキングに行く』という声は確かにあります。そうした声は比較的若い世代、特に学生層に多い傾向があり、近年、バーガーキングが存在感を高め、Z世代の支持を集めているのは事実です。そうした層のマクドナルド利用は一定程度、減る可能性はあるかもしれません」

ただし、長期的には単純な“顧客の奪い合い”にはならないという。

「例えば、現在バーガーキングを利用しているZ世代が、10年後に子育て世代になったときに、マクドナルドに戻ってくる可能性は十分あります。子ども向けメニューや店舗の使い勝手を考えると、ファミリー層にとっての利便性はマクドナルドのほうが依然として高いからです。

ライフステージの変化によって選ばれる店が変わるという意味でも、両者は単純な競争関係ではありません。それだけマクドナルドは日本の生活に深く根付いた存在とも言えるのです」

値上げは業界内に広がらず

こうした日本マクドナルド値上げは、他のハンバーガーチェーンにも波及するのだろうか。この点について、鈴木氏は「一律には広がらない」との見方を示す。

「外食業界では、各社の立ち位置によって価格戦略が大きく異なります。同じハンバーガーチェーンでも、マクドナルドのようなマーケットリーダーとそれを追うチャレンジャーでは、同じ値上げでも意味合いがまったく違うのです」

その典型が、近年出店を加速させているバーガーキングだ。

「バーガーキングは、まだシェア拡大の途上にあるチャレンジャーです。かつてマクドナルドが店舗数を増やしながら市場を広げていったフェーズに近い状況と言えるでしょう。

だからこそ、コストが上がっていても価格やボリュームで“割安感”を打ち出し、顧客を取りにいく戦略を取っています。バーガーキングの場合は、短期的な利益よりもまずはシェアを優先する局面にあるということです」

実際、国内の店舗数を見ると、マクドナルドやモスバーガーが横ばい傾向にある一方で、バーガーキングは出店を加速させている。

モスバーガーは値上げに慎重

一方、モスバーガーはまた異なる立場にあるそうだ。

「モスバーガーはもともとマクドナルドより価格帯が高く、“ナチュラル志向”というブランドを築いてきました。そのため、これ以上の値上げには慎重にならざるを得ない。大幅な価格改定は避けつつ、既存の顧客層を守る戦略を取っていると考えられます」

要するに、マクドナルド値上げが業界全体に“連鎖”するわけではなく、各社がそれぞれのポジションに応じて異なる戦略を選択しているということのようだ。

――値上げを繰り返しながらも客離れを最小限にとどめている現状は、マクドナルドが“殿様商売”を成立させられるだけの強さを持っているという証左なのかもしれない。価格の安さだけに依存するのではなく、利便性やブランド力といった付加価値によって、「選ばれる理由のある存在」であり続けているのだろう。

(取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio)

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