サイゼリヤを愛するリュウジ。「ボクならむしろ“初デートはサイゼに行きませんか”と誘います」(リュウジ)

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 SNSなどで、定期で繰り返されてきた「サイゼ論争」。「初デートでサイゼリヤに連れて行かれた」という女性の嘆き投稿に、数万件の賛否が飛び交うのは、もはやネットの風物詩だ。安くておいしい庶民派イタリアンチェーン、サイゼリヤ。その価格帯とカジュアルさゆえに男女間の温度差が生まれてしまうのか……。

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 なぜ「初デートでサイゼはアリか、ナシか」のテーマは、これほどまでに人々を熱くさせるのだろうか。

 ファミレス、外食チェーン店をこよなく愛し、後編記事【サイゼは“肉無しピザ”がマスト、唐揚げじゃない日高屋の“正解”…料理家リュウジが愛する「必食の外食チェーンメニュー」8選】では、好きなメニューや楽しみ方を語ってくれた料理研究家のリュウジ氏は、

「初デートでサイゼ、全然アリですね!」

サイゼリヤを愛するリュウジ。「ボクならむしろ“初デートはサイゼに行きませんか”と誘います」(リュウジ)

 と即答する。ただし、これについての世間の議論の多くは「アホらしいほど本質を外している」とキッパリ。

「女性の過半数は『初デートでサイゼは嫌』なんです。逆に男性は『サイゼでいいじゃん』と思う人が半数以上はいるでしょう。まず、根底から食い違っているんですね」(リュウジ氏、以下同)

 男女間の摩擦の原因は「軸のズレ」にあると言う。

「女性が求めているのは、場所そのものというよりも『自分へのリスペクト』なんです。『私を本当に大切に思っているなら、サイゼは選ばないはず』という論調になる。 対して男性は、『好き同士なら、お金に関係なく一緒にいられればどこでもいいよね』という発想。お互いが測っている“ものさし”が、絶妙にズレているんです」

 このズレを放置したまま議論するのは、相手を見ていない「言葉のドッジボール」のようなものだという。

「本来は会話ってキャッチボールであるはずなのに、投げて終わり、ぶつけて終わりのドッジボールになっている。相手がどういう人か、何が好きで、どういうところに行きたいのかを一切考えていないから論争になるんです。これ、実はたった一つのことで解決する。すべてはコミュニケーションの問題です」

「とりあえず様子見」姿勢は絶対ダメ

 先述の通り、そもそもリュウジ氏自身は、「初デートにサイゼは超アリ」派だ。

「ボクが誘うなら、むしろ『初デート、サイゼに行きませんか?』と提案しますね。『ボクはサイゼデートでも絶対楽しませる自信がある』と。サイゼリヤを知り尽くしたうえで行くのは絶対面白いし、『ボクの楽しみ方を共有したい』と伝えればいいと思う。そのうえでさらに『なんでサイゼなの』って怒るようなら、女性側もちょっと違うんじゃないかな、とボクは思う。『ボクは君とサイゼを楽しみたい』って堂々と言えばいいんです」

 だからこそ、最悪なのは「とりあえず様子見でサイゼ」というスタンス。

「サイゼに行きたい側がその理由をしっかりプレゼンすべきなんです。『どうしてもここの辛味チキンを食べてほしい』とかね。どんな相手かわからないし、安いから様子見で使う……などは言語道断、それはお店にも相手にも失礼すぎます」

 同時に女性側も、『どこでもいいよ』という丸投げ姿勢はNGだそう。

「それでは『食に興味ないんだ、じゃあサイゼでいいじゃん』と思われても文句は言えないと思う。『あなたが行きたいところを教えて』みたいな感じで伝えれば、違う展開になるんじゃないかな」

「ボクは完全に中立」

 行きたい理由を説明しない男性と、希望を言わずに文句を言う女性。互いに歩み寄る努力を怠ったままでは、一生この溝が埋まることはない。

「結局みんな“仮想敵”を念頭に語っているから、この論争は終わらないんですよ」

 過去の記憶の中の、あるいは脳内で生み出した「ちょっと気に入らないデート相手」という仮想敵だ。

「嫌な思いをさせられた相手を投影している場合も多いのではないでしょうか。『サイゼはナシ』って怒る人は、今までにサイゼに連れて行かれて嫌な思いをした経験がありそう」

 本来なら、その時のタイミングや立場、二人の関係性によって正解は変わるはず。そうした背景をすべて省いて語ることも、論争が繰り返される原因だと分析する。

「ボクは中立の立場なんですけど、『初デートにサイゼはアリ』って言うと、男性側にカテゴライズされて、その真意も分からないまま女性側に叩かれる。一方でボクは、相手が望むなら高めのフレンチもアリ派なので、『最初はもうちょっとカッコつけたほうがいいんじゃない?』なんて言えば、今度は男性側から叩かれる。結局どっちからも叩かれるんですよ(笑)。マジでくだらない論争です」

値段とおいしさは必ずしも比例しない

 日常的にファミレスも高級店もよく利用するというリュウジ氏は、外食の価値についても独自の考えを持つ。

「例えば2万円の食事をするじゃないですか。2万円出すと大体どこのお店もおいしいんです。じゃあ5万円なら、その2.5倍おいしいかっていうと、実際はそんなことはないんです」

 むしろ1人5万円で「たいしたことがない店も多い」とリュウジ氏。

「味だけでいえば、大体2万円で頭打ち。1万円から2万円のところでめっちゃ頑張ってる有名じゃない店がうまいですね」

では高級店の価値とはなにか。“味の倍率”ではなく、産地や食材の希少性、ストーリー、プレゼンテーションなど、『体験』としての価値が価格に乗っているのだ。

「5万円のお店に行くのは、旅行に行くようなもの。未知なる体験や食材、希少な時間を味わいに行く。誰々さんが今朝、仕留めたジビエですとか、どこどこで水揚げされたエビですとか。そういうふうな物語や体験をくれるので、おいしさだけでは測れない価値がありますよね。だから、そういった場合には5万円払っても惜しくないかな〜となりますね」

 ただし、純粋に「味」だけで言ったら、とれたてジビエよりスーパーの肉が勝つこともあると語る。

「おいしさと値段っていうのは、必ずしも比例するものではないです。それを念頭に置けば、どんな飲食店も楽しめるんじゃないかと思います」

 高いか安いかではない。その店の「武器」を理解し、主体的に楽しもうとする意志があるか。それがあれば、たとえ数百円のメニューであっても、数万円のコースに劣らない感動を味わえるという。

「安くてうまい店は、世の中にたくさんありますから。特に日本のチェーン店は、企業の血の滲むような努力の結晶だと思います。その凄さを知らないで『初デートにサイゼはナシ』なんて言ってしまうのは、人生損しているとも思いますね」

では、食のプロであるリュウジ氏が、ひとりの客として、そして料理研究家として、愛してやまないチェーン店とはどこなのか。後編記事【サイゼは“肉無しピザ”がマスト、唐揚げじゃない日高屋の“正解”…料理家リュウジが愛する「必食の外食チェーンメニュー」8選】では、リュウジ氏が推す、最強のチェーン店&メニューを、具体的な攻略法とともに徹底解説してもらう。

リュウジ■料理研究家。1986年、千葉市生まれ。XやYouTubeで日々更新する料理動画やレシピが、「簡単に爆速で美味しく作れる」と大人気。YouTubeチャンネル「料理研究家リュウジのバズレシピ」の登録者数は550万人、SNSを含めた総フォロワー数は1120万人を超える。2020年、『ひと口で人間をダメにするウマさ!リュウジ式悪魔のレシピ』(ライツ社)で「第7回料理レシピ本大賞」を受賞。22年には、定番料理100品のレシピを集めた『リュウジ式至高のレシピ』(ライツ社)で「第9回料理レシピ本大賞」を受賞し、2度目の栄誉に輝く。「料理のお兄さん」として自炊の楽しさを広めようと、多方面で活躍している。

取材・文/荒木睦美

デイリー新潮編集部