「なにわ男子」藤原丈一郎のセルフプロデュース公演『じょうのにちじょう』は良い意味でやりたい放題。「やりたいことがめちゃくちゃ詰め込まれた舞台」
「藤原丈一郎」とタレント名を聞くと、何を連想するだろうか。「関西出身」「アイドル」「最近よくテレビドラマで観る」「オリックスファン」など。そんなパブリックイメージと、本人の念願が詰まった一人舞台『じょうのにちじょう』が3月15日まで東京・グローブ座で開催中だ。公開ゲネプロの様子をレポートする。(取材・文:小林久乃)
* * * * * * *
アドリブ50%とセリフ50%で構成された90分間
『じょうのにちじょう』は藤原が構成、演出、出演を手掛けた一人舞台だ。家族についての作文の宿題を出された小学生の“丈一郎”。その題材になるそれぞれの家族を、本人がすべて演じている。その役の数は、声だけの出演もカウントして「28」。用意されたポップでカラフルな背景の舞台上で、母、兄、姉、祖父と忙しく役柄を変化(へんげ)させながら、進んでいく。上演の約90分間、藤原はとにかく、しゃべりまくる。きちんと呼吸はできているのだろうか? 喉は大丈夫だろうか? と、観ているこちらが心配するほど、しゃべっていた。その様子を一部、紹介しよう。
まずは“丈一郎”の幕からスタートする。ランドセル姿も不自然にならず、可愛らしさを醸し出してくるのは、さすが現役アイドルだ。現代の小学生がYouTubeに興じる様子を持ち込んでくるのは、令和の舞台だとしみじみ。昔なら野球かサッカーだったもんな。
「すっごい、カメラ、めちゃ俺のこと撮ってるやん!」
「めっちゃ、人いる、こんにちは〜」
登場から客席(報道陣)を拾いまくる。「半分セリフ、半分アドリブなんですよ」と、本人が言う通り、客席の様子を見ながら、“丈一郎”が次々に言葉のボールを投げてくる。続いて“母”のターンでは、我々の想像の世界を全く裏切らない「大阪のおばちゃん」の割烹着スタイルに。
「(客席の)声でも聞いてみようかしら。(客席の声援を聞いて)声と人数が合ってない!」
「べっぴんさん、べっぴんさん、1人飛ばして、私の次にべっぴんさん!」
「目が合ったわね!ベージュのセーター、左手にペン、右手にノート!」
人情味たっぷりのテンションで、“母”は得意の歌も披露する。
「拍手とカワイイは全員参加だからね!」(姉)
“兄”になると、藤原の愛の詰まった野球の演出へ。実際にバッターボックスに立つのではなく、スクリーンに映し出された野球ゲームのパワプロを使う。ゲームに現れる選手は、すべて所属事務所のタレント(のイメージ画像)がエントリー。“兄”による選手紹介は、全て選手のキャラクターや近況など、細かく的を得ているのが面白い。もちろんこのターンでも客席拾いは忘れない。入場時に渡された公演マークがデザインされた厚紙、これはハリセンだった。野球場で皆がビールを飲みながら叩きまくっている、アレだ。その『じょうのにちじょう』バージョンが用意されているとは、さすがの野球ファン!

撮影:阿部章仁
「分かるよ、メモしたい気持ちは! 今日はその目的で来てるんやもんな!! でもな、ちょっと手を貸して!!!」
「(ハリセンの叩きを)もっとちょうだい!」
と、客席にハリセン叩きをリクエスト。彼の訴求力の高さに吸い込まれて、こちらも急いでノートとペンを置いて、ハリセンを叩く。次第に会場が一体化していくのが座っているだけでも伝わってくる。ああ、ここは東京ドームのようだ。次いで“祖父”は映像とAIを使って、曲当てクイズ大会を開催。

撮影:阿部章仁
「ねえ、例題からこんな難しいって聞いてないよねえ。なんじゃこれは!」
「頼む、一問めから間違えるのはやめてくれ!(笑)」
「(客席が)なんで分かるの? 来る前に配られた? 答え!」
リアクション大きく、ステージ上で彼もクイズに参加していた。その後、「なにわ男子」が推しという“姉”の丈子がお出ましに。SNSでライブ配信をしているという設定で、なにわ男子のファンネーム「なにふぁむ」が、どんな推し活をしているのかを伝えるという。
「みんなに起きてほしい時間はこちら! 毎日4時起床です!理由は(中略)ウチらの事務所じゃないわ(汗)、なにわ男子の事務所が情報解禁をするのよね!」
「大事なことなのでもう一回言います。ハイ、4時に起床!(リアクションの薄い客席に向かって)起きる気ないでしょ!」
映像、文字、トークを巧みに操り、良い意味で藤原はやりたい放題。ちなみにこのレポを読んで「ネタバレでは?」と懸念することはない。この何百倍ものコンテンツをエンドロールまで用意して、主役が劇場で待っている。観客が忘れてはいけない持ち物は、絶対に切らせない90分間の集中力だけだ。
目標はオリックスの優勝ビールかけをすること!?
さてにぎやかな一幕が終わり、会見へ。先ほどまで声を張っていたとは思えないほど、ここでもサービス精神を切らさない、主演俳優。フォトセッション中もカメラマンからポージングを求められると、ていねいに応えていく。「(準備ができるのを)待っていますよ」「あ、可愛い、いただきました〜」。まるで先ほどまでのショータイムがまだ続いているようだ。
「僕がやりたいことがめちゃくちゃ詰め込まれた舞台です」

撮影:阿部章仁
先輩であるSUPER EIGHTの村上(信五)に相談、自分で企画書を作成して、高校生から気になったことをメモし続けたというネタを元に、構成を考えた。その後、わずか10日間のリハで本番に突入したという力技にも感服するばかり。今年5周年を迎える、なにわ男子のメンバーも観劇に来ると続ける。
「大橋和也には4月から『AmberS』という舞台をやるらしいです。勉強しに来てほしいですね(笑)」
笑いを取りながらも気になったのは、藤原から垣間見えるメンバー同士の仲の良さ。質問に応えながらも「なかなか1人でしゃべることがないんですよ。メンバーで並んでしゃべることはあるんですけど……」と、壇上で自分の左側を人指指で差していた。幕開けからずっと快活な様子だったのに、終盤で初めて見せる少し寂しそうな表情の青年がそこにいた。
何度も着替えて、ボケて、歌って、動いて、踊って、笑わせて、しゃべり倒して。なんだろう、ものすごいイケメンを観た……というよりも、終始笑っていた記憶が残る。藤原の軽妙なトークと厚遇に、脳内が圧倒されていた。それは愉しかったのも理由であるけれど、何よりもステージからにじみ出る彼の人柄の良さを堪能したからだと、取材の帰り道で気づかされた。
2月8日の記念すべき30歳の誕生日から始まった舞台は、大阪と合わせて全30公演。藤原が、東京公演初日の前日に完走した「大阪マラソン」のごとく、千秋楽まで無事の走破を願う。
