凄まじいのは7戦12発だけではない。マルチなタスクで躍動するバイエルンのエースはバロンドールの有力候補にも…【現地発コラム】
その得点力の高さは以前から折り紙付きだ。プレミアリーグのトッテナムからバイエルンへ移籍したのが23年夏。同シーズンに36ゴール・10アシスト、翌24-25シーズンにも26ゴール・12アシストで2年連続得点王、スコアポイントトップ(ゴール+アシスト)に輝いている。
今季もその得点力に陰りはない。7節終了時で12ゴール・4アシストは圧倒的。チーム得点で13ゴール以上を上げているのがフランクフルト(19点)、レバークーゼン(16点)、ドルトムント(13点)の4つしかないことからも、その凄さが際立って感じられる。
今季のリーグ優勝の行方を占うであろう重要な一戦となった7節のドルトムントとのホームゲームで、その存在感の高さをこれ以上なく披露していた。
先制ゴールをCKから決めただけではなく、この日にケインが記録した数字で特筆すべきものがあった。それがダイアゴナルパスの成功数だ。ボールを収めると巧みなターンで前を向き、周りの見方をうまく使いながら攻撃を構築しつつ、逆サイドワイドな位置に走りこむ味方を察知すると、そこへシュート性の鋭いロングパスを供給していく。
11回という数字は、欧州5大リーグ最多記録になる。しかも、そのパスほぼすべてからバイエルンのビックチャンスが生まれていた。
コロンビア代表FWルイス・ディアスが抜け出しから、最後はドルトムントのジョーブ・ベリンガムがクリアしきれないところへ詰めたマイケル・オリーセが押し込んで決めたバイエルンの2点目もケインのパスから生まれている。中盤右から素早く放たれたパス1本でドルトムント守備を攻略した。
守備でも魅せる。88分、ファビオ・シルバが鋭いカットインから放ったシュートをスライディングタックルで完全にブロック。映像で見直すと、画面の外から突然現れたかのごとくダイナミックなプレーだった。
まさにピッチのいたるところに顔を出し、FWとして、トップ下として、ボランチとして、アンカーとしてのタスクも担っていたケインは、試合後のミックスゾーンで「たぶん僕のサッカーキャリアの中でもベストゲームの一つだと思う」とにこやかに話していた。
「いま僕がいろいろなタスクを担いながらうまくいっている。すごく楽しんでいるよ。フィジカル的に大変だけど、でもそれが僕にはあっている。もちろん僕はフォワードとしてゴールを決めるためにピッチにいる。でも守備に走ったり、セカンドボールを拾ったり、ワイドパスを活かしたりするのも大事だ」
ミックスゾーンでの対応も常にジェントルマン。テレビインタビュー後さらにペン記者への取材に応じようとする選手はそう多くはいないなか、いつも足を止めて、どんな質問にも丁寧に答えてくれる。
32歳にして、新境地を開拓しているケイン。この調子でシーズン駆け抜けることができたら、それこそバロンドールの最有力候補にさえなるかもしれない。
取材・文●中野吉之伴
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