岩波新書 × 中公新書 × ブルーバックス、新書レーベル“三兄弟”鼎談「心を同じくして助け合い、幅広い読者に本を届けん」
岩波新書編集部のXアカウントにて、6月7日に「新書がもっと若者に流行ったらいいな、と常日頃から思っている。」というポストがされたところ、講談社ブルーバックスのアカウントが「じつは、ブルーバックスも新書です。日本で三番目に長い歴史を持つ新書レーベルです。」とリポスト。すると、二番目に長い歴史を持つ新書レーベルの中公新書のアカウントが「我ら三レーベル、生まれし日、時は違えども、新書の契りを結びしからは、心を同じくして助け合い、幅広い読者に本を届けん」と応答した。一連のポストは新書ファンの間で大いに話題となり、総リポスト数が5000、総インプレッション数が200万に届くほどの注目を集めた。
参考:時間は逆戻りする可能性がある? ホーキング博士の最後の弟子がとなえる、驚異の最新物理学とは
岩波新書は1938年、中公新書は1962年、ブルーバックスは1963年に創刊された新書レーベルで、それぞれの特色を活かしながら、現在もヒット作を生み出し続けている。今回のXのポストでは、お互いを意識していることが改めて一般読者にも示された形だが、具体的にはどんなところで切磋琢磨しているのだろうか。岩波新書の中山永基氏、中公新書の上林達也氏、ブルーバックスの青木肇氏、家田有美子氏、楊木文祥氏に、それぞれのレーベルの魅力や近年の新書を巡る状況について、語り合ってもらった。
■岩波新書、中公新書、ブルーバックス、それぞれの特色
ーー最初にそれぞれのレーベルの特色についてお話しいただけたらと思うのですが、せっかくですので他己紹介のような形で伺えればと。まずは最も歴史の古い岩波新書さんの印象から、いかがでしょうか。
中公新書/上林達也氏(以下、上林):岩波書店さんは1938年に創刊されたレーベルで、新書として日本におけるダントツの先駆けです。弊社も含め、多くの新書は岩波新書を念頭に置いた形で作られているといっても過言ではないのかなと。憧憬も含め、ここに至るまでの新書の歴史は岩波新書を軸に展開してきたのではと思っております。
講談社・ブルーバックス/青木肇氏(以下、青木):もう30年以上前ですが、僕は学生のころに国際経済論をかじっていて、村井吉敬先生の『エビと日本人』や、柴宜弘先生の『ユーゴスラヴィア現代史』とか、何かについて勉強したければまず岩波新書を読んでいました。いずれにしても、何かを学ぶときに振り向けば必ず岩波さんがあった。まさにキング・オブ・新書ですね。
岩波新書/中山永基氏(以下、中山):ありがとうございます。現役で編集者をやっている身としては、お二人の言葉はやりがいになりますし、同時に重いプレッシャーにもなりますね(笑)。
ーーそれでは、中公新書についてはいかがでしょうか。
中山:“ザ・教養”といいますか、信頼感のある知識を手に入れたいと思えば中公新書だというイメージがあります。岩波新書は色を変えてきたことに象徴されるように、同じ教養新書といえど動きのあるレーベルですが、中公新書はいい意味でどっしりとした安定感があって。ブレないところが強みだと思いますし、私たちにとっても大きな刺激になる存在です。
青木:中山さんがおっしゃった「ブレない」という言葉に集約されると思っています。それこそ岩波さんはいい意味で時代に合った部分を取り入れてきた印象がありますが、中公さんはあの深緑の装幀デザインも含めて頑固一徹というか(笑)。今日、出張帰りの新幹線で新聞広告をチェックしていて、麻田雅文先生の『日ソ戦争-帝国日本最後の戦い』、岡本隆司先生の『二十四史―『史記』に始まる中国の正史』というラインナップを見て、「俺は今こういう本が読みたいんだ!」と唸りました。僕自身、慣れない科学漬けの日々なので(笑)。
上林:ご指摘のとおりだと思います。中にいると気づきにくいところもありますが、表紙も変わりませんし、歴史を基調とした路線が強いのも変わらずにやっているのかなと。
ーー続いてブルーバックスについても聞かせてください。
中山:個人的な話で恐縮ですが、私は大学で法学部に入ったものの、高校は理系のクラスだったんです。浪人時代が長かったこともあり、理科系には挫折の記憶がつきまとっています(笑)。そんな当時の私にとって、ブルーバックスはまさに知の宝庫ともいうべき、仰ぎ見る憧れの存在で、背伸びしてチャレンジしたこともありました。とはいえ手が届かない存在だと思われがちですが、実は最先端の知識を伝えるものだけでなく、やさしい内容の本もあります。科学に軸足を置いている新書レーベルは他になく、孤高の存在だと思います。
上林:私はサイエンス系書籍とはほとんど無縁ですが、「こういう企画で本を出せるんだ!」という驚きに満ちたレーベルだと思います。今回のお話をいただいて、自分が最初に読んだブルーバックスの本は何だろう、と考えたのですが、おそらく『マックスウェルの悪魔』(都筑卓司)ではないかと。いまは新装版に漫画版も出ているロングセラーで、歯応えのある内容でしたが、今読み返してみても「熱力学でこんな話ができるんだ」という面白さがあります。「マックスウェルの悪魔」というのはひとつの例え(※思考実験に用いられる架空の存在)であるのに、それだけで一冊の本を構成できて、しかも長く読み継がれているのは本当にすごいことだなと。中山さんがおっしゃったように、他に類を見ないレーベルですね。
青木:僕自身、お二人とはまったく違うレベルで挫折していて、本当に理系に縁がなかったもので、「ボクはなんでこの部署にいるの?」と思っています。講談社による壮大な実験の最中だと思っていただければいいのかなと(笑)。現場の編集者がとても優秀で、難解な企画も出てきますから、それをどこまで噛み砕いて、より間口を広げた本を作るか、という実験として僕がポツンと配置されているのだろうと思います。家田(有美子)や楊木(文祥)のようなすごい編集者がいるので、安心して出張にも行けます(笑)。
ーーちょうどその楊木さんと家田さんもいらっしゃるということで、Xでの一連のポストについてはどうご覧になっていましたか。
家田:中山さんのポストを拝見する少し前に、ちょうど楊木や青木と「ブルーバックスが新書だということをもっと認知してもらわないといけないよね」という話をしていたんです。そんな中でたまたまあのポストが流れてきて、「これだ!」と(笑)。そうして皆さんの反応を見ていると、「新書愛が強い人がこんなにいるんだ」と感じるとともに、やっぱりブルーバックスは新書の仲間としては見られていないんだという現実をあらためて確認できました(笑)。
楊木:あの一連のポストの反響がなかなか大きく、岩波新書・中公新書・ブルーバックスが日本で現存している最も古い新書レーベルTOP3なんだということを初めて知って、驚いた若い読者の方もかなりいたのではと思います。ブルーバックス的には、読書猿さんが<胸を張れ!!「小型判で学術一般を要約する叢書」は欧州にも複数存在するけどが、ポケットに入るサイズで、科学専科で扱い、60年以上ほぼ毎月刊行を続けているシリーズなんて、世界のどこにも無いんだぞ!!>と引用&リポストしてくださって、ありがたい限りだなと。それも日本の豊かな出版文化・読書文化があってこそ成り立っているものだと思いますし、新書という形態だからこそここまで長く続いてきたのかなと感じますね。
ーーお互いに「これはやられた!」と思った企画についても教えてください。
中山:直近だと、ブルーバックスさんの『脳・心・人工知能〈増補版〉 数理で脳を解き明かす』(甘利俊一)ですね。甘利さんの京都賞の受賞を見て「おっ」と思った瞬間、「もう増補版が出てるじゃん」と(笑)。僕らと鼻の利かせ方が全然違うな、と。持っている財産のクオリティが凄まじいなとあらためて感じました。
またこちらも直近ですが、中公新書さんの『ベルリン・フィル 栄光と苦闘の150年史』(芝崎祐典)も印象的でした。新書らしいテーマに新書らしい切り口でありながら、しかし著者とテーマの組み合わせで、これまでにない教養新書になっています。どちらも、それぞれのレーベルの強みを感じたという意味で、「やられたな」と思った2冊ですね。自分たちが出していてもおかしくはないだけに、先をいかれたな、という感覚です。
上林:これは「やられた」というより「やれないな」という話かもしれませんが、ブルーバックスさんでいうと『ゲノム編集とはなにか 「DNAのハサミ」クリスパーで生命科学はどう変わるのか』(山本卓)が印象深いです。問いの立て方がストレートで、確かにみんな知りたいテーマですよね。一方で、最近だと『生命にとって金属とはなにか 誕生と進化のカギをにぎる「微量元素」の正体』(桜井弘)という本があり、人生で考えたこともない問いをテーマとして、こういうテーマを立てられるのはとてつもない強みだと思います。ブルーバックス以外のレーベルから出てくることが想像できない。レーベルの個性とも直結していると思いますし、自分たちにはやれないんじゃないかなという気がしています。
岩波新書さんについては比較的新しい2冊で。まず『ケアと編集』(白石正明)が非常にいい本でした。言うまでもなく編集者が読んで面白く、そうでない人にも読み甲斐のある本でした。その後に『ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる』という小川公代先生の本が出ているんですよね。一つのレーベルの中で、例えば「ケア」というテーマについてまったく違う切り口、スタンスの本が出せていて、それを読み比べることができるのは、魅力的なことだと思います。そうして繋がりを持って一つのテーマを掘り下げていけるのも読書の醍醐味ですよね。
青木:僕も『ケアと編集』というタイトルを見た時点で、「これは思いつかないな」と唸らされました。「シリーズ ケアをひらく」で有名な著者・白石正明さんの起用もそうですし、オビにある「人を変えたり治したりしないための『編集術』」という文言も、これはうまいなと。ここからは持論になりますが、もともと岩波新書さんは社会問題からのアプローチが非常に上手で、それがうらやましいと思っていました。現代新書時代にノンフィクションをいくつか手がけたことがあるんですが、なかなかうまくいかなかった。新書で最も早くからノンフィクションを手がけてきたのは岩波さんだと思っていて、『ケアと編集』や『ケアの物語』もそこから派生しているのではと。
中公さんは先ほども申し上げたとおり、歴史物に飢えているなかで個人的にも読みたくなる本が多くて。現代新書時代に司馬遷の『史記』をテーマに一冊できないかと考えたことがあって、その際に『二十四史』を読み、「こういう切り口でこういう先生に書いていただくといいのか」と、まさに「やられた」という感覚でした。最近、現代新書が『内務省 近代日本に君臨した巨大官庁』(編:内務省研究会)という本を出したのですが、これは中公さんに対して一矢報いたんじゃないかなと、勝手なことを思っています(笑)。それは冗談として、中公さんの歴史物は本当にすごいなと。
■新書を巡る状況の変化
ーー各レーベルの歴史やカラーがよく伝わるお話でした。その上で、一連のポストも含めて、新書をめぐる状況をどう捉えているか、ということも聞かせてください。
中山:岩波新書編集部の「新書がもっと若者に流行ったらいいな、と常日頃から思っている。」というポストは、倉田シウマイ(リップグリップ)さんというお笑い芸人がやっているYouTubeチャンネル「新書といっしょ」からの引用で、これは我々にとって切実な願いなんです。岩波新書の本づくりにおいて、新書という媒体の特徴や歴史は重要な意味をもつのですが、いまや若者に限らず、「新書とはどんな本なのか」が、そもそも知られてはいません。だからこそ、新書に親しみのない人たちにいかに新書を知ってもらうかが、大きな課題だと考えています。しかし、それは一レーベルだけでどうにかできるものではない、ということも強く感じます。この思いは、皆さんにも共有していただけるのではないか、と。
上林:私は「我ら三レーベル、生まれし日、時は違えども、新書の契りを結びしからは、心を同じくして助け合い、幅広い読者に本を届けん」と、三国志になぞらえてふざけたポストをしただけなんですが(笑)、今の中山さんのお話には共感しかなくて。先ほど岩波新書さんから「ケア」についての2冊が近い時期に刊行されて、それを読み比べるのが醍醐味だと申し上げました。それは他レーベルでもあっていいことで、例えばブルーバックスに『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか』(旦部幸博)という面白い本があって、一方で中公新書にもロングセラー『コーヒーが廻り世界史が廻る 近代市民社会の黒い血液』(臼井隆一郎)があり、自然科学的な目線と、歴史的な目線で併せて読める。あるいは、岩波さんから出された『アルベール・カミュ 生きることへの愛』(三野博司)、弊社から出ている『戦後フランス思想 サルトル、カミュからバタイユまで』(伊藤直)を並べて、一人の思想家をじっくり掘り下げる視点と、より俯瞰的な視点で見てみるのも非常に面白いと思います。野球に例えるなら、普段はセリーグとパリーグに分かれて各球団争っていますが、世界大会のWBCに出場するときは一丸となって戦うように、新書界全体でもさまざまな取り組みができれば、当初のポストにあった若い読者の獲得にもつながっていくのかなと、願望込みで思っています。
青木:一連のポストについて、拾ってくれる方々が本当にいい人たちで、いい雰囲気でしたよね。新書だけでなく、紙の出版物を巡る状況が厳しいのは事実ですが、そのなかで「新書愛」というのは非常に強く存在するんだと。もっと言えば、そういう読者の方々って、僕ら異なる新書の関係者が仲良くしているのを見るのが好きなんじゃないかと思うんですよね(笑)。逆にいうと、競合だからといっていがみ合うようなことは好きじゃない。そういう意味で、新書は恵まれているな、と思うところもありますね。
ーー新書は常にヒット作が出ている、という印象もあります。
上林:月あたりの刊行点数が相当に多いので、話題作やヒット作は相応に出ていると思います。ただ、かつてはあったミリオンセラーもしばらく出ておらず、読者の好みや関心も細分化されているなかで、なかなか大変な面も多いのではと。
青木:時代も変わっていますし、よほどのことがなければミリオンセラーというのは難しいでしょうね。今後も時折、外れ値のように特異な例は出てくるかもしれませんが、ブルーバックスを考えても、何十万部も売れていたのはだいぶ前の時代です。最近では『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』(藤井一至)が久しぶりの大きなヒットです。一方で電子書籍のようなあらたなやり方も出てきていますし、部署としてしっかりやっていくしかないだろうなと。
中山:確かにヒットしている新書はありますよね。ただ、よく読まれているものほど、新書の固定読者層の間で広まったというより、むしろ、そうではない人たちに届き、その人たちの間で広まったという印象をもっています。つまり新書だからヒットしたというのではなく、単発の本として受容されている。かつてはもっと新書の読者層が厚く、そのなかに各レーベルの読者がいて、それが交差しながらヒット作が生まれていたと思うのですが、残念ながら「新書の読者」という畑はずいぶん痩せてしまっているという感じがしますね。昔だったら、書店に行けば各レーベルの新書がずらっと並んでいて、新書棚を眺めれば「この店は中公新書が多いな」「ブルーバックスに力を入れているな」という感じで本屋の個性もわかり、そこで何かしら読みたい本を見つけることもできましたが、いまはそういう場が減っています。だからこそ、私たちも畑をしっかり耕さなければいけないという思いがあります。今回の一連のじゃれ合いのようなポストが、新書を手にするきっかけになってくれるのであればうれしいですが、これも新しい畑の耕し方なのかもしれません。
上林:若い世代として、楊木さんはどうですか?
楊木:皆さんのお話の通りで、最近は新書棚じゃないところから火がついていくケースが増えている印象です。少し前までは、一切なりゆき 樹木希林のことば』(樹木希林、文春新書)や『80歳の壁』(和田秀樹、幻冬舎新書)など、店頭でたくさんの人の関心を呼び、あれよあれよとベストセラーになっていくものが多くありました。ですが最近では、たとえば『ケアと編集』の著者である白石正明さんも、『土と生命の46億年史』の藤井一至さんもSNSを巧みに使われる方で、そこで興味を持った読者が買っている。中公新書の一大ベストセラー、『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(今井むつみ、秋田喜美)もXから火がついたところがあると思います。今年の新書大賞受賞作『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆、集英社新書)もそうですし、SNSで関心を持って新書を買うという、新しい読者層が生まれているのではないかと。
■各レーベルの推し作品は?
ーーなるほど、書店からSNSへという大きな変化ですが、考え方によっては希望が持てるポイントかもしれませんね。続いて、それぞれの自社のイチオシ作品も聞かせてください。
中山:先ほど『ケアと編集』『ケアの物語』をご紹介いただきましたが、昨年1月に『ケアの倫理 フェミニズムの政治思想』(岡野八代)という本を出しています。3冊とも性格は大きく異なりますが、併せて読んでいただけると、時代と向き合う姿勢において通底するものを感じていただけるのではないかと思います。さらにもう一冊、あえてまったく違うものを紹介すると、蓮池薫さんの『日本人拉致』という本が5月に出ました。こちらもよく読まれています。先ほど「ノンフィクション」のお話もありましたが、岩波新書は現場性、当事者性に徹底的にこだわった作品の伝統があると思っていて、この本はその最たるものです。新書らしい一冊になっていて、岩波新書で出せてよかったなと感じています。この問題を風化させないためにもぜひ若い人たちに読んでいただきたいですし、また、普段は「岩波の本は読まない」と思っていらっしゃる方にも手に取っていただけたら嬉しいですね。
上林:イチオシ作品としては、先ほども話に出ましたが受賞が相次いだ『日ソ戦争』もそうですし、今のイスラエルの状況もあると思いますが、『ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで』(鶴見太郎)も非常に好調です。自分が関わっているものでは、『日本政治学史 丸山眞男からジェンダー論、実験政治学まで』(酒井大輔)を。政治という巨大なテーマなので各レーベルから多くの本が出ていると思いますが、そもそもそれを分析、研究して論じる学問としての日本政治学自体、非常に幅広いものがあります。それだけで何冊でも本を書けるテーマですが、新書はそこに一定の基準で線を引いて、多くは10万~12万文字くらいでまとめるわけですね。1984年生まれの著者がそれを書き上げたのもチャレンジングなことですし、議論の叩き台になりうる本だと思っています。日本の政治学を知る入り口として読んでいただけたらうれしいですね。
青木:これまでブルーバックスは、「電子とは何か」とか「力とは何か」とか、シリーズを牽引してきたロングセラーがありまして、それが20年、30年と売れ続けてきたぶん、新たな知見を加筆する必要性が生じていたりしていて。そこで科学の根本の原理などをしっかり説明する本をアルキメデスの浮力の原理にひっかけて「エウレカ」シリーズとして送り出すことにしました。その第一弾として『電子を知れば科学がわかる 物質・量子・生命を司る小さな粒子』(江馬 一弘)を出しており、今後の10年、20年を担っていくような、学び直しにも使えるようなシリーズにしていきたいと考えています。また、家田が担当した『土と生命』は二つの点で特徴的だと考えていて、比較的固い筆致になる傾向にあるブルーバックスと比較しても、著者が比喩や自虐ネタも含めてナラティブな書き方で読ませる面白さがあり、そして単に地球科学だけの本ではなく、物理・化学・生物といった、おもしろくてためになる理科総合の本を読んでいるような幅広い学びがあります。こういう本をもっと増やしていけたらなと思っています。
ーーさて、「心を同じくして助け合い、幅広い読者に本を届けん」というところで、今後もレーベルの垣根を超えた企画などの可能性もあるでしょうか。
上林:他社の本でも、良いいものは良いと言えるのが、この業界の素晴らしいところだと思っています。今回は古い3レーベルが揃いましたが、また別のレーベルとのコラボも生まれるかもしれませんし、Xでじゃれ合うこともあるかもしれません(笑)。「新書」という一つの枠組みのなかで、切磋琢磨して面白いことをやりたい点では共通していると思うので、何かとっかかりがあれば、さまざまな企画につなげたいですね。
中山:実際、Xでのじゃれ合いからこういう企画を生んでいただいたわけなので(笑)、他のレーベルとも積極的に交流していきたいですね。時々変なポストをして、「どこかの新書レーベルが反応してくれないかな」と期待しているところもあります。実際、各社それぞれSNSの運用については方針が異なりますから、「反応したいけれど、状況的になかなかできなくて」というお話を聞くこともあって。新書を盛り上げるためにも、「交流してみるとこういういいこともあるよ」といえるようなポジティブな成果を実現したいですね。
青木:実は、「赤の岩波・緑の中公・青のブルーバックス」という感じで、ChatGPTに三国志風の絵を描かせてみたことがあるんですよ(笑)。いろいろ考えてポストするには至りませんでしたが、いつか「三読志フェア」のようなことができたらいいなと思っています。ブルーバックスも新書ですから、今後も岩波さんや中公さんのお力を借りながら、あらためて認知度を高める努力を続けられたらと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
(松田広宣)

