@AUTOCAR

写真拡大 (全6枚)

生産されなくなるV型10気筒エンジン

試乗を終えて集合場所へ戻ると、スマートフォンを手にした10代の若者が集っていた。グレートブリテン島の南部、風光明媚な海岸線のドライブルートでも、こんなクルマたちには滅多にお目にかかれないのだろう。

【画像】V10協奏曲 ガヤルド カレラGT バイパー 現行のウラカンとR8 名作レクサスLFAも 全120枚

ランボルギーニ・ガヤルドは、いかにもなカタチだからすぐに認識できる様子。だがポルシェ・カレラGTとダッジ・バイパー RT-10は、初めて目にする人も多いようだ。テールエンドにあしらわれたエンブレムを確認し、納得して笑みを浮かべる。


手前からレッドのダッジ・バイパー RT-10と、シルバーのランボルギーニ・ガヤルド、シルバーのポルシェ・カレラGT

今回乗り比べた3台の最高出力を合計すると、1500馬力を超える。最大トルクは170kg-m以上に達し、排気量は19.0Lにもなる。

個性的な容姿もさることながら、際立つ特徴は何よりエンジン。間もなく生産されなくなる、大排気量のV型10気筒を搭載している。現在まで生きながらえた例は、ランボルギーニのウラカンとアウディのR8だけになってしまった。

電気自動車が未来の乗り物だった20世紀末には、自動車ブランドの買収や合併が相次いだ。イタリアのランボルギーニを、アメリカのクライスラーが所有していた時代があった。現在は、ポルシェと同じフォルクスワーゲン・グループ内にあるが。

その関係性が、クライスラーの1ブランド、ダッジにV型10気筒エンジンを積んだ高性能モデルをもたらした。今回の場合はレッドのボディにホワイトのストライプが眩しい、フロントエンジン・リアドライブのバイパーだ。

ランボが改良したプッシュロッドV10

当時、クライスラーのトップにいたボブ・ルッツ氏の指揮で、ブランドイメージの向上を目的に生み出されたバイパーは、1989年の北米国際自動車ショーで華々しくデビュー。大きな反響を呼び、1992年1月から販売がスタートしている。

その専用ユニットの開発を引き受けたのが、傘下にあったランボルギーニだった。ただし、ガヤルドがミドシップするものとは基本的に関係性を持たない。シリンダーの数とオールアルミ製であること以外、共通要素はないといっていい。


ダッジ・バイパー RT-10(1992〜1996年/欧州仕様)

もともとはダッジのピックアップトラックに載っていた、鋳鉄製のマグナム・ユニット。ランボルギーニの技術によって制御系と冷却系へ改良を受け、ブロックの素材が軽いアルミニウムへ一新され、バイパーのボンネット内へ搭載されている。

油圧リフターによってプッシュロッドが動くという、クラシカルなOHV構造は変わらない。排気量当たりの出力は49psと驚くような数字ではなかったが、7997ccという大容量に物をいわせ、4600rpmで発生する最高出力は405psに達した。

最大トルクは62.1kg-m/3600rpm。タイヤの付いた大蛇と呼べるたくましさだ。

シャシーはチューブラー・スペースフレームで、ボディパネルは剛性を担わない樹脂製。当初のボディスタイルはロードスターのみで、ソフトトップに取り外し式のサイドガラスという設定だった。乾燥していて広大なアメリカなら、充分な装備といえた。

新しいアルミボディのスリムなミドシップ

ボブが抱いたイメージは、1990年代のコブラ。軽いオールアルミ製エンジンに加えて、ルーフだけでなくドアハンドルも省略し、車重は1522kgに抑えられていた。実用性は追求されていなかった。

巨大なパワーは、リミテッドスリップ・デフを介して後輪を駆動。幅が13.0Jという極太のホイールには、幅335のタイヤが巻かれた。サスペンションは、前後ともにダブルウイッシュボーン式で、欧州車に迫る洗練された足まわりを得ていた。


ランボルギーニ・ガヤルド(2003〜2013年/英国仕様)

今回の3台では最も小柄なのが、イタリア生まれのガヤルド。スタイリングはシャープだが、シルバーということもあって主張はさほど強くない。ターゲット層はコルベットやTVRではなく、フェラーリやポルシェを嗜好するドライバーに設定されている。

クライスラー傘下にあったランボルギーニは、1988年のV10エンジンを搭載したP140と、ジョルジェット・ジウジアーロ氏によるデザインの1995年のカラ・コンセプトで、ジャルパの次世代を模索していた。しかし、開発に必要な資金を準備できなかった。

しかし、1999年にフォルクスワーゲン・グループのアウディに買収されたことで、状況は好転。デザイナーのルク・ドンカーヴォルケ氏の手による、まったく新しいアルミニウム製ボディのミドシップ・スーパーカーが誕生した。

パワーユニットに選ばれたのは、サンタアガタが誇る技術の成果といえた、4961ccのオールアルミ製V10エンジン。シャシー中央へ縦方向にマウントされ、ドライサンプ化することで低重心化を叶えていた。

カーボン製タブシャシーの中央にV10

同クラスのフェラーリを凌駕するべく、最高出力は500ps、最大トルクは51.8kg-mを発揮。同時期のV8エンジンを搭載した360モデナは、405psと37.9kg-mだった。

トランスミッションは6速マニュアルの他に、パドル操作が可能なセミオートマチックのeギアも設定。四輪駆動システムを搭載し、車重は1520kgとやや重めに仕上がっていたが、確実なトラクションを確保していた。


ポルシェ・カレラGT(2004〜2006年/英国仕様)

他方のポルシェは、ガヤルドと同時期に過去最高のスーパーカーを生み出したいという野望を実現させた。レギュレーションの変更に伴い、2000年に準備していたル・マン・マシンは活躍の場を失っていた。それにはV10エンジンが載っていた。

そこでが導かれたのが、モータースポーツの技術を展開したミドシップのカレラGTだ。低く好戦的なフォルムで、グラスエリアが小さくリアデッキは長大。ル・マン・マシンのようにも見えなくはなく、現在でも他のクルマとは一線を画す。

スペック表を確認しなくても、最高速度は300km/hを軽く超えると想像できる。それでいて、エンブレムを確認せずともポルシェだと理解できる。現在のボクスターとの血縁関係も感じ取れる。

専用のカーボンファイバー製タブシャシーの中央に縦置きされたのは、5733ccのオールアルミ製V10エンジン。軽量なカーボン製クラッチと6速マニュアルを介して、後輪を駆動した。

エンツォに並ぶハイエンド・スーパーカー

カレラGTの最高出力は620psと、今回の3台では最強。最大トルクは5750rpmで60.0kg-mを発揮するだけでなく、アイドリング状態でも41.6kg-mという大トルクを生み出す。

シートは軽いカーボン・ケブラー製で、1脚10.3kgしかない。隅々まで練られた軽量化対策によって、車重は1472kgに抑えられている。


ポルシェ・カレラGT(2004〜2006年/英国仕様)

生産数は1270台の限定で、英国に上陸したのは49台のみ。新車当時、英国での販売価格は33万ポンドと桁違いで、パガーニ・ゾンダやフェラーリ・エンツォフェラーリに並ぶ、ハイエンド・スーパーカーの仲間入りを果たすポルシェだった。

そして、驚愕の速さも披露した。AUTOCARで実施したテストでは、48km/hから112km/hの中間加速を2.7秒でこなし、過去最速のタイムを残している。

今回ご登場いただいたシルバーのカレラGTは、マーク・サンプター氏がオーナー。新車で購入し、現在まで大切に維持されている。他の2台には申し訳ないが、最も大切に扱わなくては、という気にさせる。

自然吸気のV10エンジンを覆うエンジンカバーには、メッシュパネルの大きな山脈が2本伸びる。壮観な後ろ姿だ。

フロントヒンジのカバーを持ち上げると、シュツットガルトの精巧な結晶が顕になる。2列のシリンダーヘッドが、狭角で並ぶ。カーボンの織り目が美しい構造部材には、プッシュロッドで動くザックス社製のコイルオーバー・ユニットが組まれている。

この続きは後編にて。