集中豪雨でクルマが水没!? 車内に閉じ込められたときに取るべき行動とは

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クルマが水没するとドアが開けられなくなる!?

 2021年の夏も、ゲリラ豪雨や線状降水帯などによる集中豪雨が各地で発生しており、甚大な被害が出ています。

 夏本番を迎えたことで気温が上昇し、積乱雲が発生して突然豪雨に襲われる可能性は依然として高い状態だといえるでしょう。

冠水路を走るクルマ

【画像】冠水路は走っちゃダメ! 台風やゲリラ豪雨時に危険な場所はどこ?(12枚)

 とくにクルマで走行中に豪雨に遭遇すると、冠水路に進入してしまったり、土砂災害に巻き込まれたり、あるいは視界不良による道路からの逸脱や脱輪などさまざまなトラブルが起こることが想定されます。

 このような状況に陥った場合、どのような行動を取ればいいのでしょうか。

 まず、この冠水路に進入してしまった場合、水圧によってドアが開かなくなるという事態が発生します。

 JAF(日本自動車連盟)がかつておこなった冠水実験では、前方からスロープを使った前傾姿勢(水深30cm、60cm、90cm、120cm)でミニバンの後部スライドドアが開くかを検証しています。

 一般的な道を想定してスロープ(斜道)に頭から進入した場合、水深30cmではフロントドアはかなり水没しますが、後部座席はまだ水位も低く、問題なく開閉可能でした。

 しかし、水深60cmでは水の抵抗が大きくなり、スライドドアの開閉までに55秒とかなりの労力を要する結果となり、ドアを開けた瞬間に車内に大量の水が入り込んでしまいます。

 水深90cmになると、グリルは完全に水没して車体も浮きはじめ、スライドドアの3分の1から半分程度が水没した状態になると、60秒かかってもドアを開けることすら不可能になります。

 一方、4輪が接地した状態(完全水没)でスライドドアの窓付近まで水没した場合、ドアはかなり重いものの、水の抵抗が減ることで開けることができました。

 水深120cmで後輪が浮いた状態ではドアを開くことができず、4輪が接地している場合は水の抵抗は大きいものの40秒で開閉できるという実験結果になりました。

 水深が120cmになると逆にスライドドアは開けやすくなるのですが、その一方で後部座席は腰上まで水が入り込んでおり、その状況で冷静に対処することができなくなる可能性が高いといえそうです。

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 ドアが半分程度水没してしまうと、開くためには通常の5倍も力が必要になるといわれています。

 高齢者や女性、子供などがドアを開けるのは困難な状況になることから、ドアの高さにまで水がくる前に脱出口を確保する必要があります。

冠水した道路を無理矢理走り抜けるのは危険

 JAFの実験では水深60cm程度でドアが開きづらくなってしまうとの実験結果でしたが、じつはタイヤの半分程度まで水没してしまうとさまざまなトラブルが発生するといいます。

 最近の集中豪雨などではタイヤを超える高さまで水位が上がってしまうケースは多くありそうです。

 栃木県の整備工場に勤める整備士Tさんに話を聞いてみました。

水没して通れなくなった道路

「基本的にクルマの耐水性は、タイヤ半分程度までと考えておいていいと思います。そのあたりがちょうどサイドシル付近になり、これ以上になると車内に浸水がはじまります。

 とくに注意して欲しいのがピラーの付け根のあたりです。ここには配線が集中しており、Aピラーの下には電気系のハーネスやコネクター、カプラーなどが収納されています。しかし浸水は想定されておらず、ほとんど防水処理されていません。

 Bピラーの付け根も同様で、格納された配線に対しての防水処理はほとんどなく、水浸しになると電気系が動かなくなってしまいます」

 悪路に強いイメージがあるSUVですが、乗用車ベースのモデルの最低地上高は200mm程度。それ以上の水深ではアンダーフロアが水浸しになることが予想されます。

 電気系統がダメになると、パワーウインドウは開かなくなるため、クルマが浸水してドアや窓が開けられなくなる前に脱出することが理想です。

 また、ニュースなどでよく見かけるのが、冠水した道路を無理矢理走行していくクルマです。

 その場から早く立ち去りたい気持ちもわかりますし、止まるよりは走り抜けたほうが安全そうですが、大雨による地盤沈下で道路が陥没していることもあり、さらに濁った水が溜まっている状況では陥没している箇所がわからないので大変危険です。

 万が一クルマが動かなくなってしまった場合はどうしたらよいのでしょうか。

「最近では『緊急脱出用ハンマー』などを推奨するケースも多いです。素手では窓ガラスは割れないですし、車内にありそうな硬いものでも割れないと思うので、いざというときのために備えておくといいでしょう」(整備士 Tさん)

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 窓ガラスを割って脱出する際、サイドウインドウやリアウインドウを割るのが望ましいとされています。

 フロントガラスは「合わせガラス」を用いることが法律で義務付けられているため、割ろうとしてもヒビが入るだけです。

 一方、サイドウインドウやリアウインドウは強化ガラスが用いられており、普通のガラスよりも割れにくくできていますがハンマーであれば割れる可能性が高いのです。