難局もとにかくパーでしのいだモリカワに勝機が訪れた(撮影:GettyImages)

写真拡大

今年の「全英オープン」を制したのは、初日から首位を走り続けてきた2010年大会覇者のルイ・ウーストハウゼンではなく、初出場のコリン・モリカワだった。
昨年の「全米プロ」を初出場にして制覇し、メジャー初優勝を挙げたモリカワは、今回の全英オープンでも初出場にして勝利を挙げた。異なる2つのメジャー大会をどちらも初出場で制覇したのは史上初の大記録。モリカワはタイガー・ウッズを凌ぐ“スピード出世”をやってのけ、世界を驚かせた。昨年の全米プロで逆転によるメジャー初優勝を挙げたとき、モリカワは「とても興奮を覚えている。でも、勝つべくして勝った気がする」と言った。
その意味は、彼が思い上がっていたわけでは、もちろんない。モリカワの武器はアイアンショットの精度とパットの上手さであり、彼はその武器を生かして戦うことを知っていた。さらに言えば、その武器を、いつどんなふうに生かすかも彼は心得ていた。
思い描いたプラン通りにプレーできれば、必ず勝てるはず―。昨年の全米プロで、それができたと感じたからこそ、彼は「勝つべくして勝った」と語ったのだろう。あのときは、大混戦の中にいたモリカワが終盤16番のイーグルで一気に抜け出した。それが勝利の決め手となった。
今回の全英オープンでも、やっぱり正確なアイアンショットと着実なパットを生かしていたが、その生かし方は独特だった。
ウーストハウゼンと1打差で最終日をスタートしたモリカワは、淡々とパーを重ね続けた末、7番、8番、9番の3連続バーディで形勢を逆転。単独首位へ浮上し、さらに2位との差を4打へ広げた。
だが、勝利のカギとなったのは、グリーンを外しながらも寄せワンでパーセーブした10番、そして6メートルのバーディパットを沈めた14番の直後に、グリーン奥のラフへ外しながらも見事にパーを拾った15番だった。あの15番のパーパットを沈めたとき、モリカワは力強く右拳を握り締めてガッツポーズを繰り出した。
16番以降は、ピンを狙うのではなく、ボギーを叩かない位置へボールを運ぶことを目指し、その通り、彼は上がり4ホールすべてをパーで凌いだ。いや、それどころか、ラスト31ホールすべてをボギーなしで切り抜けたことが素晴らしい。
今大会の舞台となったロイヤル・セントジョージズは、真夏でも冬の防寒対策が求められるスコットランドではなく、温暖なイングランドにある。4日間、快晴に恵まれた「イングランドのリンクスコース」で、多くの選手のスコアが記録的にぐんぐん伸びていた。
とはいえ、このコースは、小さなミスが大きなケガになる怖さを随所に秘めている。その中でモリカワは、勝利のカギとなるものが、奇跡のようなイーグルやバーディではなく、いかにパーを拾えるか、いかにスコアを落とさずにいられるかであることを知っていたのだと思う。だからこそ彼は、パーパットを沈めたときこそ、力強いガッツポーズを見せたのだ。
小柄な体格ゆえに飛距離が出ないモリカワは、いつも基本に忠実にコツコツ、黙々と戦ってきた。そうやってジタバタしない戦い方を身につけたモリカワは、それが自分の財産であることも知っていた。
持っていないものを無理に追い求めるより、持っている財産を生かして戦う。それが、このロイヤル・セントジョージズのサンデー・アフタヌーンの大詰めで、スコアを落とさない戦い方となって具現化された。
「僕の人生で最高の瞬間です」
そう、スコアが伸びる全英オープンだったからこそ、モリカワの勝利のカギはパーだった。そのことが、何より印象に残った全英オープンだった。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>