国税庁が実施した(PDFファイル)民間給与実態統計調査によると、令和元年(2019年)のパートタイマーやアルバイトを除く正規労働者の平均給与は436万円となっています。この調査結果を見ると「年収300万円代」という額が恵まれているように思えませんが、ライターのMatt Lillywhite氏は「年間370万円稼ぐ人は全世界的に見れば上位1%に入っている」と主張し、先進国からは見えない発展途上国の状況について訴えています。

If You Make $34,000, You’re Part Of The One Percent | by Matt Lillywhite | Apr, 2021 | The Apeiron Blog

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先進国で生まれ育ったLillywhite氏は、ニュースやYouTubeの動画で発展途上国の貧困について見たことがあったそうですが、実際にタイのバンコクで発展途上国の貧困に触れた時のショックは想像を上回っていたとのこと。

Lillywhite氏がバンコクの街を歩くと現地の人々から「裕福な西洋人」だと認識され、人々はお金に余裕があるかどうかを頻繁に訪ねてきたそうです。当時のLillywhite氏は数百ドル(数万円)しか持っておらず、自分の生活を維持するためには少しのお金も無駄にできないと認識していましたが、現地の人々にとっては数万円あればしばらくの間の家賃と食事をまかなうのに十分な額でした。

先進国にいれば「自分が裕福だ」と感じることもなかったLillywhite氏は、バンコクでの数時間で自分が裕福な側の人間であることに気付きました。「バンコクの人々は、世界中の大多数の人々と比較して私が非常に幸運であることに気付かせてくれ、人生についての全く新しい見方を与えてくれました」とLillywhite氏は述べています。

そして、この記事を読んでいる人に向けて「あなたも多分幸運です」とLillywhite氏は指摘。もちろん、自分自身では完璧な人生を送っているとは思っておらず、住んでいる場所に不満があったり最新のiPhoneを買えなかったりするかもしれませんが、それでも世界の大多数の人々と比べると「特権的」な存在だとのこと。

Lillywhite氏の場合、空腹を感じれば近所の食料品店に行って大抵のものは買うことができますが、世界には食品を含む基本的な必需品すら買えない人が多くいます。たとえばロイター通信の報告によると、内戦などで疲弊したイエメンでは2021年中に40万人もの幼児が飢餓で死亡する可能性があるとされています。同様に、ハイチやマダガスカルといったその他の発展途上国に住む人々も飢えに苦しんでいます。

アメリカを含めた西側諸国に住む人が自覚しにくい「特権」について、Lillywhite氏は以下のように説明しています。

・言論の自由:地球上の多くの国や地域では言論の自由が存在せず、自由に意見を述べたり政府を批判したりといった行為が許されていません。こうした国や地域で発言が問題視された場合、懲役刑が下されたり国外へ追放されたり、あるいは物理的に殴打されたりすることもあります。

・金銭的な裕福さ:アメリカの中産階級は国際基準で見れば信じられないほど裕福であり、全世帯75%以上が3万4000ドル(約370万円)以上の世帯収入を稼いでいます。これは、全世界的に見れば上位1%に入るとのこと。

・公教育への無料アクセス:アメリカやその他の先進国で生まれ育った場合、無料で義務教育を受けることができた可能性が高いはずです。しかし、ユネスコのデータによると全世界では2億6400万人の子どもが学校に通えておらず、成人であっても7億5900万人は文字を読むことができません。

・海外渡航の容易さ:アメリカのパスポートを持っている場合、ビザなしで187カ国に旅行することが可能ですが、ほとんどの国に住む人はビザの取得に多額の費用と時間がかかります。なお、日本のパスポートはアメリカよりもさらに強力であり、2021年時点でビザなしで191カ国に旅行することが可能です。

・人権の尊重:ほとんどの西洋諸国では人々の人権が保証されており、たとえ犯罪で逮捕されても肉体的な拷問を受けたり人権を剥奪されたりしません。しかし、中国の新疆ウイグル自治区ではウイグル人が強制労働に従事させられたり、強制収容所で激しい拷問や性的暴行を受けたりしていることが報じられています。

Lillywhite氏は、世界中の多くの人々が自身の考え方や無知が原因ではなく、自分ではコントロールできない「生まれた場所」によって過酷な生活を強いられていると指摘。もちろん、先進国に生まれた人々が「自分は恵まれていて申し訳ない」と謝罪する必要はないものの、自分が恵まれた立場にあることを認識することが重要だと主張しました。