梅酒をワインで造ってもいい?

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 毎年6月になると、自家製の梅酒造りを楽しんでいる人も多いと思います。家庭での梅酒造りといえば、ホワイトリカー(焼酎)を使うのが一般的ですが、「日本酒やワインで造ってもおいしい」という声もあります。しかし、梅酒とはいえ、お酒はお酒。守らなければいけないルールがあるようです。日本酒やワインで自家製梅酒を造ってもよいのか、国税庁酒税課の担当者に聞きました。

ベースのお酒はアルコール20度以上

Q.酒税法では、お酒を造る人は製造免許を受けること(同法7条)と定めています。免許を持たない一般市民が自宅で梅酒を造る場合、どういう条件を満たせば法的に問題ないのでしょうか。

担当者「酒税法の根拠条文としては、43条の『みなし製造』という規定の中にあります。43条ではまず、『酒類に水以外の物品を混和(混ぜること)した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす』と記載しており、『お酒に何かを混ぜることをお酒造りとみなす』としています。

その上で、『みなし製造』の例外となる行為を挙げており、43条11項で梅酒関係について触れています。一部を抜粋すると、『消費者が自ら消費するため酒類と他の物品との混和をする場合』は無免許製造に該当しない、ということになります。ただし、酒税法施行令などで条件が示してあります。

(1)ベースとなるお酒は、アルコール度数が20度以上のもので、かつ酒税が課税済みのもの
(2)混ぜていい物品は、糖類と梅、あとは財務省令で定めるもの
(3)混ぜた後にアルコール度数で1度以上の発酵がないこと
(4)米、麦、トウモロコシ、ブドウ、アミノ酸などは使ってはいけない
(5)できたお酒を販売してはいけない

こうした条件を守っての梅酒造りは、違法行為には該当しません」

Q.米やトウモロコシ、ブドウなどを加えてはいけないのはなぜですか。

担当者「これらは発酵が起きやすく、1度以上の発酵につながる可能性があるからです。ブドウは天然の酵母が付いていて、果実をつぶして放っておいても、糖分と酵母によって発酵が始まることがあります。米やトウモロコシなども糖分を含んでいるので、お酒と混ぜると発酵が起きやすくなります」

Q.梅酒造りに使うお酒のアルコール度数を『20度以上』に限定しているのはなぜですか。

担当者「20度以上あれば、新たな発酵が起きにくいからです。アルコール度数が高いと、酵母の働きを抑制するのです。そのため、線引きとして20度以上としています」

Q.梅酒造りには焼酎などの蒸留酒を使うことが多いですが、20度以上であれば、日本酒やワインなどの醸造酒を使ってもよいのでしょうか。

担当者「清酒(日本酒)は酒税法上、アルコール度数が22度未満のものとされています。あまり見たことはありませんが、20度以上であれば清酒で梅酒を造ってもよいです。ワインなどの果実酒は、酒税法上20度未満のものとされています。そのため、ワインは家庭での梅酒造りには使えません」

Q.自家製梅酒造りは「自ら飲むため」はOKで、販売はNGということですが、無料で友人・知人に振る舞うことは問題ないのでしょうか。

担当者「自分が梅酒を飲む際、友人や知人にも無料で振る舞うことは問題ありません。お裾分けも程度にもよりますが、若干量を無料で分けるのは可能かと思います。ただ、あまり大量になってくると、全然問題ないと言い切れるか難しくなってくるかもしれません。『社会通念上の範囲内であれば問題ない』というところだと思います」

Q.「アルコール分が1度以上の発酵がない」ことが条件ということですが、梅酒を漬けていてアルコール度数が上がることはあるのでしょうか。「梅酒造りで蜂蜜をたくさん入れたら泡が出てきた。発酵しているかも…」と心配している知人がいます。

担当者「酒税法などで定められた材料を使っているのであれば、発酵してアルコール度数が上がることは、まずないと思います。蜂蜜を使っていて泡が出たとしたら、蜂蜜の中にもともと入っていた空気が出てきた可能性があります。仮に蜂蜜の糖分で微細な発酵をしたとしても、それで1度以上アルコール度数が上昇することは考えられません」

Q.ちなみに、赤ワインにオレンジなどの果実を漬けた「サングリア」を自分で造ることは、法的に問題があるのでしょうか。

担当者「サングリアは、果実酒にオレンジなどを漬け込んだものです。先述した通り、果実酒はアルコール度数が20度未満なので、ベースのお酒としては使えません。違反の例外として考えられるとすれば、酒税法43条10項の『消費の直前において酒類と他の物品との混和をする場合』です。例えば、カクテルは、お酒を飲む直前に混ぜますから、例外扱いです。

しかし、サングリアはワインに果物を漬けておいたり、寝かせたりするのが一般的です。そうなると、『消費の直前の混和』には当たらないので違法となります」

Q.梅酒造りで違法行為をしてしまった場合、どのような罰則があるのでしょうか。

担当者「自分で造った梅酒を販売したり、20度未満のお酒を使って梅酒を造ったりした場合、『無免許製造』に該当します。酒税法54条の1項で、10年以下の懲役または100万円以下の罰金という罰が定められています。

ただし、無免許製造を把握した場合でも、通常は即逮捕とはならず、調査を行い、どれだけ造っているかなどを確認して、罰金相当額を納めさせることになります。梅酒造りではありませんが、韓国居酒屋などでよく出てくるお酒『マッコリ』を無免許製造したとして、国税局から酒税法違反を指摘されたという実例があります」