給付金がもらえない…制度のスキマに落ちた「フリーランス」の悲鳴 必要な人に届かない…

写真拡大

持続化給付金がもらえない

「いままでは月25万円ほどあった収入が、4月にはゼロになってしまいました。フリーランスなので休業手当もなく、食べていくのに困るくらいで…」

私は大阪で公認会計士・税理士事務所を経営していますが、このところこうした相談が如実に増えています。言うまでもなく、新型コロナウイルスの蔓延に伴う自粛で、多くの方の収入が激減しているためです。

相談にいらっしゃる方の職種は様々ですが、とくに困っているのは、いわゆる「フリーランス」の方々です。フリーランスは、国からの補助を受けるにあたって、不利な状況に置かれているケースが目立ちます。

国会でも話題になりましたが、具体的には「持続化給付金」が得られないことが大きな問題となっています。個人事業者の方は100万円を上限にこの給付が受けられるはずなのですが、フリーランスのなかには、この制度からこぼれ落ちてしまっている人がいます。

〔PHOTO〕iStock

なぜ給付を受けられないフリーランスがいるのか

では、なぜフリーランスの方は補助を受けるのが難しいのでしょう?

そもそも国は、売上が大きく減少した事業者に対して「持続化給付金」を出しています。

これは、感染症拡大によって売上が大きく減少した事業者に対して、現金を給付する制度です。中小法人に対しては200万円、個人事業者に対しては100万円を上限に、昨年1年間と今年1年間の売上を比較して、その減少分を補填する形で給付金が支給されます。「融資」ではなく、「給付」なので、返済の必要はありませんし、対象範囲も広いことがその特徴です。

細かな条件については、こちらのサイトを参照してほしいのですが、

フリーランス問題を理解する上でのポイントは、「給付を受け取ることのできる個人事業者は、収入を事業所得として計上している事業者に限定される」ということです。
フリーランスなどの個人事業主が確定申告をする際、その収入は「事業所得」のほか「雑所得」「給与所得」など、複数種類に区分されます。

ここに、制度設計上の大きな不備があります。

不可抗力で「雑所得」になることも

たとえば、「雑所得」で申告した方の例をご紹介します。

「私はダンススタジオでインストラクターの仕事をしており、3〜4月はすべてのお仕事がキャンセルになりました。収入前年比100%減で、5〜6月も見通しがつかない状態です。持続化給付金を申請したいのですが、ギャラを雑所得として申告していたので、対象にならないのではととても不安です。

確定申告では、事業所得として申告するつもりでしたが、申告時に対応してくれた税務署の職員さんから、『あなたの場合、レストランでのアルバイト代が給与という形で源泉徴収されているため、他のすべてのギャラが雑所得という形になります』と言われたのです」

実際に、雑所得で確定申告している人たちは少なくありません。

たとえば、フリーランスの方で、税理士に毎年の確定申告を依頼していない場合、税務署の確定申告会場で、職員と相談しながら申告を行うケースがごく一般的です。その結果、雑所得で確定申告するよう勧められる人も一定数います。

また、原稿料などの収入は、そもそも「雑所得」に算入されるルールになっています。

とはいえ、雑所得での申告を勧める税務署の方を責めることもできません。

フリーランスの方のなかには、事業所得で申告する場合に作成義務のある帳簿を作成せず、報酬の支払調書や経費の請求書、領収書をそのまま持っていく人もいるからです。

「制度のスキマ」に落ちる

別の事例をご紹介しましょう。

40代女性Aさんは「給与所得」として収入を得ていたために、持続化給付金が受け取れませんでした。Aさんはこう語ります。

「専門学校とピアノ教室で、非常勤講師をしています。学校、ピアノ教室の運営会社ともに、業務委託契約を結んで、個人事業者として働いているにもかかわらず、税務署の判断は『社会保険無しの給与所得(源泉徴収有り)』ということになり、持続化給付金の対象から除外されています。

労働基準法に基づく休業手当のほうは『(社会保険料を払っての)雇用関係』にない非常勤講師は対象外とのことで、雇用調整助成金の制度からも見放されています。
このままの状況が継続し、仮に夏まで休校が続くとすれば、家賃、年金、健康保険、車の維持費などの支払いで、生活が立ち行かなくなります。

こうした業務委託契約は、音楽講師、英会話講師、塾講師、予備校講師などでよく見られる形態らしく、かなりの人が厳しい状態に陥っていると思います」

〔PHOTO〕iStock

業務委託契約であれば、一般的には企業側から提出される報酬の支払調書をもとにして、事業所得で確定申告します。そして、雇用契約であれば、給与所得の源泉徴収票をもとにして、給与所得で確定申告するのが一般的です。

ところが、Aさんのように、依頼主と業務委託契約を締結しているにもかかわらず、支払は給与として払われる、というケースは決して少なくありません。

その場合、契約は業務委託であるのに、税法上は給与扱い、にいうことになります。

もし雇用関係にあれば、労働基準法の休業手当によって減収分を補うこともできますが、Aさんの場合、雇用関係ではないので、それはできません。

にもかかわらず、税法上は給与所得であるために、持続化給付金についても対象外となってしまっています。

労働基準法と所得税法の取り扱いのねじれにより、「制度のスキマ」に落ちてしまっているというわけです。

フリーランスの人はとりあえずどう対処すべきか

では、給付を受けられていないフリーランスの方はどう対処すべきなのでしょうか。

結論から言うと、今のところ国の制度の変更を待つこと以外に手はありません。資金繰りが厳しい場合は、融資を検討されることをお勧めします。

反対に、慌てているからと言って「やってはいけないこと」はいくつかあります。

たとえば、確定申告の所得区分を事業所得に修正すれば対象になるのではないか? と考える人もいるでしょう。

そこで考えられる手段としては、修正申告もしくは更正の請求です。申告の修正に伴い、税額が増加する場合は修正申告、減少する場合は更正の請求を行います。

しかし、現状やみくもに修正申告や更正の請求を行うことは勧められません。

なぜならこれらの手続きの趣旨はあくまで「税金の修正」であり、そのためには、過去の申告が間違っていたことを説明しなければならないからです。

仮に修正申告・更正の請求を行い、後から否認された場合には、「不正受給」となる可能性は否定できません。

さらに、事業を行っていたにもかかわらず、これまで事業所得として申告していなかったことを自ら認めるようなものなので、事業税を払っていなかった場合、過去分まで訴求して請求されることすら考えられます。

一刻も早い制度の修正を

政府がフリーランスの確定申告の実態を把握しないまま、スピード重視で給付金の制度設計を行った結果、本来給付されるべき方が、給付金の対象から漏れてしまっているのが実情です。

政府は、そうしたフリーランスの方からの声を受けて、制度の修正に取り組んでいるとのことですが、その間にも困窮する人は増える一方です。

経済産業省側の実務には、相当な負担がかかっていると思われますが、たとえば、「事業者が事業の実態がわかる資料を追加で提出することで、給付金の支給対象とする」など、なんらかの特例措置が、一刻も早く講じられるべきだと思います。