「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「観光」「観覧」の「観(カン)」、「観る」。観光シーズンたけなわの秋にひもといてみたい漢字です。



「観(カン・みる)」という漢字の向かって左側の部分は、音と意味を表す「雚(カン)」という字。

「雚(カン)」の旧字体をひもとくと、「口」という字を横にふたつ並べ、その下に尾の短い鳥を意味する部首「隹(ふるとり)」が書かれています。

これは、二羽のコウノトリの姿。

コウノトリは神聖な鳥とされ、古代中国では鳥占いなどに使われていたといわれます。

一方、向かって右側は「見」という漢字。

横から見た人の形の上に大きな「目」を書き、人の目を強調して「みる」という行為を意味しています。

そこから「観(カン)」「観る」という字は、鳥占いで神の意向を察して「みる・みきわめる」こと、あるいは「揃えたものを見比べる・見比べて考える」ことを意味するようになりました。

家族や村人たちと力を合わせて迎える、収穫の日。

作業が始まるその前に、いにしえの人は小高い丘をめざします。

大勢が寄り集まって、ひとつのことを成し遂げようとすれば、当然、摩擦やもめ事が生まれます。

さまざまな考えや不満があっても、答えはひとつだけ。

心を合わせて作業をしていかなければ、手早い収穫はのぞめません。

あのときは余裕がなくて、互いに主張してぶつかったけれど、今、こうして村を見下ろしてみれば、わかる。

金色の稲穂が豊かに波打つこの風景は、正しい道を選んできた結果。

妥協した自分も、譲れなかった相手も、並んで夢みた未来は同じだったのだ。

いにしえの人は、天界から地上を見下ろす神のようなまなざしで、心からの喜びをかみしめているのでした。

ではここで、もう一度「観」という字を感じてみてください。

職業飛行士で作家のサン=テグジュペリ。

彼が『星の王子様』を執筆する以前、飛行士として過ごした日々を綴ったエッセイ『人間の土地』は、鳥の、あるいは神のまなざしを持ち得た人の観点から描かれた作品です。

彼は、夜間飛行での景観をまぶたに思い浮かべながら、まえがきにこう、記しています。

「あのともしびの一つ一つは、見わたすかぎり一面の闇の大海原の中にも、なお、人間の心という奇蹟が存在することを示していた」。

彼は、暗闇の中、懸命に生きて光であろうとする人の存在を意識します。

そして、文章の最後をこう、結んでいます。

「試みなければならないのは、山野のあいだに、ぽつりぽつりと光っているあのともしびたちと、心を通じあうことだ」、と。

そのために、私たちがやるべきことは、公平な目で世の中を見渡す、冷静な観察力、「観る力」を養うことかもしれません。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『人間の土地』(サン=テグジュペリ/著 堀口大學/訳 新潮文庫)

11月10日(土)の放送では「吹」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2018年11月11日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/