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女性専用車両が「差別」にあたるか、という議論が起きている。ことの発端は、東京メトロ千代田線で2月16日朝、女性専用車両に乗り込んだ男性客3人が、駅員から要請されたにもかかわらず居座ったというトラブルだ。過去には、裁判まで至ったケースもある。(弁護士ドットコムニュース・山下真史)

●「女性専用車両のあり方」に関する問い合わせが寄せられている

国民生活センターによると、全国の消費生活センターに、女性専用車両に関する問い合わせが、年間数件ほど寄せられている。その内容は「女性専用車両は不当ではないか?」「子どもや介助者も乗車できるのに『専用』という名称は問題ないのか?」といったものがほとんど。

こうした状況を受けて、国民生活センターは昨年12月、一般消費者(消費生活センターの相談員を含む)に向けて、「女性専用車両」の違法性を否定した過去の裁判例(東京地裁2011年7月12日判決)を参考情報として、ホームページ上に掲載していた。

●女性専用車両のルールに「法的強制力」はないが・・・

そもそも鉄道会社が「女性専用車両」を導入する理由とはなにか。東京メトロによると、「痴漢をはじめとする迷惑行為の抑止を図り、女性のお客さまのほか、小学生以下のお客さま、おからだの不自由なお客さまとその介護者の方に安心してご利用いただくため」という。

要するに、「痴漢防止」というわけだ。東京メトロの広報部は「女性専用車両のルールに『法的強制力』はなく、任意協力を求めているものだ」と説明。今回の千代田線のトラブルについては「警察で対応中だが、今のところ法的措置は検討していない」とコメントしている。

●女性専用車両が「憲法で保障された居住・移転の自由を侵害する」と提訴

これまでも、男性があえて女性専用車両に乗り込んだことが原因のトラブルが発生しており、中には裁判にまで発展したケースもある。国民生活センターがホームページに掲載したのも、その一つ。かいつまんで説明すると、次のような内容だった。

女性専用車両に反対する団体の構成員の男性たちが2008年6月27日朝、「女性専用車両に乗車する」と事前予告したうえで「つくばエクスプレス」(首都圏新都市鉄道)の女性専用車両に乗った。その後、乗らないように説得を試みていた鉄道警察隊員、警備員とともに下車した。

男性たちは「女性専用車両は本来、誰でも自由に乗車できるのに、健常な成人男性が乗車することを事実上禁止している」として、「憲法で保障された居住・移転の自由を侵害する」「法の下の平等にもあたる」と主張。鉄道会社に対して、損害賠償と謝罪広告などを求めた。

東京地裁は「鉄道会社は、営業に関する自由な裁量権を有しており、女性専用車両の目的、時間帯などから、設置は正当だ」「健常な成人男性の乗客に格別の不利益を与えるものといえない」などと判断。男性側の請求をすべて棄却する判決を言い渡した。

●国民生活センターは「不当かどうか」判断できない

国民生活センターの担当者は、この裁判例をホームページ上に掲載した理由について「女性専用車両に関する相談件数が、近年、とくに増えているわけではありませんが、国民生活センターとして、その設置・名称が不当かどうか判断できないため、一般論として載せています」と述べていた。

いずれにせよ、あえて女性専用車両に乗り込むような「実力行使」ではなく、これまでの裁判例をみつめ直しながら、実情に合わせた冷静な議論を期待したいところだ。

(弁護士ドットコムニュース)