朝ドラの謎めいた男「シマケン」とは何者か…劇団四季の子役→音大卒→カラオケ番組で510万円稼いだ佐野晶哉の“規格外すぎる経歴”
朝ドラ第114作目『風、薫る』(NHK総合)の放送開始から1カ月半。前作『ばけばけ』につづき、本作もまた転換期にあった明治を舞台にしている。「病人の世話=卑しい身分がする仕事」という価値観が根強かった時代、日本で初めて正式な看護教育を受けたふたりのトレインドナースをヒロインに据え、職業としての“看護”の確立に挑んだ女性たちの歩みを描く。モデルとなった大関和と鈴木雅は、のちに“明治のナイチンゲール”と呼ばれる存在だ。
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血縁関係のないダブルヒロインという設定は、朝ドラ史上初の試みでもある。「シスターフッド」という価値観がようやく浸透してきた現代らしい一作だ。

『風、薫る』公式Instagramより
「女の人生の“あがり”は結婚」という従来の価値観に違和感を覚える武家の娘・一ノ瀬りんを演じるのは、見上愛。オファーのきっかけとなった大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)での彰子役も記憶に新しい。一方、生後すぐに親に捨てられ、教会で育った大家直美を演じる上坂樹里は、2410人が参加したオーディションから選ばれた。昨今の朝ドラヒロインのなかでも、これからの飛躍が期待される段階での大抜擢といえる。
謎めいた存在“シマケン”こと島田健次郎
いよいよトレインドナースへの一歩を踏み出した女性バディの行く末も見逃せないが、ふたりを取り巻く人々の動きにも目が離せない。離婚したりんの新たな相手候補(?)として浮かび上がるのが、りんが働いていた「瑞穂屋」にふらりと現れた“シマケン”こと島田健次郎(佐野晶哉)だ。登場時から謎めいた存在で、りんに会うたびに意味深な言葉を残していたが、第29回で小説家志望ということが明らかになった。
おそらく本作で初めて佐野晶哉の名を知った視聴者も多いのではないだろうか。シマケンを演じる佐野は、STARTO ENTERTAINMENT所属のアイドルグループ・Aぇ! groupのメンバーなのである。なにわ男子のCDデビュー後関西ジュニアを牽引してきた実力派グループで、ファンの熱量に後押しされるかたちで、2024年に念願のCDデビューを果たした。2026年現在、STARTO社のなかで最も新しいデビュー組でもある。
もともと活動歴の長いメンバーが揃うAぇ! groupにおいて、年齢も入所歴も若い最年少の佐野は、グループの“起爆剤”的存在だ。幼少期には劇団四季の子役として活動し、『ライオンキング』のヤングシンバ役を務めた経歴を持つなど、STARTO社のなかでもひときわ異彩を放っている。
「カラオケで賞金510万円」屈指の歌唱力
佐野の大きな強みといえば、STARTO社のなかでも屈指の歌唱力だ。音楽科のある高校では声楽を学び、さらに大阪音楽大学短期大学部で作曲を専攻するなど、音楽の道を極めてきた。その実力はバラエティ番組でも遺憾なく発揮されており、『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)や『THE神業チャレンジ 再現できたら100万円』(TBS系)などのチャレンジ番組で、合計510万円の賞金を獲得している。音楽的なスキルを問われる企画では、いの一番に声がかかる存在なのだろう。いまや事務所を背負う存在だ。
抜群の歌唱力やリズム感は、間違いなく芝居における身体性にもつながっている。2024年には『離婚後夜』(テレビ朝日系)で連続ドラマ初主演を務め、松本若菜主演の『Dr.アシュラ』(フジテレビ系)にも出演。さらに映画では、口コミで人気が広がった中川駿監督の『か「」く「」し「」ご「」と「』や、ミュージカルアニメーション『トリツカレ男』など、規模にとらわれない独自の作品選びも光る。
STARTO社タレントの朝ドラ出演パターン
出演作が多いタイプではないなかでの朝ドラ出演は、やはり大抜擢だ。STARTO社タレントの朝ドラ出演には、大きく分けて二つのパターンがある。
ひとつは、関西出身組が大阪局制作の朝ドラに起用されるケース。多くの俳優がデビュー前に方言を共通語へと矯正されるなか、関西弁での活動をつづけるSTARTO社の関西組は、西日本が舞台となることの多いBK朝ドラで重宝されてきた。WEST.の桐山照史(2015年『あさが来た』)、そしてなにわ男子・西畑大吾(2013年『ごちそうさん』、2015年『あさが来た』)やAぇ! groupの正門良規(2019年『スカーレット』)のように、ジュニアから起用される例もある。
永瀬廉、松村北斗、目黒蓮から受け継いだバトン
その一方で、デビュー組は多忙なスケジュールゆえに、長期にわたる朝ドラへの参加が困難とされてきた。その流れに風穴を開けたのが、2021年『おかえりモネ』でりょーちん役を演じたKing & Princeの永瀬廉。それからSixTONESの松村北斗(2021年『カムカムエヴリバディ』)、SUPER EIGHTの横山裕とSnow Manの目黒蓮(2022年『舞いあがれ!』)へとバトンがつながれてきた。
そして、4年ぶりにSTARTO社から朝ドラ出演を果たしたのが、『風、薫る』の佐野晶哉である。しかも『風、薫る』はAK制作で、シマケンは共通語のキャラクターなので、佐野が演じると聞いた時はかなり驚いた。
朝ドラ登板に期待感を抱かせた『あなたのブツが、ここに』
しかし、佐野晶哉が朝ドラに登板する日も近いのではないかと、実はちょっぴり期待していた。というのも、2023年の朝ドラ『ブギウギ』、そして2026年後期に放送される石橋静河主演の朝ドラ『ブラッサム』で脚本を務める櫻井剛が手がけた2022年の夜ドラ『あなたのブツが、ここに』(NHK総合)での芝居が、強く印象に残っていたからだ。
NHK大阪放送局が制作した『あなブツ』の舞台は、コロナ禍真っ只中の2020年。勤めていたキャバクラの休業によって収入を断たれ、さらには給付金詐欺にあったシングルマザーの亜子(仁村紗和)が、コロナ禍で唯一需要の高まっていた宅配ドライバー業へと転身する話だ。未曾有の事態に見舞われ、誰もが俯いていた“あの頃”の手触りを思い出す名作だ。
そういえば、『あなブツ』で佐野晶哉が演じていた峯田健太も、宅配仲間から“ミネケン”と呼ばれていた。天真爛漫で伸びやかな佇まいは、どこか普段の佐野とも重なる。大型免許の取得を目指し、家計簿をつけながら節約に励む、まっすぐでピュアな青年だ。亜子への想いは気持ちいいほどに報われないのだが、宅配ドライバーならではの苦悩を共有し、コロナ禍をともにサバイブする同僚として、戦友のような関係になったふたりには、恋愛とは異なる心地よさがあった。
『あなブツ』といえば、仁村紗和を筆頭に、岡部たかしや津田健次郎らキャストが次々とブレイクしていった作品でもある。ミネケンを演じた佐野が「シマケン」でさらなる人気を掴むか注目したい。
(明日菜子)
