これまで当たり前のように使ってきた水道水が、目に見えない化学物質に汚染されているかもしれない(写真/PIXTA)

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 これまで本誌『女性セブン』が何度もその危険性を報じていた「PFAS汚染」。環境省が公表した最新調査によると多くの地点で指針値超えが確認されたという──。

【図解で見る】指針値「50ng/リットル」を超える全国MAP

全国26都府県の629地点で指針値を超えるPFASが確認

 都内在住の主婦・Kさん(52才)が、心配そうにこう話す。

「今春、待望の初孫が生まれたことをきっかけに、口に入るものの安全性をあらためて気にするようになりました。最近もっとも気になるのが、地下水などから検出されている化学物質『PFAS』です。飲み続けるとがんになるといわれていますが、うちの水道水にも含まれているんでしょうか……」

 これまで当たり前のように料理や飲み水に使ってきた水道水が、目に見えない化学物質に汚染されているかもしれない──そんな漠然とした恐怖が、いま全国の家庭に広がっている。

 環境省は2023年から毎年、全国の「公共用水域及び地下水のPFOS及びPFOA調査結果」(※PFOS、PFOAはPFASの中で代表的な物質)を発表しており、今年3月に2024年度の結果が公表された。それによると全国26都府県の629地点で、指針値を超えるPFASが確認された。

 2021年度の調査結果(2023年発表)で指針値超え(当時)は13都府県の81地点だっただけに、数年で汚染地点が約8倍にも跳ね上がった。脳神経科学情報センター副代表の木村-黒田純子さんが解説する。

「最新調査で汚染地点が増加したのは、この3年で汚染が広がったというよりも、すでに汚染されていた地区が見つかったからだと考えています。まだ国内で調査されていない地域もあり、実態はより汚染地域が多い可能性があるので、全国での調査が必要でしょう。しかも、ストックホルム条約で規制されている『PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)』は調べられていないので、汚染はもっと深刻だと思われます」

 京都府立大学教授でPFAS問題に詳しい原田浩二さんも同様に危惧する。

「小規模な浄水場や病院、大学、マンションなどで使われている『専用水道』の結果は、半分ほどしか出ていません。調べれば調べるほど、今後も汚染地域が見つかる可能性があります」

1970年代から指摘されている人体への危険性

 木村-黒田さんが、PFASの危険性を指摘する。

「PFASは『有機フッ素化合物』の総称で、PFOSやPFOAなど約1万種類以上あります。水や油をはじき、熱に強いという特徴があり、フライパンのコーティングや防水スプレー、化粧品、衣類など身の回りのあらゆる製品に使われてきました。

 炭素とフッ素の結合が非常に強く、環境中で分解されにくいため『永遠の化学物質』と呼ばれています。それが日本全国の河川や地下水などから検出され、社会問題になっているのです」

 原田さんが補足する。

「人体への危険性は1970年代から指摘されています。PFASを含んだ水を飲んだからといって急性の症状が出るわけではありませんが、中長期的に摂取を続けることで腎臓がんなどの発がん性や心臓病につながる血中コレステロールの増加(脂質異常症)といった病気のリスクがあることがわかっています」

 健康被害はこれだけではない。

「免疫力低下のほか、甲状腺疾患や肝臓への毒性などが指摘されています。なかでもPFOAは、2023年に国際がん研究機関が『ヒトに対して発がん性がある』と認定しました」(木村-黒田さん・以下同)

 子供たちへの影響も懸念される。

「環境省が2011年に開始した10万組の子供と両親を対象とした大規模な疫学調査では、母親の血中PFAS濃度が高いと子供の染色体異常が起こりやすくなる可能性が示唆されました。そのほか、子供の発達不良や免疫不全なども報告されています」

汚染原因が特定できないケースも

 PFASが社会問題になっているのは日本だけでなく、海外では規制が強化されている。アメリカは飲料水の最大汚染レベルをPFOS、PFOA各4 ng/Lとし、スウェーデンは主要4種類の合計で4 ng/Lを基準にしている一方、日本ではこれまで水道水の規制はなかった。

 しかも環境省と厚労省はあくまでも「指針値(暫定)」として、PFOSとPFOAの合計値を50 ng/L以下とするなど他国と比べて基準が緩かったのだ。

 しかし今年の4月、ようやくPFOSとPFOAについて、水道水の定期的な水質検査を義務化。検査で基準超過が確認されたら取水を停止し、別の水源に切り替えるなどを義務とした。これに合わせ、「指針値(暫定)」は法的拘束力のある水質基準の対象である「指針値」となった(50 ng/Lは変わらない)。ようやく水道水の監視が強化されることになったと思いきや、冒頭の調査結果の通り、汚染はもう全国に広がっている。指針値を超えた629地点に共通点はあるのか。

「汚染源として挙げられるのは米軍基地や自衛隊基地、空港、PFASを扱う工場、廃棄物処理場や不法投棄現場などです。基地や空港で使われる泡消火剤、半導体工場やメッキ工場などで使われるPFASが、地下水を通じて広範囲に広がっている可能性があります」

 だが、一筋縄ではいかないケースもあるようだ。

「何かしらの原因がないとPFASは検出されません。しかし、茨城県鉾田市のように、市内に該当物質を扱う施設が確認されていないのに濃度が高い場所もあり、原因が特定できないこともあります」(原田さん・以下同)

 今後は環境省を中心にPFAS対策が本格化するとみられるが、行政の対応を待つだけでなく、家庭でできる自衛策がある。

「活性炭を通すだけでPFAS除去効果が期待できます。一般的な浄水器は活性炭を使っているものが多く、新品であれば、8割ほどはPFASを除去できるでしょう」

「高価なものがいい」という思い込みは禁物だ。

「水道水の汚染が心配な地域では、PFAS除去が確認されている浄水器の使用をおすすめします。ただし、高価なものであっても、カートリッジの交換時期を過ぎると効果がなくなってしまうので注意が必要です」(木村-黒田さん・以下同)

 よかれと思ってやってしまいがちな間違いもある。

「煮沸消毒です。PFASは850℃以上の超高温でないと分解されません。煮沸しても除去されることはなく、逆に水分が蒸発して濃度が高まってしまい、PFAS除去には意味がありません」

 何気なく蛇口をひねるその前に、まずは自分の住む地域の状況を知り、正しく恐れることから始める必要がありそうだ。

※女性セブン2026年5月21・28日号