2022年ワールドカップ・カタール大会で、4強入りした代表チームをたたえるモロッコのサポーターたち

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 米国、カナダ、メキシコで開催されるサッカー・ワールドカップ(W杯)開幕が6月に迫った。

 3か国共催は史上初で、過去最多の48チームが熱戦を繰り広げる。出場する国のサッカー事情、人々の思いを紹介する。

[サッカーの惑星]<モロッコ編・上>

 北アフリカで古くから親しまれ、世界最小のパスタとも言われる「クスクス」が名物の食堂、高い保湿効果が人気の名産「アルガンオイル」を使ったコスメやスパイスを扱う商店が並ぶ旧市街、欧米資本のホテルのロビー――。モロッコ最大の商業都市カサブランカでは、至る所に額縁が飾られ、ほほ笑む「国王」に出会う。多くの国民が信仰するイスラム教の預言者ムハンマドの子孫とされる、ムハンマド6世だ。

 1999年7月に逝去した父・ハッサン2世を継いだ現国王は、医療制度の充実や公共交通機関の整備といった施策を次々に打ち出した。2010年末から中東・北アフリカ地域に広がった民主化運動「アラブの春」では、首都ラバトやカサブランカでデモ活動が起きたが、ここでも国王の対応は迅速だった。

 11年夏には、議会最大会派から選ばれる首相に閣僚や知事の任命権を移譲するなど、自らの権限を縮小する改憲案の是非を問う国民投票を実施。新型コロナ禍ではワクチンの確保に努め、率先して接種を呼びかけた。国民に軸足を置いた政策に、モロッコで活動するスポーツジャーナリストのアメッド・タラル(34)は「国王と市民の間には、流れる愛がある」と敬愛の情を込める。

 そんな愛される王家に受け継がれるのが、サッカーへの情熱だ。ハッサン2世は自らの名を冠した国際大会を開催。2000年大会は日本も出場し、当時の世界王者フランスなどと対戦して貴重な経験を積んだ。現国王もアフリカ王者を決める「ネーションズカップ」などの国際試合では、頻繁にスタジアムに足を運んでいる。

 モロッコ代表は1970年のワールドカップ(W杯)に初出場し、86年メキシコ大会で16強入りするなどアフリカの強豪として名をはせた。しかし、98年フランス大会後はW杯から遠ざかり、国内には停滞ムードが漂った。

 国王は2008年、国のスポーツ振興の指針を決める「国家スポーツ会議」に対し、施設の老朽化や各競技団体の運営のつたなさを厳しく指摘する書簡を送った。大号令のもと、人々にとって「呼吸をするのと同じくらい、自然に大好き」(タラル)というサッカーで、復権に向けた改革が始まった。(敬称略)

 ◆モロッコ王国 人口約3800万人で、面積は日本の約1.2倍。立憲君主制で元首はムハンマド6世。公用語はアラビア語とベルベル語。1912年にフランスの保護領となり、56年に独立した。主な産業は農業や水産業。サッカーの代表チームは、ワールドカップ7度目出場となる今夏の北中米3か国大会の1次リーグで、ブラジル、スコットランド、ハイチと対戦する。