今、多くの企業で活用されているAI。作業の効率化や人員削減に有効ですが、AIの導入には賛否が分かれる場面があります。その一つがお葬式です。

「葬儀とAIに関する意識調査」(石川・金沢市の三和物産が4月に発表)で自分自身や親族の葬儀にAIロボットを導入することについてどう思うかという問いでは、「自分の葬儀にも、家族や親しい人の葬儀にも活用してもよい」という人が24.8%に対し、「自分の葬儀には活用してよいが、家族には使いたくない」が18.6%、「どちらにも活用したくない」が26.4%を占めるなど、AIの導入には賛否が分かれます。

しかし、そんな葬儀の場をAIなどを用いて、より思い出に残るようにするサービスが名古屋のスタートアップ企業によって始まりました。

葬儀の準備をAIで

「大切な方が亡くなられた時に、訃報の連絡をAIを使って作成できたり、ご遺族の方の葬儀に関する疑問に24時間対応できる『AIコンシェルジュ』の機能もついています」(itowa 代表取締役 坂元充さん)

itowaが5月12日に発表したサービス「メモリーノート」では、他にも葬儀の流れを可視化できるチェックリストや、クレジット決済で香典を申し込む「オンライン香典」、さらに返礼品を簡単に手配できる「自動返礼」など、葬儀の準備をサポートする機能が備わっています。

itowaと提携している葬儀社、もしくはitowaに利用したい旨を伝えれば、URLを通してサービスを利用できる仕組みで、遺族側がアプリをダウンロードする手間もなく、料金の負担も必要ありません。また、葬儀という特別な状況の中で使われることも考え、利用者への配慮も考えられています。

「一般的なAIチャットだと冷たい回答になりがちですが、AIコンシェルジュは大切な方が亡くなったご遺族の心理状態を踏まえたうえで回答でき、葬儀社や地域ごとにお葬式の違いもあるので、そういったことも踏まえて事実に基づいた回答を高精度で受け答えできるようにしています」(坂元さん)

準備にかける時間を偲ぶ時間に

葬儀は突然やってくるもの。事前に調整できることは少なく、基本的に亡くなってから3~5日の間に行われることが多いため、膨大な準備を短期間でこなす必要があります。しかも、それを大変な精神状態の中でこなすことが多いため、特に喪主にかかる負担はとても大きいでしょう。

そんな喪主をはじめとした遺族にかかる負担をAIやDXのサポートによって軽減させることで、少しでも故人を偲ぶ時間に充てることができるようにするのが、このサービスの目的。

さらに、葬儀社の面から見ても従来の経理業務を効率よくできるため、業務の負担を減らし、その分の時間を遺族のサポートに費やすこともできるのだそう。

最新技術で葬儀をよりメモリアルに

「メモリーノート」では、LINEのアルバム機能のように、亡くなった方の思い出の写真を遺族などでWEB上に共有することもできます。

遺族の許可があれば一般の方も送ることが可能で、センシティブな状況を踏まえて、不適切な写真などがないかをAIでチェックしてくれます。

一度作れば、いつまでも残すことができるため、大切な人をいつでも思い返し、その記憶を次の世代につないでいくことも可能です。

きっかけはコロナ禍による葬儀の変化

葬儀のあらゆる課題を解決するために生まれたメモリーノートですが、始まりのきっかけはコロナ禍で加速した葬儀の小規模化。かつて葬儀社で働いていた坂元さんも運営の立場からその影響を実感していました。

「2020年にコロナが直撃し、葬儀の連絡もはばかられるところまでいったので、そこから参列者が10人とかになったり、遺影も小さくなったりしたんですけど、その遺影の表情がすごく寂しそうに見えて。お葬式という人生を一番称賛する場所がコロナ禍で奪われていくと思うと、遠方から弔意を伝えるサービスが必要だなと」(坂元さん)

その後、坂元さんは2024年に鹿児島に住む父の葬儀の際、遠方に住む友人らのためにプロトタイプとしてWEBでの訃報やオンライン香典を使用することに。

「葬儀とはいえ、鹿児島に来てくれるかといったらなかなか難しい。それでもそんな友人らからお花や香典をいただけたので、遺族心理としては父にちゃんと思いが届いて、いい旅立ちになったなと」(坂元さん)

DXで遠方から弔意を伝えることを目的に始まったこのサービス。さらにそこにAI機能が加わったことで、さらなる課題の解決だけでなく、より葬儀を思い出に残るものにできると坂元さんは考えます。

「亡くなった人を思い出す時間を弊社では『メモリータイム』と呼んでいるのですが、このメモリータイムを最大化するというのが、私たちが掲げている理念です。葬儀の準備にかかる負担を少しでも軽減し、いつでも故人様を思い返せるようにすることで、メモリータイムの質と量を高めていきたいと考えています」(坂元さん)

「葬儀で終わりではなくて、むしろ葬儀から始まりと言ってもいいくらい、四十九日とか、一周忌とか行事が続いていくので、いつでもふとした時に故人様を振り返られたらいいなと思います」(坂元さん)

人が行う葬儀だからこそ最新技術でサポートを

葬儀のAIサポートやDXという言葉を聞いて、抵抗を感じる人も中にはいるでしょう。しかし、大変な状況下で多くの人がかかわりながら作られる葬儀だからこそ、AIやDX によるサポートが重要なカギとなります。

坂元さんは、これからの葬儀におけるAIサポートをスタンダードなものにしていきたいとしています。

「葬儀の形を変えたいということは1ミリも思っていないです。お葬式にAIロボットが対応していくとかではなくて、そこだけは人がやらなければいけないと思っています。あくまでご遺族や葬儀社にとっての一助というか、葬儀を行ったり質を高める上でのサポートという形で業界に貢献していきたいです」(坂元さん)

(メ~テレ 杉野公祐)