《風俗店オーナーが告白》最凶スカウト集団「ナチュラル」の恐怖…彼らは店側に「違法行為」を続けさせるべく“狂気の嫌がらせ”に励んでいた〉から続く

 警察当局が「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の象徴として壊滅を図る史上最凶のスカウト集団「ナチュラル」。昨年6月に施行された改正風営法により、性風俗店からのスカウトバックは禁止になったが、彼らは闇に潜り、手口を先鋭化させている。

【証拠入手】「お前が廃人になるまで…」ナチュラル関係者とみられるSNSの書き込み

 広島市の風俗店を経営するグループ企業代表のX氏は、法改正を機にナチュラルとの絶縁を決意。だが、女性の斡旋を断った途端、日に日に嫌がらせがエスカレートしていったという。(全2回の2回目/最初から読む)


ナチュラルが仕掛けた「嫌がらせ」の実態とは

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月350万円に達していたスカウトバックの額

「私が2年半前にM&Aで店を買収する以前から、取引関係は長年にわたり続いていたと聞いています。月に4、50人規模で女性を東京から“出稼ぎ”として送ってもらっていた。これだけの人数を毎月手配するのは並大抵の組織力ではありません。女性を途切れさせない優秀なスカウトとして、風俗店の経営上、重宝していたのは事実です」(X氏)

 ナチュラルに支払うスカウトバックの額は多い月で350万円ほどに達していた。

「月末になると売上の回収のため東京から新幹線に乗って訪れる担当者は恐らく、『闇バイト』として雇われた若者たち。足のつかない現金払いに固執し、広島中の風俗店の売上を短期間に回収して回る。

 こうした回収役は組織の“手足”に過ぎず、身分証や家族情報まで本部に把握され、ネコババしようものなら恐ろしい制裁を受ける」(前出・社会部記者)

法改正があっても…ナチュラルだけは違った

 X氏の店では、「法律が改正された以上、スカウトに依存し続けるわけにはいかない」と、ナチュラルをはじめスカウトを通して入店した女性たちには全員に退店手続きを行った。「売上が大幅に減少することを覚悟の上での、苦渋の決断でした」という。

 一方、再雇用を希望する女性に対してはスカウトを介さない直接契約で対応。一部は直接応募してきたので雇用したが、その数は1割にも満たない。月の売上は一時、大きく落ち込んだという。

 こうした対応により、多くのスカウト業者が性風俗店への斡旋業を泣く泣く諦めたが、ナチュラルだけは違った。担当者は店にこう告げたという。

「女の子たちを直接雇っているみたいですが、それは我々を通していることと同一ですよね。これまで通りスカウトバックを支払ってください」

「安心してください。絶対に警察に捕まりませんから」

 徹底した“社員教育”で知られるナチュラルの営業担当者は、表向きは一般企業の営業マンと比べても遜色のない丁寧な言葉遣いを崩さない。しかしその実、法令を遵守しようとする店側に堂々と法令違反を勧めているのだ。X氏が「違反して警察に捕まるのは本意じゃない」と渋ると、担当者はさらにこうまくし立てた。

「安心してください。うちのアプリで取引している限り、絶対に警察に捕まりませんから」

 ナチュラルが絶対の自信をのぞかせる「アプリ」とは、一体何なのか。

“警察対策”の独自開発アプリで抜かりのない監視

「5年ほど前、店の事務所を訪れた担当者が、“警察対策”と称して『チャットアルファ』という独自開発したアプリを店用iPhoneにインストールしたのです。以後はこのアプリを使ってナチュラル側とやり取りしてきました」(X氏)

 チャットアルファを開くと、まず株式情報が表示され、その右下にある「+」マークをタップすると、番号入力の画面が出現。暗証番号を入力すると、アプリにログインできたという。

 このアプリの性能について、捜査員は舌を巻く。

「ナチュラルはあえてアプリの対応端末をApple製のiPhoneに特化している。他のスマホに比べ、iPhoneは捜査機関によるデータ抽出やロック解除が格段に困難。アプリそのものは既製品を改良し、主に関係者内のコミュニケーションツールに仕立てたものだが、特筆すべきは、アプリが入った端末を遠隔で管理者が一元管理できる機能。

 Apple製品でこの設定をクリアするには大がかりな手順が必要だ。つまりこのアプリは、単なる半グレ組織に終わらない老獪さの象徴。起動中は管理者が端末の位置情報も把握でき、監視機能には抜かりがない」

 案の定、スカウトバックの支払い拒否を続けた直後、アプリには一切ログインできなくなったという。

「不義理店」への嫌がらせ投稿

 ナチュラルと袂を分かったX氏のデリヘル店。当初は2週間に1、2回だった“督促”電話の回数は段階的に増していった。昨秋頃には、電話をかけてくる担当者が替わり、新たな男は「“クリア”のナカノ」を名乗った。如実に執拗さを露わにし、着電回数は多い日には10回ほど。店の営業にも支障を来しているという。

「ナチュラル=違法というイメージが広がっているため、彼らは『広告ナビ』『LINEグループ』『クリア』など頻繁に名称変更を繰り返してきました。ナカノも偽名でしょうし、私たちは彼らの姿を見たことすらないのです」(X氏)

 一方で、嫌がらせの主戦場は匿名性が担保されたSNSの世界へと移される。

「着電回数の増加と歩調を合わせるように、私のデリヘル店に対しナチュラル関係と見られる複数のSNSアカウントによる誹謗中傷の書き込みが散見されるようになりました」(同前)

 誹謗中傷の書き込みとはたとえばこんなものだ。

〈全裸面接やトラブルの際キャストに全責任をなすりつける悪質店舗よ〉

 X氏に確認すると、全裸面接を実施した事実はないという。

 ある誹謗中傷アカウントのプロフィール欄には、〈不義理店舗は塵も残さず吹っ飛ばす〉とあり、他の複数のアカウントにも「不義理店」「不義理」といった文言が並ぶことから、ナチュラル側は関係が断絶した店を「不義理店」と呼び、嫌がらせを繰り返していることが窺える。攻撃の矛先は、グループ傘下の飲食店やX氏自身にも向けられた。

週刊文春が入手した「実際の音声」

〈喧嘩売ってきたのはお前だからな お前が廃人になるまで身辺嗅ぎ回られるか、素直に話し合いに応じるか選択の時は迫ってるぜ?〉

〈お前の取引先の会社に知れ渡るのも時間の問題だぜ?〉

 X氏の飲食店には、看板の写真と共にこんな投稿が。

〈ゴキ〇リは繁殖力すごいから、1匹いたら数十匹いてもおかしくないんじゃない〉

「SNSでの嫌がらせはエスカレートしていきました。話し合いに応じることを求めており、明らかにナチュラルの仕業ですが、ナカノに聞いてもシラを切るばかり。現在、書き込み主については運営会社に開示請求しています」(X氏)

「週刊文春」は、「クリアのナカノ」がX氏のデリヘル店に対し、スカウトバックを執拗に要求する複数の音声を入手した。

「自分たちはそもそも使っているもの(女性)をしっかり払えって言ってるだけじゃないですか」

 2月24日、「弁護士を通して内容証明を送りたいので宛先の住所を教えてほしい」と伝えると……。

「住所とかは伝えないですよ。別にそういう話ではなくて、ただただSB(スカウトバック)を払って欲しいというだけなので」

 さらにナカノは辿々しい口調でこう畳みかけた。

「間違っていることをやっているのは××さん。法律云々とかではなく、これはスジの問題」

 法律よりも自らのスジを押し付け、優先するナチュラル。1月26日に会長の「木山」こと小畑寛昭容疑者(41)が逮捕されてもなお、組織はこうして活動を続けている。

 ナチュラルや会長を知るスカウト関係者が語る。

「会長は、20年にナチュラルがケツ持ちの住吉会幸平一家を怒らせて歌舞伎町で“スカウト狩り”が起こって以降、表舞台から退いているため、不在でも組織は十分に回る。ただ、特に現場のスカウトの資金繰りが相当厳しくなっているのは確かなようだ」

担当者の携帯を鳴らすと…

「週刊文春」記者は「クリアのナカノ」の携帯を鳴らした。

「はい、お疲れ様です」

――ナカノさんの携帯でよろしいでしょうか?

「ああ、大丈夫です」

――週刊文春の××と申します。クリアのナカノさんでよろしいですか?

「ちょっとよく何言ってるかわからないですけど、クリアって何ですか?」

――ナチュラルのナカノさんでよろしいですか。

「ナチュラルって何ですか?」

――ナカノさんでよろしいですか?

「自分、高橋です」

 と、ナカノでもなければクリアもナチュラルも知らないとシラを切り通した。

 警察当局が壊滅を図るナチュラル。法改正から260日が経ったが、ナチュラルとの攻防に収束の気配はまだ見えない――。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2026年3月26日号)