裁判官に「口コミ」3000件超、弁護士がサイト開設…星の数で判決評価・「この世から消えろ」など中傷も
全国の約2500人の現職裁判官について、これまでに関わった判決などを調べられるインターネットサイト「裁判官マップ」が、3月に公開された。
所属や経歴も掲載し、評判や感想などの「口コミ」を投稿できる。作成した弁護士は「司法を身近に感じてもらいたい」としているが、誹謗(ひぼう)中傷ともいえる匿名の書き込みも目立っている。(神戸総局 脊尾直哉)
東京弁護士会の田中一哉弁護士(57)が開設。生成AI(人工知能)に官報や裁判所などで公開されている裁判官の人事データや判例情報を読み込ませ、1か月で完成した。
トップページには、日本地図を載せ、都道府県を選択して、裁判官を探すことができる。名前での検索も可能。最高裁から各地の高裁、地裁まで、官報に掲載されたすべての裁判官の情報が掲載されている。法律関係者向けの有料サービスはあったが、サイトは誰でも無料で閲覧できる。
裁判官一人一人の「口コミ」を匿名で投稿できる仕様で、星の数(1〜5)で評価する。4月21日時点で全投稿数は3000件を超え、閲覧者数はのべ約168万人に上っている。田中弁護士は「国民が一般感覚で判決に対する率直な意見を表明する場にするため」と「口コミ」投稿欄を設けた理由を説明する。

しかし、読売新聞記者がサイトを確認したところ、論理的に判決を評価する投稿がある一方で、特定の判決を示した上で「この世から消えろ」「裁判官の前に人として終わっている」などと、裁判官個人を攻撃する投稿も見られた。
田中弁護士によると、評価の平均は2・04(4月21日時点)。最低評価となる星一つが7割弱を占めて最も多く、星五つが約2割で続いていた。
田中弁護士は「低評価イコール中傷とは言えないが、勝訴・敗訴が決まる裁判の構造から意見は二分されやすいだろう。サイトを始めた当初は中傷が目立っていたが、徐々に冷静な意見が増えてきている印象だ」とし、「人格否定は許されるものではないが、裁判官に意見したいという潜在的な国民の声があるということでもある」と話した。
サイトの口コミに関する投稿ガイドラインでは、虚偽情報や侮辱的な投稿を禁止している。田中弁護士は、誹謗中傷を含む投稿を見つけた場合に生成AIが自動で返信し、表現を改めさせるようなシステムの導入を検討したいとする。
ある現職裁判官は「批判を受けるのは人を裁く立場である以上は当然で、裁判官が批判を恐れたら終わり。ネット上の意見で受け止めを知ることはあっても、気にはしない」とし、「多くの人が共感するような意見なら、面と向かって実名で批判してくると思う」と語った。
最高裁判所は読売新聞の取材に、「個別のサイトについてのコメントは差し控える」と回答した。その上で「SNSや各種ウェブサイト上において個々の裁判官への誹謗中傷やプライバシー侵害といった違法な投稿が許されないのは当然である」とコメントした。
元東京高裁部総括判事で、日本大学法科大学院の藤井敏明教授は「裁判官が国民感情や外部の意見を知り、より丁寧な説明をするようになるなどの効果は期待できるのではないか。ただ、裁判官が誹謗中傷で精神的に追い込まれる恐れがあり、節度のある投稿が求められる」と話した。
