「予想していませんでした」「ナカタニは誇るべき」 世界の記者が東京Dで感じた“世紀の一戦”の価値
世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチ
ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が2日、東京ドームで元世界3階級制覇王者の中谷潤人(M.T)と対戦し、3-0の判定勝ちを収めた。5万5000席のチケットが完売。世界が注目する日本人2人による“世紀の一戦”だった。世界戦歴代最多となる28連勝に。戦績は33歳の井上が33勝(27KO)、28歳の中谷が32勝(24KO)1敗。手に汗握る36分間を、現地で取材した海外記者も絶賛した。
午後9時54分。開始のゴングが鳴ると、大歓声に包まれていた東京ドームが一転、静まり返った。互いに探り合う立ち上がりに、5万5000人が息を潜める。井上自身が「体力というより脳のスタミナが削られた」と振り返る、打って外しての技術戦。イングランドから来日した米専門メディア「ボクシング・シーン」のトム・アイバーズ記者は「英国風に言えば、チェスのような試合」と評した。
「非常にテクニカルでした。激闘じゃなかったというわけではありません。とてもテクニカルな始まりから、後半になると爆発力を増し、より多くのパンチが着弾するようになりました。とてもエキサイティングな試合でした」
判定は1者が115-113、2者が116-112で井上を支持した。「イノウエはとても素早く、コーナーに相手を追い詰めていました。最後の2ラウンドはイノウエのほうがフレッシュに見えました」。中盤で一度中谷が勢いに乗ったかに思えたが、「イノウエがこれほど力強く締めくくるとは予想していませんでした」と、スタミナと集中力を最後まで維持した井上を称えた。
2人の試合を生で見るのは初めて。「世界最高の2人です。負けはしましたが、ナカタニは最高級のボクサーであることを示したと思います。株はむしろ上がったのではないでしょうか。イノウエにあれだけの困難をもたらしたのですから」。10回に中谷が額から流血を起こした偶然のバッティングがなければ、「ナカタニが押し続けていたかもしれません」と敗れた中谷にも惜しみない賛辞を送った。
再戦にも期待「長く語り継がれる日に」
もう1人、「ナカタニは自分を誇りに思うべきです」と熱弁したのはニカラグア出身のスポーツアンカー、レビィ・ルナ氏だ。米スポーツ専門局「ESPN」やニカラグアのスポーツ専門局「8・ディポルティーボ」で試合をレポートする同氏は「こういう戦いを期待していました。IQの高い試合をね。ボクシングのIQといえば、イノウエです」と興奮冷めやらぬ様子で語った。
116-112で井上に軍配を上げつつ、「ナカタニは最高の選手の1人と対峙したんです。それは簡単なことじゃない」と、絶対王者と真っ向から張り合った勇姿に敬意を込めた。「ナカタニはまたタイトル戦のチャンスを得てしかるべきです。ビッグマッチが待っていると思います。バムとかね」。現世界スーパーフライ級3団体統一王者のジェシー・ロドリゲス(米国、帝拳)との将来的な対戦を願った。
「ナカタニの評価は上がりました。最高の対戦相手を前に、あのような戦いをしたのですから。ナカタニにとってハードな試合でしたが、8回はそれまでと違う、より競争力のある展開になりました。イノウエがこのスポーツにおいてどれだけの位置にいるのか、みんな分かっています。ナカタニは自分を誇りに思っていいはずです」
ルナ氏は井上にも再びビッグマッチの実現を期待した。「やるなら日本じゃなきゃいけません。ここ東京ドームで。これだけの観客を集めるのは簡単なことではありませんが、イノウエはキャリアにおいて最高のご褒美を受けるに値します。彼はこの競技に対する規律正しさ、敬意を持っているから。本当に素晴らしい仕事をしています」。井上自身もまた東京ドームで戦うことを望む発言を残した。
「THE DAY -やがて、伝説と呼ばれる日。-」と銘打たれたこの興行。アイバーズ記者は「まさにTHE DAYです。長く語り継がれる日になるでしょう。願わくば、彼らがまた2回、3回と再戦してほしいです。後世の人が振り返るような、非常に有名な試合になると思います」と“続編”を夢見ていた。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)
