“ソウル最後”のスラム街(タルトンネ)、再開発着工をめぐる期待と懸念「30年以上待っている人もいる」「3000世帯超える新築の大規模団地に」
「住民の期待は大きい。30年以上も待っている人々もいるからだ」
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4月23日午後、ソウル蘆原区(ノウォング)にあるスラム街「ペクサマウル(白沙村)」の再開発現場を訪れた。鉄製のフェンスに囲まれ出入りが制限された現場は、解体作業が完了して砂漠のように土がむき出しになっていた。平日の昼間であったが、工事現場内には作業員の姿もなく静まり返っており、パワーショベルも動いていなかった。
この状況に、着工が遅れているのではないかという懸念の声が上がっている。現場近くで会ったある関係者は「後続の工程が準備できておらず、待機中だと聞いている」と話した。近くの不動産仲介業者の関係者A氏は「解体完了からかなりの時間が経過した」とし、「今年の11月に着工すると聞いている」と述べた。
一方、事業施行者であるソウル住宅都市開発公社(SH)側は、当初の予定通り今年の上半期中に着工するとしている。SH側は「着工が遅れているわけではない」とし、「先月、事業施行計画変更の認可を終えており、ソウル市の構造安全審議の完了や掘削審議などを経て、今年の上半期中に着工届を提出する予定だ」と説明した。
こうした懸念とは別に、住民や近隣の不動産市場の期待感は相変わらず高い。A氏は「都市ガスも通っておらず、解体前までは練炭を使っていた場所が、3000世帯を超える新築の大規模団地になるのだ」とし、「30年以上待っている住民も多く、期待が高まるのは当然だ」と語った。
別の不動産仲介業者の関係者B氏は、再開発による市場の変化について「今すぐ需要や相場に変化があるわけではない」としながらも、「大規模団地であり、この近辺には新築マンションがほとんどないため、周辺住民を含め需要はかなり高いと予想される。再開発された団地を含め、周辺相場も長期的に右肩上がりになるだろう」と見通した。

「ソウル最後のタルトンネ(月の町)」と呼ばれたペクサマウルの再開発事業は、本格的な工事段階に入るまで多くの紆余曲折を経験した。
1967年に撤去民の強制移住によって形成されたペクサマウルは、1971年に開発制限区域に指定されて以降、半世紀近く落後した環境に放置されていた。2008年に開発制限区域が解除され、翌年に住宅再開発整備区域に指定されたことで、再開発の議論が本格化した。
しかし、2011年にソウル市がマウルの歴史性を守るため、路地裏や地形の一部を保存する「住居地保存方式」を導入したことで難航した。全面開発の是非をめぐる論争が起こり、施行会社の変更などを経た末、2017年にSHが施行を引き受けたことで事業は再び正常化の軌道に乗った。
その後、昨年末の移住および解体の過程で、団地内の野良猫に対する保護措置が不足しているとして動物保護団体などが工事中止の仮処分申請を提起したが、今年1月に裁判所がこれを棄却し、法的リスクは解消された。昨年12月に起工式を行ったペクサマウルは、2029年の入居を目標としている。

だが、今年1月に政府が「都心住宅供給拡大および迅速化方案」として蘆原区の泰陵(テルン)CCを大規模住宅団地の造成候補地に選定したことで、ペクサマウル再開発に関する論議が再燃した。
泰陵CCがユネスコ世界文化遺産である朝鮮王陵の「泰陵」と「康陵(カンヌン)」に隣接しているため、世界文化遺産評価の影響圏に含まれ、オ・セフン現市長と「共に民主党」のチョン・ウォノ市長候補の間で論争が繰り広げられた。ペクサマウル再開発区域も同じ影響圏に入る可能性があるとの懸念が提起されたためだ。
先月、世界遺産の近隣で大規模な建物の工事や騒音・振動・大気汚染などが文化遺産に深刻な影響を及ぼす場合、国家遺産庁が必要な措置を取れるようにする内容を具体化した世界遺産法施行令の改正案が公布され、関連する懸念が拡大した。
ただし、すでに当局の許認可が完了しているペクサマウルで、こうした懸念が現実化する可能性は低いと見られる。
国家遺産庁側は「開発工事が世界遺産に悪影響を及ぼすと判断される場合、遺産評価を受けるよう要請することはできる」としながらも、「すでに許認可が行われた案件について、遡及して適用することはないと判断している」とした。
(記事提供=時事ジャーナル)
