◆一瞬で行われたUターンと待ち伏せ

「やっと振り切れたと思ったんです」

 しかし、相手は広い車線を利用して一瞬でUターンをし、出口に進入したのだ。さらに、料金所へ向かう高橋さんの前に割り込んできたのだとか。

「本当に一瞬でした。“田舎の広い高速だからできた”動きだと思います」

 料金所を抜けると、相手は路肩に停車しており、まるで高橋さんを待ち伏せしているように見えた。その後、相手は対向車線へ戻り、再び高速へ消えていったという。

 警察と合流しコンビニで事情を説明すると、「女性2人は狙われやすい」と告げられ、恐怖が一層募ったそうだ。

「スピードを出してあおられるのも怖いですが、出口で待ち伏せされる執拗さはもっと不気味でした」

◆■数字が物語る「女性狙い」の実態

今回お届けしたエピソード。被害に遭った女性たちが感じた恐怖は、決して「運が悪かった」では済まされない、現代の路上に潜む構造的な問題を象徴しています。

最新の「令和7年版 警察白書」の統計によれば、路上でのつきまといと共通する歪んだ心理を持つ「ストーカー事案」は、極めて深刻な状況が続いています。

特に目を引くのは、被害者と加害者の年齢層のギャップです。

ストーカー被害・加害の年齢分布(令和6年)】
※割合(%)

▼年齢:被害者(件数/%) |加害者(件数/%)
・〜19:2340件(12.2%)|1088件( 5.6%)
・20代:6740件(35.1%)|3972件(20.3%)
・30代:4037件(21.1%)|3169件(16.2%)
・40代:3253件(17.0%)|3098件(15.8%)
・50代:1819件( 9.5%)|2501件(12.8%)
・60代: 594件( 3.1%)|1360件( 7.0%)
・70〜: 385件( 2.0%)|1028件( 5.3%)
・不詳: 10件( 0.1%)|3351件(17.1%)
(出典:令和7年版 警察白書より)

このデータが示す通り、被害者は20代(6,740件)が突出して多く、30代まで合わせると全体の半数以上(56.2%)に達します。一方で、加害者は20代から50代まで各層で数千件規模に上っており、卑劣な執着心を持つ者が、世代を問わず路上の至る所に潜んでいる現実が浮かび上がります。

こうした「自分より弱い相手を執拗に狙う」という卑劣な心理は、今に始まったことではありません。

「平成25年版 警察白書」では、女性をターゲットにした卑劣な実態を詳細に分析していました。

当時は、暴行や傷害といった「粗暴犯」における女性被害の増加が社会問題となっていました。被害者全体に占める女性の割合は、平成5年には14.8%(約1万4000人)でしたが、平成24年には29.7%(約1万9000人)へと急増。この20年間で女性被害の割合が約2倍に跳ね上がるという、極めて異常な推移を記録していたのです。

現在、最新の警察白書において「ひったくり」や「すり」といった手口別の女性被害データが大きく扱われることは少なくなりました。それは、街中の防犯カメラの普及やキャッシュレス化によって、こうした路上犯罪そのものが激減したというポジティブな側面もあります。

しかし、データが示していた「抵抗されにくい相手を狙う」という加害者の歪んだ心理までが消え去ったわけではありません。その矛先は今、形を変えて「ストーカー行為」や、今回のような「粘着型のあおり運転」となって路上に現れているのです。

事例2で警察官が口にした「女性2人は狙われやすい」という言葉。それは、加害者が「女性なら反撃されない」「自分の優位性を誇示できる」と侮っていることの裏返しでもあります。しかし、現在の法律においてその「甘い考え」は通用しません。

2020年に創設された「妨害運転罪」により、こうした執拗なつきまといや割り込み行為は、事故を起こさずとも一発で免許取り消し、最長5年の懲役が科される重罪となりました。一時の身勝手な「怒り」や「嫌がらせ」の代償として、彼らはその後の社会生活そのものを失うことになるのです。