保存に向けた検討が進む高輪築堤の信号機跡=港区教育委員会提供

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きっかけは区道の計画変更案

 東京都港区のJR高輪ゲートウェイ駅周辺の再開発事業で発見された明治時代の鉄道遺構「高輪築堤」を巡り、JR東日本が保存方針の見直しを検討していることがわかった。

 再開発計画を再考して新たに約50メートル分の築堤を保存する議論の進展が見込まれ、広い範囲での築堤の保存を求める専門家らも評価している。(青木聡志)

 同駅南側のエリアにまたがる約400メートルの築堤の保存については現在、JR東が設置した考古学の専門家らでつくる「高輪築堤調査・保存等検討委員会」などで議論されている。JR東はこのエリアで高層ビルや品川駅まで続く歩行者デッキを整備する計画だが、2024年9〜12月の調査で広範囲にわたって状態の良い築堤が確認された。専門家らからは「築堤構造の多様性を示す貴重な遺構」として、保存を求める意見が出ていた。

 JR東は25年4月、山手線など既存の線路下に大半が潜り込む約110メートルの築堤を現地に保存し、それ以外は大きさや構造などの記録にとどめる考えを示した。ただ、広範囲での保存を求める専門家らとは意見が対立。JR東はその後も再開発計画の大幅変更に難色を示し続けたため、議論は平行線をたどっていた。

 状況に変化が出たのは今年2月。町づくりの専門家を含めたJR東の別の検討会議で、区画整理で築堤の真上を通る計画だった区道を手前でカーブさせる案が浮上した。区道のルートが変更できれば、区道周辺に建設予定だった別の構造物の場所も動かせる見通しになり、築堤保存の範囲拡大を検討する余地が生まれたという。

 3月中旬に開かれた高輪築堤調査・保存等検討委員会で、これまで「改善策がない」としてきたJR東側は「建設的な議論を進めたい」と表明。約110メートル分の築堤に加え、国内最初期の信号機跡と推定される遺構を含めた約50メートル分の築堤も保存に向けて検討を進める考えを明らかにした。

 JR東は今後、港区などの関係機関と周辺の計画を含めて協議し、築堤の保存方針を含めた再開発計画の見直しを最終的に判断する。JR東の担当者は「早期の再開発計画完成に向けて着実に進みたい。現地保存に向けて関係機関とできることを検討する」としている。

 歴史的な町並み保存や活用に詳しい西村幸夫・東京大名誉教授(都市計画)は「大都市での再開発計画は代替の土地が少なくコストも高いなど、発見された遺構の保存との両立が難しいケースが多い。高輪のケースでは、保存した築堤を手がかりに日本の近代が始まった物語を示せれば街の価値を高めることができる。事業者や自治体が議論を尽くしてベストミックスを探ることが大事だ」と話した。

 ◆高輪築堤=1872年(明治5年)に新橋―横浜間で開業した日本初の鉄道の一部で、日本の近代化を象徴する遺跡。2019年4月以降に相次いで見つかり、高輪ゲートウェイ駅周辺では、現在検討が進む駅南側のエリアに先行して出土した約900メートルのうち、船を通すための橋梁(きょうりょう)を含む計約120メートルが、21年に国史跡に指定された。レールを復元するなどして28年春に公開される予定。