「バレット食道がん」の”3つの症状”はご存じですか?末期症状も医師が解説!
バレット食道がんの症状はどのようなものでしょうか。メディカルドック監修医がバレット食道がんの概要や主な症状・末期症状について解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「バレット食道がん」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。
「バレット食道がん」とは?
バレット食道がんは、バレット食道という前がん病変から発生する腺がんの一種です。バレット食道とは、胃酸の逆流により食道の下部粘膜が胃の粘膜に似た形態に変化した状態を指します。この変化した粘膜からがんが発生することを「バレット食道がん」と呼びます。
バレット食道がんは、欧米では食道がん全体の約80-90%を占める一方で、日本では約5-10%と比較的少ない疾患でした。しかし、近年の食生活の欧米化や肥満の増加により、日本でも患者数が増加傾向にあります。この病気は、慢性的な胃食道逆流症が主な原因とされており、長期間にわたる胃酸の逆流により食道粘膜が変化し、最終的にがん化に至るという過程をたどります。早期発見・早期治療により良好な予後が期待できるため、適切な知識を持つことが重要です。
「バレット食道がん」と「食道がん」の違いとは?
バレット食道がんと一般的な食道がんには、いくつかの重要な違いがあります。一般的な食道がんの多くは食道の中部から上部に発生する扁平上皮がんですが、バレット食道がんは食道の下部、特に胃との境界部分に発生する腺がんです。原因の違いは、従来の食道扁平上皮がんは主に喫煙や飲酒が原因とされていますが、バレット食道がんの主な原因は胃食道逆流症や肥満、ピロリ菌の除菌などです。肥満やピロリ菌の除菌が、酸性の強い胃酸の逆流を助長させ、食道粘膜が慢性的な炎症を起こし、粘膜の性質が変化することでがん化のリスクが高まります。患者層の違いとして食道扁平上皮がんは日本人男性に多く見られ、特に60-70歳代に好発します。一方、バレット食道がんは欧米人に多く、肥満や胃食道逆流症を患う中年男性に多い傾向です。両者は同じ食道に発生するがんですが、発生部位や進行パターンの違いにより、手術方法や治療戦略が異なる場合があります。バレット食道がんは胃との境界部分に発生するため、手術の際は胃の一部も含めて切除することが多くなります。
バレット食道がんの主な症状
つかえ感・嚥下困難
バレット食道がんの最も典型的な症状は、食べ物を飲み込む際のつかえ感や嚥下困難です。初期には固形物を飲み込む際に違和感を感じる程度ですが、進行すると液体も通りにくくなります。この症状は徐々に進行し、食事量の減少や体重減少につながることもあり注意が必要です。症状を和らげるために、食べ物をよく噛んで小さくする、水分を多めに摂取しながら食事をする、流動食や軟らかい食品を選ぶなどの工夫ができます。ただし、これらは一時的な対処法であり、根本的な治療にはなりません。つかえ感が継続する場合は、消化器内科または消化器外科を受診してください。受診時は症状の経過、食事との関連、体重変化について詳しく説明することが重要です。完全に食べ物が通らなくなった場合は緊急性が高く、速やかな医療機関への受診が必要です。
胸痛・背部痛
食道がんが進行すると、胸の奥や背中に痛みを感じることがあります。この痛みは食事に関係なく持続することが多く、しばしば鈍い痛みとして表現されます。がんが周囲の組織に浸潤している可能性を示す重要な症状です。痛みに対しては市販の鎮痛薬で一時的に緩和される場合もありますが、根本的な解決にはなりません。痛みが強い場合は安静にし、無理な活動は避けることが大切です。持続する胸痛や背部痛は、消化器内科での精密検査が必要です。痛みの性質、持続時間、誘因について詳しく記録しておくと診断に役立ちます。激しい痛みや呼吸困難を伴う場合は、緊急受診が必要です。
体重減少・食欲不振
バレット食道がんが進行すると、嚥下困難による食事摂取量の減少や、がんによる代謝の変化により体重減少が起こります。また、がん細胞が産生する物質の影響で食欲不振も生じます。短期間での大幅な体重減少は、がんの進行を示唆する重要なサインです。栄養価の高い食品を少量ずつ頻回に摂取する、食べやすい温度や形状に調整するなどの工夫が有効です。ただし、根本的な治療が最も重要となります。体重減少が続く場合は、消化器内科での精密検査と栄養評価が必要です。受診時は体重が何キロ減ったのか、その期間や食事記録を持参すると診断に役立ちます。急激な体重減少や全身状態の悪化がある場合は、早急な医療介入が必要となります。
バレット食道がんが進行すると現れる症状(末期症状)
嚥下不能・栄養失調
がんが進行すると食道の内腔が完全に閉塞し、唾液さえも飲み込めなくなることがあります。この状態では経口摂取が不可能となり、急激な栄養失調や脱水が進行します。この段階では医療機関での緊急処置が必要です。食道ステント留置や胃瘻造設などの治療により、栄養摂取経路を確保することが優先されます。嚥下不能の状態は生命に関わる緊急事態です。消化器内科または消化器外科のある病院へ速やかに救急受診してください。この段階では入院治療が必須となります。
呼吸困難・咳嗽
進行したバレット食道がんが気管や気管支に浸潤すると、持続する咳や血痰、呼吸困難が生じます。また、食道気管瘻(食道と気管が交通した状態)が形成されると、食べ物や飲み物が気道に流れ込み肺炎を繰り返すようになります。呼吸困難に対しては痰の排出や酸素吸入が必要です。咳が強い場合は鎮咳薬が処方されることもありますが、根本的な治療が優先されます。呼吸器症状を伴う場合は、消化器内科と呼吸器内科の連携による治療が必要です。呼吸困難が急激に悪化した場合は、緊急受診する必要があります。
全身衰弱・多臓器不全
末期のバレット食道がんでは、がんの転移や全身への影響により、肝機能障害、腎機能障害、心不全などの多臓器不全が生じます。患者さんは極度の全身衰弱、意識レベルの低下、浮腫などの症状を呈します。この段階では症状の緩和と患者さんの苦痛軽減が治療の中心となります。疼痛管理、呼吸困難の緩和、精神的支援などの緩和医療が重要になります。多臓器不全の状態では、緩和医療科や在宅医療チームとの連携による包括的なケアが必要です。患者さんと家族の希望を十分に聞きながら、最適な療養環境を選択することが大切です。
「バレット食道がん」についてよくある質問
ここまでバレット食道がんを紹介しました。ここでは「バレット食道がん」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
バレット食道がんを発症する確率について教えてください。
齋藤 雄佑 医師
バレット食道のバレット食道がんのリスクは一般人口と比較すると30~125倍高いリスクとされていますが、バレット食道の方がバレット食道がんを発症する確率は、欧米の報告では年間0.3~0.6%程度でそれほど高い確率ではありません。また、バレット食道があっても必ずしもがんに進行するわけではありません。定期的な内視鏡検査による経過観察と、胃食道逆流症の適切な治療により、リスクを軽減することが可能です。特に高度異形成を伴うバレット食道では、がん化のリスクが高くなるため、より頻繁な検査や予防的治療が検討されます。
バレット食道がんの初期症状について教えてください。
齋藤 雄佑 医師
バレット食道がんの初期症状は非特異的で、胃食道逆流症の症状と区別がつきにくいことが多いです。最も早期に現れる症状は、固形物を飲み込む際の軽度のつかえ感や違和感です。また、胸やけや呑酸といった逆流症状が以前より悪化したり、治療に対する反応が悪くなったりすることもあります。体重減少や食欲不振は、ある程度進行してから現れる症状です。これらの症状は他の疾患でも見られるため、長期間の胃食道逆流症がある方や、バレット食道と診断されている方は、定期的な内視鏡検査による早期発見が重要です。
編集部まとめ バレット食道がんは予防的な生活習慣が重要
バレット食道がんは、慢性的な胃食道逆流症から発症する比較的稀ながんです。特に中年男性、肥満、長期間の逆流症状がある方は注意が必要です。早期の段階では症状が軽微で見過ごされやすいため、リスクファクターを持つ方は定期的な内視鏡検査を受けることが重要となります。早期発見により内視鏡治療など侵襲がすくない治療が選択肢になりますので、定期的な検査をおすすめします。
「バレット食道がん」と関連する病気
「バレット食道がん」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
消化器科の病気
逆流性食道炎バレット食道
食道アカラシア食道裂孔ヘルニア胃がん
耳鼻科の病気
咽頭がん喉頭がん舌がん食道がんは耳鼻科系のがんも合併することが多いとされています。お腹の症状だけではなく、喉の違和感などにも注意を払う必要があります。気になる症状がある方は医療機関を受診しましょう。必要時は定期的な検査をおすすめします。
「バレット食道がん」と関連する症状
「バレット食道がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
胸焼け呑酸
つかえ感
嚥下困難
体重減少
これらはバレット食道がんに特異的な症状ではありません。胃食道逆流症などの良性疾患から、バレット食道がん以外の悪性疾患の可能性もあります。これらの症状を放置せずに医療機関を受診し、医師の診察を受けましょう。
参考文献
食道癌診断・治療ガイドライン 2022年版(日本食道学会編)
胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂第3版)(日本消化器病学会)
