「ウンチ化石ハカセ」は元東大応援部、自伝的エッセーの執筆で「マイナーな古生物学を盛り上げたい」
千葉大准教授で古生物学者の泉賢太郎さん(39)が、初の自伝的エッセー「大学4年間を『応援』に捧げた私が古生物学者になった話」を刊行した。
生物のフンの化石の研究で知られ、「ウンチ化石ハカセ」としてメディア出演なども行っている泉さんは、著作を通して広く古生物学へ興味を持ってもらいたいと意気込んでいる。(大治有人)
エッセーでは、東大応援部での活動に没頭した学生時代を出発点に、研究テーマ選びで失敗したことや、ほかの学生のレベルの高さに打ちひしがれた経験を経て、古生物学者となるまでの道のりを振り返っている。
泉さんは「昔と今の世界が違うことの面白さ」にひかれ、高校時代に古生物学の道を志した。現在は太古の生物が生活した痕跡が今に残る「生痕化石」を専門としている。生痕化石は足跡や巣穴が代表的だが、泉さんは生物のフンの化石に着目し、研究を続けてきた。
化石を通して解き明かしたいのは、太古の環境と生物との関係性だ。化石の大きさや形、化学組成などを通して、生物が当時の環境でどのように暮らしたかを探求する。泉さんはその魅力について「フンの化石を見ることで、生物が環境にどう適応していたかわかるのが面白い。フンの化石から生物が暮らしていた環境がどのようなものだったかも考えることができる」と語る。フンがどのように形作られたかを知るために、近年は現生生物の飼育・研究にも乗り出している。
泉さんはテレビ番組などに数多く出演したり、一般書を執筆したりして研究を紹介している。しかし、古生物学の将来には危機感を感じている。「どちらかというとマイナーな学問。ほとんどの人が存在自体を知らず、少子化で古生物学者を目指す子どもも減っていくだろう」と話す。
そんな思いが募る中、学習本などを刊行する理論社(東京都千代田区)から執筆の誘いを受けた。「古生物学を盛り上げる本を書きたい」。決して順風満帆ではなかった自らの研究者人生が、進路に悩む子どもや学生への「応援」になるとも感じている。執筆期間は約2年に及んだ。
「恐竜は誰もが知っている。そう考えると、古生物学自体も多くの人に好きになってもらえる可能性がある」。古生物学が色々な人の生活の一部になる未来を夢見ている泉さん。エッセーを通じて、希望を膨らませている。
