「なぜ筋トレしているあの人は若々しいのか」最新科学が証明…《がん細胞すら破壊する》最強ホルモンの正体
さまざまながんに効く「若返りホルモン」
「海外ではハーバード大学やコペンハーゲン大学がこの分野で先進的な研究を行っていて、私たちもそれと並行する形で研究を進めてきました。運動すると大腸がんが予防できるメカニズムに着目して研究していたところ、それを発見できました。近年では、それが大腸がんを防ぐだけでなく、卵巣がんや前立腺がんにも効く可能性も報告されています」
こう語る京都府立大学准教授の青井渉氏らが発見した「それ」とは、マイオカインの一種「SPARC(スパーク)」である。
マイオカイン――。聞きなれない人も多いだろうが、筋肉にまつわる最新研究では、これこそが老化を予防するカギとなることがわかってきた。『筋ホルモン マイオカインの威力』の著書もある青井氏が続ける。
「'00年ごろまでは、体質や体内の状態に応じてホルモンが分泌されるのは、脳や副腎、生殖器など一部の臓器からと考えられていました。ところが、実は筋細胞からも分泌されていることが、最近の研究で次々とわかってきた。このホルモンは、ギリシャ語の『筋肉』に由来するマイオと、『分泌物質』に由来するカインを合わせて、マイオカインと名付けられました」
認知症を防ぐ、がん細胞を死滅させる
このマイオカインはホルモンの総称で、一説には600種類以上もある。毎年のように発見されているが、物質としての働きが明確にわかっているのは50種類ほど。身体にとってプラスに働く代表的なマイオカインと、その作用の一例を挙げてみよう。
●インターロイキン-6:'03年にコペンハーゲン大研究チームが、マイオカイン第1号とした。血糖値を下げる抗炎症作用がある
●アイリシン:'12年にハーバード大研究チームが発見。脂肪を燃やして糖尿病を防ぐだけでなく、認知機能を向上させ認知症を防ぐ
●カテプシンB:海馬の神経の脱落を防ぎ、記憶力や認知機能を高める
●乳酸:広義の意味ではマイオカインに含まれる。全身の細胞のエネルギー源として使われる
●SPARC:'12年に、青井氏の研究チームが発見し公表。大腸に直接作用して、がん細胞の芽を死滅させる
青井氏によると、これらのマイオカインは運動をするたびに筋肉から分泌されたり、運動を習慣としている日常生活でじわじわと出てきたりする。逆に、運動不足や加齢によって分泌量が増え、身体に悪さをする場合もある。
「運動は週3回、1時間で十分です」
要するに、マイオカインには「善玉」と「悪玉」があるというのだ。
「がんの芽を摘んだり、骨を強くしたり、脂肪燃焼を促したりと、老化予防につながる役目を果たす一方で、たとえばマイオスタチンのように、筋肉から出た後に自身や他の筋肉に降りかかって萎縮させたり、骨を弱くするマイオカインもあります。また、血管を傷つける炎症系のマイオカインもあります」
青井氏によると、善玉マイオカインを多く出せる人は、血糖値を下げやすく脂肪を燃焼する力の高い「質の良い筋肉」を持っている。逆に悪玉マイオカインが多く出てしまう人は、運動不足で筋肉があまり発達していない。運動する習慣をつけることで、悪玉は出にくくなり、老いを防げるという。
「運動は週3回で十分。1回あたりで言えば、軽いジョギングやストレッチ、筋トレを合わせて1時間ほどでよいと考えています。家の中で行うとしたら、液体の入った500mlのペットボトルを両手に持って、ゆっくり上げ下げしたり横に開くことを10〜15回ほど。ペットボトルを両手に持ったまま屈伸運動を何度かするだけでも、マイオカインが出やすい身体への第一歩になります」(青井氏)
決して無理することなく、まずは軽い負荷を筋肉にかけることでも、身体は若返るのである。
もちろん、ある程度の負荷をかけ続けることも筋肉には必要だ。【後編記事】『運動ギライに朗報「反老化物質=マイオカイン」がドバドバ出てくる…医師監修「カンタン体操」を完全図解』でさらに詳しく解説していく。
「週刊現代」2026年4月27日号より
