Toyota Woven Cityとは? 最新技術展KAKEZAN 2026解説

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Toyota Woven Cityとは? 最新技術展KAKEZAN 2026解説

 2026年4月、静岡県裾野市のToyota Woven Cityにおいて、新たな開発拠点となる「Inventor Garage」が稼働を開始しました。

 この施設で行われたイベント「KAKEZAN 2026」では、モビリティの枠を超えた次世代技術が多数展示されました。

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 現地で確認した自動運転プラットフォームや街全体を巻き込む安全システムの詳細について、イベントの概要とともに解説します。

  モビリティ社会の未来像を構築するToyota Woven Cityにおいて、開発の新たな拠点となる「Woven City Inventor Garage」が本格的に稼働を開始しました。この施設は、50年以上にわたり乗用車の生産を担ってきた、トヨタ自動車東日本(TMEJ)東富士工場のプレス建屋をリノベーションして誕生したものです。

 建物の床や壁には当時のキズやヒビがそのまま残されており、かつての工場の面影を感じさせる作りになっています。

 東富士工場が培ってきたものづくりの魂を「Heritage」として受け継ぎながら、未来のイノベーションへとつなげる、Woven Cityを象徴する場所として位置付けられています。

 施設内には、発明品のプロトタイプを製作するモノづくりスペースや、検証を行う実証スペースが備えられており、試作支援も行われます。

 この施設の稼働に伴い、4月20日から24日の5日間にわたり、完全招待制イベント「KAKEZAN 2026」が開催されています。

 期間中で約3500名の参加が予定されており、事業化を加速させるための仲間づくりが主な目的となっています。

 イベント名である「カケザン」とは、トヨタのものづくりの知見、ウーブン・バイ・トヨタのソフトウェア技術、そして参画する各インベンターが持つ強みや専門性を掛け合わせることで、産業を超えた連携を生み出し、今までにない価値を創出する取り組みを指します。

社会と連携するモビリティとは

 イベント会場は複数のエリアに分かれており、「エリア2」ではウーブン・バイ・トヨタが開発するテクノロジーが、想定利用シーンを交えて展示されていました。

 ウーブン・バイ・トヨタは、モビリティの概念を拡張し、人や社会の可能性を広げることで、幸せを量産することを目指しています。

 その実現に向けた第一歩が「安全と安心」の確保であり、交通事故ゼロを目標としています。

 しかし、クルマ単体の性能向上だけでは守りきれない命があるという認識から、産業の枠を超えたアプローチが進められています。

 具体的には、人、モビリティ技術、インフラストラクチャーが互いに連携し合う社会の仕組みの開発です。

 街中に設置されたカメラ映像から、大規模基盤AIモデル「Woven City AI Vision Engine」が視覚情報を解析し、人やモビリティの状況およびその挙動を理解。

 交差点の死角にいる歩行者の検知や、異常が疑われる映像の抽出を行い、社会全体が一つにつながって機能することで安全を実現する構想が示されました。

 この構想を具現化したシステムが「Woven City Integrated ANZEN System」です。

 展示では、人、モビリティ技術、インフラのデータから事故のない街を作るための仕組みとして解説されていました。

 クルマや信号機のカメラ映像を分析し、人やモビリティの動きから行動を予測して、その情報を歩行者やドライバーに知らせることで運転を支援します。

 街全体でリスクを事前に減らすよう働きかける社会インフラとしての役割を持ち、システムに集められた情報は共有されます。

 さらに、クルマ自身が安全になるよう機能を調整したり、ドライバーに前もって働きかけたりもします。

 街全体が継続的に学習することで、交通事故ゼロの社会へ近づくアプローチが取られています。

 自動運転技術の展示では、統合型の自動運転技術が紹介されました。

 フィジカルAIと高度な推論技術を活用し、日常の運転環境から予期せぬ複雑な状況に至るまで、自然に対応できるシステムの構築が進められています。

 走行を通じて得られた膨大なデータはクラウドへと送られ、アクティブ・ラーニング・ループによって継続的に学習が行われます。

 より優れた学習モデルの構築に活用され、進化したモデルはネットワークを通じて車両をアップデートします。

 これにより、世界中の車両が常に最新の推論能力を持ち、安全性と安心感の向上に貢献していくサイクルが構築されています。

 これらの技術を根底から支えるプラットフォームの展示も行われました。

「Arene(アリーン)」は、OEMが効率的なSDV(ソフトウェア定義車両)開発を行うための統合ソフトウェアプラットフォームです。

 開発、テスト、検証、実装、継続的な改善を標準化し、ソフトウェア資産を共有・再利用することで開発効率を高めます。

 物理的な車両がなくても早期の検証が可能となり、安全で信頼性の高い車の開発を加速させます。

 また、街全体のデータを統合する「Woven City Infra Hub」や、プライバシーを尊重しながらデータ活用を可能にする「Woven City Data Fabric」といった仕組みの開発も進められています。

 さらには、トヨタの生産現場のKAIZENをデジタルツイン技術でサポートする「Woven City Digital KAIZEN Platform」や、ロボットの開発を加速させる「Woven City Robot Platform」も紹介されました。

様々な技術紹介も行われた

 今回「エリア3」では、Woven City Inventorsの具体的な取り組みが多数展示されていました。

 モビリティの未来を切り拓く仲間として、一般社団法人AIロボット協会や第一興商、Joby Aviation、トヨタファイナンシャルサービスが新たに参画し、インベンターは計24社に拡大。

 展示の中には、会長の豊田章男氏が自らインベンターとして開発に参画している「豊田章男AI」も含まれています。

 自らがAI技術の開発に活用することで、トヨタグループ内でAIを身近なものとして活用する土壌を作る目的があると説明されました。

 他のインベンターの展示も多岐にわたります。

 ダイドードリンコは「空間に溶け込む自販機HAKU」を展示し、日清食品は「栄養最適化テクノロジーで目指す食モビリティの未来」をテーマに掲げています。

 また、UCCジャパンによる上島珈琲店での実証実験や、ダイキン工業のエネルギーマネジメント活動、さらには空のモビリティエコシステム構築に向けたJoby Aviationの取り組みなど、自動車業界の枠を超えた実証が進行しています。

 さらにはトヨタグループとしてもデンソー、アイシン、豊田自動織機、豊田合成、トヨタ紡織、ジェイテクト、トヨタ自動車東日本、豊田通商などが出展。

 例えばアイシンではリアルなAIエージェントを活用したコミュニケーション展開、ジェイテクトではドローンのビジネス活用や音声案内を使った音のAR活用を展開する予定です。

 それぞれの強みを活かした技術やサービスをToyota Woven Cityの場だからできる実証実験を展開していることも紹介されました。 

 施設内には、トヨタグループの源流を感じさせる展示も用意されています。

 当時の工場から受け継ぐレガシーとして、トヨタグループ最初の発明である木製人力織機が展示されており、機織りの体験が可能です。

 その横にはサービスプラットフォームとして次世代モビリティ「e-Palette」が並べられており、過去の発明から未来のモビリティへの変遷を視覚的に捉えることができます。

 現在進めている取り組みや今後について、ウーブン・バイ・トヨタの隈部肇CEOは次のように話しています。

「トヨタグループの祖である豊田佐吉が自動織機を発明してから100年、トヨタは『誰かのために』という思いを原点に、織機からクルマへと発展を遂げてきました。

 次の100年に向けて、私たちウーブン・バイ・トヨタは、トヨタ全体をモビリティカンパニーへと変革させるための『タグボート』としての役割を担っています。

 私たちが描く未来は『交通事故ゼロの社会』です。これを実現するためには、クルマ単体の性能向上だけでは不十分であり、人と多様なモビリティ、そしてインフラを繋ぎ合わせる必要があります。

 その基盤として、ソフトウェア開発プラットフォームである『Arene(アリーン)』や独自のAI技術を開発しています。ウーブン・シティという実証の場で、パートナー企業の皆様や世界中の技術と『カケザン』を起こし、『未来の当たり前』を共に創り上げていきたいと考えています」

 またウーブン・バイ・トヨタのSenior Vice Presidentである豊田大輔氏は次のように話しています。

「ウーブン・シティは、決して完成された環境ではなく、あえて『未完成の街』としています。

 実証開始からの半年間だけでも、自動運転車が予期せぬ反応を示したり、配送ロボットの音が大きすぎたりと、現場では想定外の出来事や失敗が数多く起きています。

 しかし、この街は『失敗していい街』なのです。実証の内容に応じて街のインフラ自体を柔軟に変化させ、失敗から学びながら前に進み続ける街であり、その根幹を支えているのがAI技術です。

 AIは人に代わるものではなく、人の力を引き出し、可能性を広げるための存在です。50年以上にわたり750万台のクルマを生産してきたこの東富士工場の『モノづくりの魂』をヘリテージとして受け継ぎ、イノベーションと『カケザン』することで、次世代のモビリティ社会を切り拓いていきます」

今後、Woven Cityを舞台にインベンターたちによる実証がどのように進展していくのか

「KAKEZAN 2026」での取材を通じて、トヨタ自動車とウーブン・バイ・トヨタが描く未来の社会実装に向けた具体的な道筋が見えてきました。

 かつて自動車の生産を担った工場跡地から生まれた「Inventor Garage」は、ソフトウェアやAI、インフラを統合する新たな開発拠点となっています。

 今回公開された技術群は、クルマ単体ではなく、街全体を一つのシステムとして捉える視点から構築されています。

「カケザン」の概念のもと、企業や産業の垣根を越えた連携が今後の実装における鍵となります。

 Woven Cityを舞台にインベンターたちによる実証がどのように進展していくのか、継続的な技術の進化が期待されます。