(左から)北村匠海、神木隆之介(撮影:磯部正和)

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 フジテレビ系月9ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』で、念願の初共演を果たす北村匠海と神木隆之介。本作は、福井県の若狭水産高校を舞台に、新米教師・朝野峻一(北村匠海)と生徒たちが「自作のサバ缶を宇宙へ飛ばす」という壮大な夢に挑む実話に基づいた物語。JAXAの全面協力のもと、宇宙日本食開発という高い壁に立ち向かう。夢を諦めない情熱と、世代を超えて受け継がれる絆を描いた、この春一番胸を熱くする青春人間ドラマだ。

参考:北村匠海「神木隆之介って神様」 『サバ缶、宇宙へ行く』での念願の初共演の喜び明かす

 実話を基にした本作で、若き教師とJAXA職員という立場で生徒たちの夢を支える二人。互いへの深いリスペクトや、撮影現場でのエピソード、そして作品に込めた熱い想いまで、今の二人の等身大の言葉で語ってもらった。

■神木隆之介「北村匠海のいる現場にいたい」

--お二人は今回が待望の初共演となります。今の率直な心境をお聞かせください。

北村匠海(以下、北村):もう、本当に念願でした。自分にとっては大きな出来事です。ようやく実現したな、という喜びでいっぱいです。

神木隆之介(以下、神木):僕にとっても、まさに念願です。「このために生まれてきたんじゃないか」と思えるほど、匠海くんの作品はずっと拝見していましたし、役者としても、お人柄も本当に素敵な方だなとずっと思っていました。お互いに子役出身という共通点もあり、いつかご一緒したいと願い続けていたので、今回のお話をいただいたときは本当に嬉しかったです。

--共演が決まる前から、お互いの存在を意識されていたそうですね。

北村:以前、フジテレビの番組で神木くんが僕の名前を出してくれたことがあったんです。そのときはまだ、このドラマで共演することになるとは思っていなかったので、驚きつつも「ありがとうございます」という気持ちでいました。そうしたら後日、神木くんがこの作品に出てくれると聞いて。

--神木さんは、当時どのような想いで北村さんのお名前を出されたのですか?

神木:あのときは生放送で「マネージャーからのタレコミ」みたいな企画で、北村さんのお名前が挙がることは僕は知らない状態だったんです(笑)。ただ純粋に「北村匠海のいる現場にいたい」という想いがあってお話ししました。その後、匠海くんがInstagramのストーリーで「ありがとうございます」と反応してくれて、それがめちゃくちゃ嬉しくて。そうしたやり取りがあった直後に、この作品のオファーをいただいたので、運命的なものを感じました。

北村:神木くんのその言葉を聞いたときは、なんて嬉しいことを言ってくれるんだろうと感激しましたね。物語の序盤はなかなか一緒のシーンが少ないのですが、神木くんがいてくれるというだけで、これ以上ないほど頼もしいです。

--お二人ともNHKの連続テレビ小説で高知県を舞台にした作品に出演されていましたが、今回は福井県と宇宙が舞台ですね。

北村:そうなんです。放送局は違いますが、お互いに朝ドラで「高知」を背負っていた時期がありました。今回はまた二人で、僕は「福井」、神木くんは「宇宙」を背負うという形になります。不思議な縁を感じますね。

--これまで、プライベートやすれ違いで会う機会はなかったのでしょうか。

神木:実は一度だけ、東宝スタジオでお会いしたことがあるんです。

北村:僕がNetflixの『幽☆遊☆白書』の撮影をしていたときだったと思います。

神木:その時に「おー!」ってなって。僕が「(DISH//の)『猫』聴いています!」と伝えたら、匠海くんが「ありがとうございます!」と返してくれて。共通の知人はたくさんいるのですが、実際に対面したのはその1回きりでした。だからこそ、今回こうして腰を据えて共演できるのが嬉しいんです。

■実話が持つ力と、作品に込める「教育理念」

--本作は、高校生が作ったサバ缶が実際に宇宙へ行ったという驚きの実話がベースになっています。物語に触れて、どのように感じられましたか?

北村:僕が「教師役をやりたい」という想いをお話させていただいたところから始まりました。そのときに僕が伝えたのは、「大人が安易に答えを与えてしまうような教育はしたくない」ということでした。生徒たちが何を想い、どの道に進むのか。たとえ全員がバラバラの道だったとしても、それをただ見守ってあげられるような、生徒と共に歩んでいく物語にしたいとお話ししたんです。そのときに僕が伝えたのは、「大人が安易に答えを与えてしまうような教育はしたくない」ということでした。生徒たちが何を想い、どの道に進むのか。たとえ全員がバラバラの道だったとしても、それをただ見守ってあげられるような、生徒と共に歩んでいく物語にしたいとお話ししたんです。

--北村さんの教育に対する考え方が、作品の核にあるのですね。

北村:僕自身、生徒役として出演した『ブタがいた教室』などの作品で、生徒ファーストで物語が進んでいく現場を数多く経験してきました。そうした経験から、今回のドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』の原案を読んだとき、小坂(康之)先生(実在のモデル)が実践されている教育が、まさに自分の理想としていた形そのものだったんです。共感というよりも、もはや尊敬の念を抱きました。こんなに自分の考えとぴったり合う実話があったんだ、と。この物語が「実話」であるという点も、出演を決める大きな決め手になりました。

--神木さんは、脚本や原作を読まれていかがでしたか?

神木:ただひたすらに感動しました。高校生たちのエネルギーはもちろん、彼らに引っ張られたり、あるいは彼らを引っ張ったりする先生たちとの関係性が本当に素晴らしいんです。何より、一つの「夢」や「意志」が、代々受け継がれていって、最終的に結実するという物語の構造に心を打たれました。これほど素敵な物語は、他になかなかないなと感じています。

--「受け継がれる」という部分に、特に惹かれたのですね。

神木:はい。1期生の生徒さんたちが大きな一歩を踏み出し、時には時間的な制約で悔しい思いをしながら卒業していく。でも、その想いは消えることなく、「自分たちが叶えられなかった夢を、後輩たちが必ず叶えてくれる」という確信を持って次世代へ託される。現実の厳しさもありつつ、夢が形を変えずに継承されていく。その過程がとても丁寧に描かれていて、僕自身、読んでいてすごく元気をいただけました。

--神木さんは今回JAXAの職員役を演じられますが、演じる上で意識していることはありますか?

神木:JAXAの職員として、夢を追う学校側をどう見守り、サポートするかを常に考えています。時には規定として厳しいことを言わなければならない場面もありますが、その根底には生徒たちと同じ方向を向いた情熱があるはず。学校、教師、JAXA、そして地域の方々。多くの人たちが心を一つにして何かを追い求めた結果が、実際に宇宙まで届いた。その事実を思うと、僕自身も今やっているお芝居という仕事をもっと頑張ろうと、背中を押されるような気持ちになります。

--北村さんは念願の教師役ですが、生徒役の方々との共演はいかがですか?

北村:撮影が始まって1カ月ほど経ちますが、毎日が刺激的です。これまで僕は、妻夫木聡さんや長谷川博己さん、寺尾聰さん、そして少し関係性は違いますが木村拓哉さんなど、多くの「先生」と呼ばれる方々と共演させていただきました。言葉数で教えるというより、その背中で大切なことを教えてくれる方々でした。

--かつてご自身が受け取ったものを、今は受け渡す立場になられたんですね。

北村:そうですね。クランクインの際、クラスの生徒たちに話をさせてもらいました。寺尾聰さんからいただいた「エンドロールにキャリアが乗るわけでもないし、今までとった賞や評価されてきた実績が乗るわけではない。だから、セリフのあるなしに関わらず、全員が同じスタートラインで、誰がどう輝くかは自分次第だ。だから僕も頑張る。だからお前たちも頑張れ」という言葉などもお借りして、僕が今まで受けてきたものをちゃんと「継承」したいと。どんなに些細なことでもいいから話し合おう、なんでも相談してほしいと伝えました。

--実際に、生徒役の皆さんとのコミュニケーションはどのように取られているのでしょうか?

北村:驚くことに、カットがかかるたびに誰かが質問に来てくれるんです。シーンの解釈から役柄の悩み、さらには「演技とは何か」「オーディションにどう向き合うべきか」といったことまで。毎日、違う生徒が相談に来てくれるのは本当に嬉しいですね。僕自身も、彼らの問いに対して言語化することで、改めて気づかされることがたくさんあります。

--「先生と生徒」という枠を超えた、クリエイティブな関係ですね。

北村:はい。僕としては、先生と生徒というより、並列に並んで一緒にものを作っている感覚が強いです。セリフの有無に関わらず、みんなにチャンスがあるドラマにしたい。教卓から見ていると、どの子が今何にトライしているか、どこで苦戦しているかが本当によくわかるんです。「あ、こうやりたいけど、うまくできないんだな」とか。

--具体的に、何かエピソードはありますか?

北村:中には、このドラマが初めての現場の子もいます。そういう子には僕から近づいて、「こうしたいなら、こういうやり方もあるよ」と提案してみたり。最初は「どうなるかな」と不安もありましたが、今では僕が思い描いていた通りの、最高のクラスになっています。この熱量が、そのまま『サバ缶、宇宙へ行く』という作品のらしさになっていると確信しています。

--北村さんが演じる朝野峻一先生の、劇中での立ち位置についても教えてください。

北村:1カ月撮影してきて分かったのは、朝野は「何もしない」というか「何もできない」先生だということです(笑)。物語は常に生徒たちが前を走っていて、朝野が追いかけても始まらない。大人は経験がある分、「それはダメだ」と立ち止まってしまいがちですが、振り返ると生徒たちはもう前を向いて歩き出している。そんな彼らの背中に、そっと手を添えることしかできない。でも、その「見守る」という行為にこそ、このドラマの魅力が詰まっていると感じています。生徒たちが常に輝いている、眩しいほどの青春を、ぜひ見届けていただきたいですね。(文=磯部正和)