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いつかマセラティの似合う大人になりたい

いつかマセラティの似合う大人になりたい。それは過去何度も書いてきたことで、#11では『マセラティ・グランカブリオが好きすぎて……冬』というタイトルで試乗レポートも行っている。今回はその続編とも言える内容だ。

【画像】マセラティ・グランカブリオが好きすぎて……春!『ヴェルデ・ジャーダ』の取材車 全75枚

きっかけは1月末に袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された、『MCプーラ』および『GT2ストラダーレ』の試乗会だった。その会場に今回レポートする、深緑のボディにベージュのソフトトップを組み合わせた『グランカブリオ・トロフェオ』が並んでいたのである。


マセラティ・グランカブリオが好きすぎて……春。    平井大介

「おお……、何と素晴らしいコーディネートよ」

念のためであるが、これは心の声である。その日は時間の関係で取材することができなかったので、後日お借りして今回レポートしている次第だ。

取材車はスポーツエキゾーストを装着したモデルで、こちらは昨年3月にディーラー注文受付を発表したもの。グラントゥーリズモとグランカブリオのトロフェオに装着が可能だ。

当時のプレスリリースから引用すると、『よりピュアでアドレナリンが高まるサウンドを提供し、マセラティの象徴的な要素である独特のエンジンサウンドとレーシングスピリットを際立たせます』というもの。

念のためおさらいしておくと、グランカブリオ・トロフェオのパワーユニットは2992ccのV型6気筒ツインターボで、550ps/650Nmのスペック。駆動方式は4WDだ。ボディサイズは全長4965mm、全幅1955mm、全高1380mm、ホイールベース2930mmで、車両重量は1970kgとなる。

翡翠色を意味する『ヴェルデ・ジャーダ』

さて、マセラティ・ジャパンの地下駐車場で再会したグランカブリオ・トロフェオは、正式には『ヴェルデ・ジャーダ』(Verde Giada)と呼ばれるオプションのボディカラーであった。

ジャーダは英語でジェイド(Jade)、日本語では翡翠となる。翡翠色は、室町時代から使われる日本の伝統的な緑色でもあるらしく(今回調べて初めて知りました)、日本人のDNA的に落ち着くのかもしれない。


『ヴェルデ・ジャーダ』(Verde Giada)と呼ばれるオプションボディカラーの取材車。    平井大介

先ほどベージュと書いたルーフは正しくは『パワーソフトトップ・グレージュ』と呼ばれるオプションで、内装は『アイス』と呼ばれる白と黒(ネロ)の組み合わせとなる。

そして、こうしたコーディネートもさることながら、ロングノーズショートデッキのオーソドックスなフォルムの中に、マセラティらしいディテールを散りばめたデザインは、それだけで所有欲が湧いてくる。

中に乗り込めば、センターコンソールには伝統を受け継ぐ時計が位置し、マセラティのDNAを主張するグランカブリオ。今回共に過ごした数日は、いかにもいいデザインのクルマに乗っている実感が常にあった。

淀みのない加速感はまさにグランカブリオの白眉

そういった歓びは、ドライブしても変わらない。いや、もっと増していった。

まず、クローズドで高速道路を走っていて感じたのは、圧倒的なGT性能の高さ。『ネットゥーノ』と呼ばれるV6ツインターボの加速がとにかく気持ちよく、その淀みがない感じはまさにグランカブリオの白眉だ。


過去のイタリア車ではあまり期待できなかったインフォテイメント系の使い勝手も良好。    平井大介

高速の加速が気持ちいいV型ツインターボのマセラティと言えば、かつての3200GTを思い出す。さらに遡れば、1981年にマセラティは市販車で初めてツインターボ(=ビトゥルボ)を採用しており、つまりは彼らのお家芸でもある。

その気持ちよさはスポーツモードでさらに高まり、しかしそれは『スーパーカー』というよりは『ラグジュアリースーパースポーツ』と呼べるだけの高級感、質感を伴ったもの。ドアに二重ガラスを採用していることも、クローズド時の快適性と無関係ではないだろう。

エキゾーストの音質は速さよりも官能性を重視した印象で、ソフトトップを開ければ、その世界はさらに魅力的なものへと変貌する。

また、過去のイタリア車ではあまり期待できなかったインフォテイメント系の使い勝手も良好。ディスプレイのグラフィックが綺麗であること、ブルートゥース接続がスムーズであること、そしてナビが日本のアイシン製であることは、強調しておきたい部分だ。

唯一のウィークポイントは、オープン時のリアラゲッジスペースが決して広くないことだろう。筆者のスーツケースはギリギリ高さが足りず収まらなかった。しかしこれは『オシャレは我慢』みたいな話で、乗る側が合わせるべきというのもイタリア車らしい部分だ。念のため、クローズ時はちゃんとクーペ同様の広さになる。

生まれながらのエレガントさ

1990年代終盤、後に所属するカー・マガジン編集部が、8台のスポーツカーを同時に長期レポートへ導入したことがあり、そのうちの1台がまだ新車で購入することができた、ビトゥルボ時代のマセラティ・ギブリだった。

会社の駐車場で初めて動かした時は、アクセルペダルの踏み方ひとつから癖だらけ。常に『ウィーン』という謎の音が聞こえてきて、イタリア車に慣れている筆者でも「うわぁ、なんだこりゃ」と思ったのをよく覚えている。デザインもロジックも独特で、当時、誌面でマセラティは『妖しい』と形容されることも多かった。


マセラティは、生まれながらのエレガントさを身についている。    平井大介

しかし、現代のマセラティは妖しいというよりは、もっとストレートにラグジュアリーだ。そしてイタリアの貴族、言い換えれば真のセレブリティが乗るに相応しい、生まれながらのエレガントさを身につけていると思う。それはもちろん演出ではなく、また、グランカブリオに限らず全てのマセラティに息づいている。

イタリア車を乗り継ぐ筆者にとって、そんなマセラティこそ永遠の憧れであり、常に『いつか見た夢の先』にあるクルマだ。グランカブリオと接し、そんな気持ちを再確認した2026年の春であった。