芋焼酎お湯割り名店5選!前割りお燗からジョカやかんまで楽しみ方いろいろ
寒い冬。日本酒のお燗もいいけれど、焼酎のお湯割りも乙なものです。立ち上る湯気にのった香りにふわ〜っと華やぎ、呑むと心からあったまる。同じ蒸留酒のジンやウイスキーでも楽しめるのです。そんなお湯割りの“新世界”をお見せしましょう。まずは芋焼酎から。前割りのお燗をはじめ、飲み方にこだわりありです。
ゆるり前割りお燗を質実剛健な空間で『羅無櫓(らむろ)』@四谷三丁目
カウンターに腰を落ち着けて見渡すと、店内にはザイルやランタンなど登山の道具や、山や山男たちの写真、山関係の蔵書などが所狭しと飾られている。
御年84歳になる店主の末松さんは明治大学山岳部のOBで、店を開いたきっかけは「先輩から仲間が集まれる場所を作ってくれ」と言われたから。どうりで落ち着いただけではない、どこか質実剛健な雰囲気が漂っている。
おすすめは前割り芋焼酎のお燗だ。
お通し1000円、お湯割り800円〜

『羅無櫓(らむろ)』(手前)お通し 1000円 (奥)お湯割り 800円〜 ウルメやアゴを噛み締めながらの一杯がたまらん
前割りとは焼酎と割り水が馴染むように数日前から合わせて寝かせたものを言う。さらにこちらの決め手が、「いろいろ試した結果、これが一番旨かった」という高尾の湧き水だ。前割りの甕からチロリに移してお燗をつけ、年季の入ったジョカで供する。ととととと……。お猪口に注ぐとちょうど42度くらいのぬる燗になる計算。
あああ、いいね。やさしく、じんわりと甘く体に沁みて心の中まで温まる。お通しにはアゴとウルメイワシの干物や煎り大豆、利尻昆布など。味の決まった和牛牛すじ煮込みもいい。
「これね、延々と飲めちゃうんです」とご主人。まさに。ゆるりと語らいたくなる雰囲気の中で時間もゆっくり溶けていく。

『羅無櫓(らむろ)』店主:末松誠さん
店主:末松誠さん「ジョカで出すところは少なくなったね」

『羅無櫓(らむろ)』57歳で開店。27年目を迎え、時を積み重ねた空間が落ち着く
[店名]『羅無櫓(らむろ)』
[住所]東京都新宿区荒木町7
[電話]03-3358-9515
[営業時間]18時〜深夜
[休日]不定休
[交通]地下鉄丸ノ内線四谷三丁目3番出口から徒歩5分
変幻自在の前割りお燗マジックを『酒場BETTAKO』@板橋
「甘口、辛口、どう飲みますか?」、銘柄を聞かれているわけではない。芋焼酎のお燗を注文すると、店主の金本さんがそう尋ねてくれる。焼酎を先に水で割ってから温めるわけだが、数種類の水を使い分け、提供温度も変える。すると、同じ焼酎でも好みに合わせ変幻自在に味わいが変わるから驚きなのだ。
「お酒と料理はパートナーなので」とご主人。逆にお燗に合わせて料理の味付けを変えることもあり、互いに引き立て合う仕立てとなる。
金本さんによれば「焼酎の味わいには30層のレイヤーがあり、それを知り尽くすことでポテンシャルが引き出せる」、とのこと。
実はこれまでに吟味した焼酎の銘柄数が2万8800以上。昔の味も、解析したデータベースが頭の中にしっかりあるという。そしてまた楽しみなのが、仕入れた食材によって日替わりで用意される料理の数々。
さつま黒牛の酒あての拵え1000円、京芋と黒豚の挽肉の煮込みづくり790円、主人のお燗(正一合)550円〜

『酒場BETTAKO』(手前から順に)さつま黒牛の酒あての拵え 1000円、京芋と黒豚の挽肉の煮込みづくり 790円、主人のお燗(正一合) 550円〜 銘柄を指定してのお燗もOK。黒ジョカで供される。京芋のコロッケは百合根入りで上に自家製チーズものる
たとえば本日の「さつま黒牛の酒あて」。ダシで炊いたご飯の上にトロ玉や牛の柔らかな食感、菜の花のほろ苦さ……。素材のいろんな表情が引き出されて、それがピッタリの温度、味わいに調整された焼酎のお燗と合わさるとなれば、これはもう至福なのだ。

『酒場BETTAKO』店主 金本亨吉さん
店主:金本亨吉さん「味わいのポテンシャルが焼酎の魅力です」

『酒場BETTAKO』
[店名]『酒場BETTAKO』
[住所]東京都北区滝野川6-84-10、1・2階
[電話]03-5394-8033
[営業時間]17時〜23時※火は18時〜、日・祝:17時〜22時
[休日]月(臨休はSNSで発信)
[交通]JR埼京線板橋駅東口から徒歩3分
錫ジョカでいただく前割りの至福『焼酎処さつま』@人形町
『さつま』の店名が物語るように、オープン以来18年、焼酎とそれに合う料理をテーマとした骨太な店である。芋焼酎は、鹿児島を中心に味わい深いものが揃うが、中でも昔から懇意にしているという国分酒造の焼酎のお湯割りがいい。
例えば同蔵のレギュラー酒「さつま国分」の蒸留すぐをそのまま瓶詰めした“新焼酎原酒”。その少し荒々しい力強さがたまらない。あるいはもっとほっとする味わいをご所望なら、「いも麹芋」「蔓無源氏」、ふたつの銘柄が6:4で前割りされて控えている。これを燗につけ、錫のジョカでいただくのだ。なんともまろやかにして、芋焼酎らしい甘い風味にただただ体がほどけていく。
ここに合わせたいおすすめと言えば、まずは「自家製さつま揚げ」だ。イトヨリやアゴを使ったすり身がふわっふわ熱々で供され風味抜群。その旨みが口中で焼酎の力強さと拮抗する。
自家製さつま揚げ780円、本日の刺身盛り合わせ1人前1600円※写真は3人前、前割り黒ジョカ2合1300円

『焼酎処さつま』(手前から時計回りに)自家製さつま揚げ 780円、本日の刺身盛り合わせ 1人前1600円 ※写真は3人前、前割り黒ジョカ2合 1300円 焼酎前割りに使われる「いも麹芋」はキレのある味わい。「蔓無源氏」には100年以上昔の芋を復活させて使われ、独特の旨みと甘みが魅力
日替わりで豊洲から入れる鮮魚の刺身もピカピカでイキがいい。やや厚めに切られ、エッジの立った刺身を口に入れたら熱い焼酎を流し込もう。これまた合う、合う。焼酎の醍醐味を味わうならお湯割り。そのための装置は揃っている。

『焼酎処さつま』店主 小杉勇人さん
店主:小杉勇人さん「さつま鶏水炊きなど鍋もおすすめです」

『焼酎処さつま』店内はゆとりがあり、落ち着いた佇まい
[店名]『焼酎処さつま』
[住所]東京都中央区日本橋人形町2-2-6藤井ビル1・2階
[電話]03-6914-9884
[営業時間]17時〜翌2時(フード24時15分、ドリンク翌1時10分LO)
[休日]日・祝
[交通]地下鉄日比谷線人形町駅A1出口から徒歩1分
燗した焼酎と白湯を好みで割ってぐい呑みで『兵六(ひょうろく)』@神保町
上海から引き上げてきた初代が神保町の片隅に店を構えたのが戦後間もなくのこと。最初はかき氷を売ったりミルクホールをやったり右往左往したものの鳴かず飛ばず。そんな折「故郷・薩摩の焼酎を出したらどうか?」と提案したのが、初代と中学の同窓生だった当時の鹿児島県知事。現在、東京を代表する酒亭となったこの店のはじまりだ。
燗として置くのは「さつま無双」の1本。大きなやかんに1升瓶からドボドボ注ぎ、コンロの火に乗せ、時折揺らしながら満遍なく温めていく。温度を計るのは三代目として店を守る柴山さんの手の感覚。注文すればそこから正1合を注いだ徳利に、白湯の入った小さなやかんも添えられる。
兵六あげ540円、さつま無双830円、つけあげ650円

『兵六(ひょうろく)』(左手前から時計回りに)兵六あげ 540円、さつま無双 830円、つけあげ 650円 「つけあげ」は関東風にいうならさつま揚げのこと。鹿児島のメーカーから取り寄せている。「兵六あげ」は油揚げにそれぞれチーズ、ねぎ、納豆を挟んで炙っている。どちらも芋焼酎のお供にピッタリだ
客はそれらを思い思いの割合でぐい呑みに注ぎ入れて飲むのがここでの作法だ。大きなカップでなく、ぐい呑みってところも丁度いい。熱々のうちに飲み干せる上、徳利とやかんを行き来する手数の多さもなぜだかどんどん楽しくなる。
合いの手には「つけあげ」や「餃子」など、これまたずっと昔から変わらぬ味を。
「初代のやってきたことを守るのが僕の仕事」と柴山さんはうれしそうに話してくれた。

『兵六(ひょうろく)』3代目亭主 柴山雅都さん
3代目亭主:柴山雅都さん「コの字カウンターを囲んで和気あいあいと楽しんで」

『兵六(ひょうろく)』引き込まれるような店の風情。暖房をつけずとも、そこに集う客の体温で真冬でも不思議なほど暖かい
[店名]『兵六(ひょうろく)』
[住所]東京都千代田区神田神保町1-3
[電話]なし
[営業時間]17時〜22時(21時10分LO)
[休日]土・日・祝
[交通]地下鉄半蔵門線ほか神保町駅A7出口から徒歩2分
本場の流儀、黄金比4対6でまろやかに『さつま料理かご』@新橋
優美な姿の「黒ぢょか」から、すいっと注がれた焼酎を飲んで驚いた。なんとも、まろやか。銘柄は「小鶴」。あらかじめ焼酎と水を割っておき温める、本場鹿児島の流儀「前割り」だ。
店主・上水流洋さんによれば、「焼酎対水の割合は、4対6。これが一番おいしい」とのこと。もっと濃くしたいという呑兵衛はいないだろうか。
「たまにいらっしゃいますが、止めますね。どうしてもと言う方には濃くしますが……」と上水流さんが笑う。なるほど、このまろやかさだもの、さらに濃くするとちょっとアブナイ。
2002年、上水流さんがヤクルトスワローズのコーチを引退後、故郷鹿児島の味を気軽に楽しめる店としてオープン。地鶏、キビナゴ、カツオ……。食材は可能な限り鹿児島直送。鹿児島県人はもちろん、他県出身の常連さんも多いという。
地鶏刺身盛り合せ1780円、黒ぢょか790円

『さつま料理かご』(手前)地鶏刺身盛り合せ 1780円 (奥)黒ぢょか 790円 薩摩地鶏の刺身は、食感もよい砂肝(左)、噛みしめるほどに旨みが広がるモモ肉(中)、とろり濃厚なレバー(右)。島津家家紋と店名入りの「黒ぢょか」は、薩摩焼の窯元に特注する。細身の口から注がれるお湯割りはなお旨い
「お客さんがおいしい、楽しかった、また来るねと言ってくれるのが一番うれしい」と上水流さん。
妻のすず子さん、次男の広輔さん、家族3人で切り盛りする。その温かい雰囲気もまた、お湯割りをまろやかにする。

『さつま料理かご』(左から)店主 上水流洋さん、店長 広輔さん、女将 すず子さん
店主:上水流洋さん、店長:広輔さん、女将:すず子さん「来年で創業25周年、ありがたいですね」

『さつま料理かご』カウンター、テーブル、掘りごたつ、お座敷もあり。プロ野球選手も多く訪れる
[店名]『さつま料理かご』
[住所]東京都港区新橋3-17-5グランフォークス2階
[電話]03-3432-2486
[営業時間]17時〜23時LO
[休日]日・祝
[交通]JR山手線ほか新橋駅烏森口から徒歩2分
撮影/大西陽(羅無櫓、さつま)、西崎進也(BETTAKO、かご)、小島昇(兵六)、取材/池田一郎(羅無櫓、BETTAKO、さつま)、菜々山いく子(兵六)、本郷明美(かご)
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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