NASAがアルテミス計画を大幅に変更。人類の月面着陸は2028年に持ち越し
Image: NASA
人類を再び月面へと送り込む「アルテミス計画」が、根本からひっくり返ろうとしています。
NASAは現在月面着陸に向けたシナリオを大幅に書き換え、着陸前の「猛特訓」フライトを追加。さらに難航している巨大ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」の製造を安定させ、打ち上げペースを爆上げする異例の戦略に打って出ました。
先日、NASA長官のジャレッド・アイザックマン氏が会見で明かしたのは、リスクを徹底的に削ぎ落とすための「計画の大手術」でした。
「アルテミス3」は月へ行かない?
最大の衝撃は、2027年に予定されている第3次ミッションの内容変更です。これまでの計画では、この「アルテミス3」こそが、1972年以来となる人類の月面着陸を果たす主役のはずでした。しかし、新しいシナリオでは、アルテミス3は月へは行かず、「地球周回軌道でのテストフライト」に専念することになります。
オリオン宇宙船と民間企業の月着陸機を地球の周りでドッキングさせ、本番前に予行演習を済ませてしまおうというわけです。アイザックマン長官は、「無人の打ち上げを1回やった後、3年も待ってから月の周囲を回り、さらに3年待ってから着陸する…なんて通用しないのは明らかです」と、これまでの「飛び飛び」な計画にダメ出しをしています。
ちなみに最初の有人月面着陸は、アルテミス4に先送りされました。
SLSロケットの量産モードに切り替え
さらにNASAは、打ち上げ頻度を高めるためにSLSロケットの「アップグレード計画」もバッサリ切り捨てます。これまではミッションを重ねるごとにロケットを強化していく予定でしたが、構成をコロコロ変えると製造スピードが落ち、不具合の原因にもなります。そこで初期型の「Block 1」構成を標準化し、とにかく同じものを速く作る「量産モード」に切り替える決断を下しました。
「SLSは素晴らしい機体ですが、1台1台を『芸術品』のように作り込むのはもうやめたいのです」とアイザックマン氏。
この新スケジュールにより、人類の月面着陸は2028年の「アルテミス4」に持ち越されますが、驚くべきはその後のスピード感です。なんと同年のうちに「アルテミス5」も打ち上げ、「わずか10カ月の間に2回も月面着陸をキメる」という超アグレッシブな目標を掲げています。
「地球周回」でやるべきこと
新しく定義された「アルテミス3」は、かつてアポロ11号が月を歩く前に、地球の周りで着陸船をテストした「アポロ9号」に近い役割を担うことになります。スペースXの「スターシップHLS」やブルーオリジンの「ブルームーン」とオリオン宇宙船をドッキングさせ、新型宇宙服を微小重力下で実際に着てみる。アルテミス4で本番を迎える前に、すべてのハードウェアの課題を地球のすぐそばで出し尽くそうという戦略です。
アイザックマン氏は、今のNASAに必要なのは「筋肉の記憶(マッスルメモリー)」を取り戻すことだと指摘します。
「3年に1回しか打ち上げないようでは、現場のスキルは衰えてしまいます。
打ち上げのたびに同じ問題に悩まされるなら、プロセスの根源から見直さなければなりません」
着陸が先延ばしになったのは少し寂しい気もしますが、2028年に予定されている「月面着陸ラッシュ」への期待感は一気に高まってきたのではないでしょうか。

