オイシックスのチーフ・ベースボール・オフィサーに就任した桑田真澄氏【写真:羽鳥慶太】

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「ワインやお米作りを…」充電生活のはずが一転、オイシックスでCBOに

 プロ野球の2軍イースタン・リーグに参加しているオイシックスは、10月に巨人を退団した桑田真澄氏をチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)に招へいし、18日に都内のホテルで就任会見を行った。退団直後は「充電しようと思っていた」という桑田氏は、なぜ電撃的な再始動を選んだのか。そして「ジャイアンツと比べれば、雲泥の差がある」というオイシックスをその場に選んだ理由とは。

 会見は桑田氏が選手、指導者としてずっと通ってきた東京ドームを眼下に望む部屋で行われた。10月下旬に巨人を退団し、当初は「充電といいますか、ゆっくりしようと思っていた」という。「ワイン作りやお米作りをしながら、米国視察に行って情報のアップデートをしたり」とビジョンもあった。それをひっくり返したのが、高島宏平会長をはじめとしたオイシックス側の“口説き”だった。

 今季まで2年間、巨人の2軍監督を務めた。“2軍球団”がどのようなものなのか、対戦相手として目を凝らした。「オイシックスは非常に若い球団。資金力や戦力も劣ることは否めないと思います。特にジャイアンツと比べたら、もう雲泥の差があると思う」。実際に今季、両球団の対戦成績は巨人の13勝4敗だった。なぜここを、新天地に選んだのか。

「この若い球団で僕自身が新しい挑戦をすることで、日本野球界の発展につながっていくのではないかという思いがありました」

 球団側は「CBO」という役職に込めた狙いを「技術的な指導だけでなく、プロフェッショナルとしての心構えなど、球団独自の文化づくりを担っていただく」と説明している。桑田氏はプロとしては小柄な身長173センチという体で、NPB通算173勝を挙げた。その経験をもとにした技術の伝授だけでなく、2軍球団に不可欠な育成メソッドの整備や、練習環境の整備まで幅広い役割を期待している。

 これまで在籍していた巨人には90年を超える長い歴史がある。一方でオイシックスは、NPBファームを戦うようになってからまだ2年。桑田氏に言わせれば、未完成な組織だからこそできることがあるというのだ。

球界の“練習神話”に一石「練習、練習、練習ではうまくならない」

「もう何年も歴史のある球団だと『まあこういう感じで』っていうのがあるんです。ただここは新規参入した球団ですから、球団経営とか育成システム、チーム強化策などで新たな試みができると思いますし、今の時代に即した、時代に合った文化作りをして、中長期的に強いチームに成長できるようにしていきたいなと思っています」

 その一つとして挙げたのが、日本球界に根強い“練習神話”だ。「練習したらうまくなるっていう野球界の、なんなんですかね、あれ。お守りかなんか知らないですけど、あるんですよね」。桑田氏は巨人でも、選手育成のための方針として「サイエンス、バランス、リスペクト」という3つを掲げてきた。そのうちの1つ「サイエンス」への知見を深めれば深めるほど、不思議な行動だという。

「練習、練習、練習はうまくならないんです。練習したら栄養を摂って、睡眠、休養が必要。寝ているときに筋肉は再生し強くなり、練習した技術も脳や神経が覚えていくというのがもう分かってる時代なので」

 桑田氏は巨人2軍でも勝利至上主義に陥ることなく、人材育成を前面に押し出していた。その過程で選手に求めるのが「プロフェッショナルであれ」ということだ。言葉から受ける印象は、選手によってさまざまだろう。その意味を考え、向かっていくことに大きな価値がある。

「高い技術を披露すること、ファンやメディア、スポンサーへの対応とかすべてできてプロフェッショナルだと、僕は思うんです。ただ野球界では、高校野球を引きずったまま選手、指導者として過ごしていく人が多いんですよ。ジャイアンツの選手にも『部活じゃないぞ』ってよく言っていたんですけどね」

 本拠を置く新潟から新たなスタイルを発信できれば、野球界を変えることができると桑田氏は考えている。「オイシックスが強くなっていく過程を見ながら、また新しいチームが参入してきたり、野球界の発展に繋がっていけたらいいなと思っています」。伸びしろだらけの2軍球団は球界きっての論客を得て、どう変わっていくのか。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)