早見沙織が考える“吹替版”だからこその醍醐味 「セリフがダイレクトに耳と心に入ってくる」
人気シリーズの最新作『プレデター:バッドランド』が劇場公開中だ。
参考:エル・ファニング、一人二役の役作りを明かす 『プレデター:バッドランド』特別映像
本作は、1987年に公開された第1作から続くシリーズにおいて、初めて“プレデターが主人公”という作品。若きヤウージャ族のデクは、ある日その弱さから一族の長である父に見放され、星を追放されてしまう。辿り着いたのは、“最悪の地(バッドランド)”。あらゆる生物に命を狙われる中、最凶の敵“カリスク”を狙うデク。そんな彼の前に現れたのは、上半身しかないアンドロイド・ティア(エル・ファニング)。2体は規格外のコンビとして、協力し合うことに。果たしてデクは、究極の敵を狩って真のプレデターになることができるのか。
予告編が公開された当時から、話題沸騰となったエル・ファニングが演じるアンドロイド・ティア。作品の中で大きな存在感を見せる彼女の吹き替えを務めたのが、これまでも多くの作品でファニングの吹き替えを務めてきた早見沙織だ。今回、シリーズで異彩を放つ本作ならではの魅力から、ファニングへの印象、芝居におけるインスピレーション源まで語ってもらった。(アナイス(ANAIS))
●『プレデター』シリーズが愛される理由
――今回の役を演じることになったきっかけは?
早見沙織(以下、早見):今回の役はオーディションを経て決定したのですが、その前にエル・ファニングさんのInstagramで、本作の予告編が投稿されていたのを拝見して、作品のことは知っていました。とても面白そうでどんな物語になるのだろうと思っていたら、オーディションのお話をいただいたので驚きました。
――本作ではデクが日本語吹替版でも字幕版で流れるヤウージャ語を話すので、吹替版は早見さんがメインでお芝居されていますよね。
早見:はい、収録の前半は映像を見ながら、エル・ファニングさんの表現の幅広さを楽しみながらアフレコしようと思っていたのですが、中盤くらいで「あれ? ずっと私のセリフが続くな……」と気づきました。吹替版をご覧になる方は、作品の中盤まではずっと私の声を聞くことになります。プレッシャーも感じましたが、より気合が入りました。
――これまでの『プレデター』作品への印象と、本作ならではの魅力や面白さについて教えてください。
早見:本作に関わる前は、プレデターは得体の知れない怖い存在で、強いハンターのイメージがありました。しかし本作でそれがガラリと変わりました。プレデターに対する固定観念を変えてくれるような作品ですが、初代から続くプレデターの素敵な部分、戦い方や流儀、信念は決してぶれないように描いている点も魅力だと思います。プレデターにバディができるなんて想像もしませんでした。そのコンセプトが面白くて斬新だと思いました。
――アフレコの際に受けた具体的な指示やアドバイスはありましたか?
早見:本作のエル・ファニングさんは陽気なだけでなく、非常にシリアスなお芝居もされています。その振り幅や落差をどのように日本語で表現していくかはとても悩んだのですが、音響監督さんやチームの皆さんにたくさんアドバイスをいただきました。
――『プレデター』シリーズはかなり長く愛されている作品ですが、なぜこれまで広い観客層に長く愛されてきたと思いますか?
早見:『プレデター』第1作目や『プレデター:ザ・プレイ』では、プレデターはなかなか姿を見せず、映画の後半でやっと登場します。たとえ映っていないシーンでも脳内で勝手にプレデターを想像してしまう。その唯一無二の存在がこのシリーズの個性であり魅力で、多くの人々をひきつけてきたのだと思います。一方で、『プレデター:バッドランド』では、プレデターが主人公として映画の最初のシーンから登場するのがとても面白いと思いました。
――今回、機械のアンドロイドでありながらとても感情表現が豊かで常に陽気で明るいティアという役柄を演じるにあたり、意識したことは?
早見:ティアはアンドロイドですが、作中、特にデクとの出会いのシーンではずっとおしゃべりをしている陽気でチャーミングなキャラクターです。私も開放的な気持ちで楽しみながら収録に臨みました。自分が過去にエル・ファニングさんの吹き替えを担当した別の作品でも、彼女の陽気で、少しお茶目でコミカルな表現やお芝居がとても印象に残っていました。今作でもできる限り彼女の持つ雰囲気を声で表現しようと意識しました。
――特に印象的だったシーンやセリフは?
早見:ティアがデクに崖の上に放り投げられる場面がありますが、怯えたり、怒ったりするのかと思いきや、ティアは放り投げられたことをとても楽しんでいるんです。あのシーンはティアらしさを感じて私はとても好きですし、エル・ファニングさんの楽しそうな表現が本当にかわいらしく、演じていて印象的でした。
ーー『ターミネーター0』など、これまでもアンドロイドやロボットの役を演じたことがあるからこそ、今作の役作りで意識された点は?
早見:今回のキャラクターでは「アンドロイドであること」はあまり意識しませんでした。“アンドロイド”というワードを聞くと、表情や感情の起伏に乏しいイメージがありました。しかし、今作ではティアが一番表情豊かですし、他者とも積極的にコミュニケーションを取っていきます。アンドロイドだからこそプレデターとも属性の垣根を越え、すぐにコミュニケーションが取れるのだなと思いました。
●早見沙織が大切にしている“生の表現に触れる”こと
――声優としてアニメ映像と洋画の吹き替えでは、お芝居にどんな違いがあると感じますか?
早見:洋画は実際に演じている役者さんがいらっしゃるので、映像の中に「この表現を元に自分の表現を作ろう」というモデルがあります。アニメの場合、まずは自分が表現したものに対してディレクションをいただき、変更を加えていくやり方になります。洋画の場合は、今回ですとエル・ファニングさんの演技がベースになるので、真逆の表現に向かうことは起こりません。そこが大きく違う点です。
――『プレデター』シリーズは吹替版も愛されてきた印象が大きいですが、洋画の字幕と吹き替えにはそれぞれどんな魅力があると感じますか?
早見:私は字幕版で映画を観るのも好きです。字幕も含めた全てを映像として受け取るので、没入できる感覚があり、それが字幕版の面白さだと感じています。また、文字ならではの表現も魅力に感じます。一方、吹き替えは、セリフがダイレクトに耳と心に入ってくるのがいいですよね。
――これまでも多くの作品でエル・ファニングの吹き替えを担当されてきましたが、本作での彼女はいかがでしたか?
早見:本作にはエル・ファニングさんの全てが詰まっていると思います。全くジャンルは異なるのですが、彼女の過去の作品での演技にも通ずるものがありました。
――普段から芝居をするにあたり、ご自身のインプット源になっているものは何ですか?
早見:自分のインプット源として、さまざまな表現を観に行くようにしています。特にコロナ禍を経て、“生の表現に触れる”ことを意識するようになりました。最近は舞台を観に行ったり、劇場で映画を観ることが多いです。また、もともと音楽を聴くのが好きで、海外・国内のアーティストさん問わずライブに行くことも刺激になっていると思います。
(文=アナイス(ANAIS))

