オービスの測定値はホントに信頼できるのか?まさかの「抜け落ち」を発見した【知らないと損する交通違反】
「2本目はコントロールループです。スタートからコントロールまでの通過時間と、コントロールからストップまでの通過時間、この差が1.5%を超えますと、撮影を行いません」
裁判官は、ふむふむとうなづきながら聞く。そして決定的な決め手は、次の部分だ。
4、写真を見れば測定値が正しいとわかる
「ストップループが車両を検知した瞬間に速度を算出し、タイマーを作動させます。その先の撮影地点、小さな白線がある場所、そこへ、測定した速度で違反車両が差し掛かった瞬間に撮影します」
TKKのオービスの、撮影端末の少し手前、車線の中央にある小さな白線、あれはループコイルの位置を示すとかネットでは言われているようだが、違う。あの白線こそ、ずばり撮影地点、撮影ポイントなのである。
●オービスの撮影ポイントを示す小さな白線。群馬県内で撮影
「本件の測定記録写真を見ますと、車両前部、ナンバープレートの真下辺りに白線がございます。このことから、測定は正しかったことがわかるのです。撮影と同時に、測定値などの情報が写真に焼き付けられます。誤測定が起これば、白線から離れて撮影されます」
裁判官は、もうにこにことうなづく。写真を見れば測定値が正しいとわかる、これが有罪の、オービス無謬(むびゅう)の、決定的な決め手だ。
5、測定値を否定する唯一の無罪判決
じつはTKKの固定式は、誤測定を理由とする逆転無罪を、私が知る限り一度だけ食らっている。手元に判決書きの写しがある。一審・加古川簡裁の有罪判決(罰金10万円)に対し被告人が控訴。1992年9月9日、大阪高裁の判決はこうだった。
「主文。原判決を破棄する。被告人は無罪」
被告人車両は大型トラックで、タコグラフ(自車の走行記録計)が備えられていた。当時のタコの構造はシンプルで信頼できる。せいぜい66㎞/h程度と記録されていた。そこで、オービスの測定値には合理的な疑いがあるとされたのだ。検察は上告できず、この無罪は確定した。
驚くのは「白線」である。トラックのナンバープレートのちょうど真下辺りに白線がしっかり写っていた。なのに無罪とは! のちのオービス裁判で、誤測定の原因は何だったのか、TKKはどう検討・改良したのか、弁護人が証人に尋ねたことがある。当時の証人は、にこやかに答えた。
「あの判決は、装置の機能を正しく理解されなかったものと承知しております。ですので、検討や改良はしておりません」
つまり、大阪高裁の無罪は誤判だというのである。つい最近も、弁護人がそこを尋ねたことがある。証人は、にこやかに答えた。
「私がオービスに関わる(オービス担当に就く)前のことで、なんとも申し上げられません」
証人は、弁護人や裁判官をバカにしているのか。自社に有利なよう、嘘をついているのか。いや、悪意などなく、自社製品の優秀性を普通に信じ込んでいるらしい、私はそう感じる。
6、定期点検、まさかの抜け落ち!
ナンバープレートの真下辺りに目印の白線があれば、測定は正しかったとわかる。ところが、正しくないとされ無罪判決が……。なぜそんなことが起こるのか。長く傍聴し続けてきて私は、たいへんなことに気づいた。
まず、オービスは、写真に焼き付けられた測定値以外に、何も残さない。スタートループが車両を検知した時刻、ストップループが検知した時刻、6.9mの通過時間、0.975を掛けて小数点以下を切り捨てる前の、ナマの測定値、何ひとつ残さない。測定記録写真に焼き付けられた測定値、それだけが速度についての唯一の証拠だ。
オービスは、年に2回の定期点検を行う。うち1回、走行試験を行う。そこを通過する一般車両100台を、オービスとテープスイッチ(シンプルで信頼性の高い測定装置)で測定し、前出の「範囲」に収まっているか確認する。
だが、この走行試験、じつは重大な抜け落ちがある。オービスの測定値については、ノートパソコンに表示されたデータだけをチェック。肝心要(かんじんかなめ)の測定記録写真、そこに焼き付けられた測定値は、なんとびっくり、スルーなのだ。無意味な走行試験といえる。
オービスは正しく測定し、タイマーを作動させた。よって被告人の車両は、小さな白線のある撮影地点に正しく写っている。しかし、0,975を掛け、小数点以下を切り捨て、測定値として写真に焼き付ける、その過程のどこかでエラーが生じる可能性を、TKKはもちろん、検察官も裁判官も弁護人も被告人も、誰も気にしない……。そこがオービスの肝(きも)かと、現時点で私は考えている。
7、ドライブレコーダーの不思議
ところで、どの事件にも見事に共通することがある。どの被告人のクルマにも、ドライブレコーダーがないのだ。ドラレコの録画記録は、無罪主張の重要な裏付けとなり得る。逆に、有罪の裏付けにもなる。
「測定記録写真を見ますと、フロントガラスの内側、上部にドラレコがありますね。録画記録を、なぜ証拠請求しないのですか?」
と検察官が被告人に突っ込むシーンを、私は見たことがない。タコグラフの記録についても同様だ。いったいどういうことか。誤測定を主張するケースについて、
・誤測定の証拠があれば不起訴
・誤測定の証拠がなければ起訴して有罪に
もしかしてそういう運用なの? と傍聴席からはどうも思えてならない。
以上、私なりにめちゃくちゃ簡潔にまとめたつもりです(汗)。他車両や何らかの電磁波の影響など、抽象的な可能性は一切言わず、焼き付け値について信頼性の立証が存在しないこと、そこだけに絞って争ったケースは、私が知る限り、まだない。オービスの闇は深い、かも。今後も見張っていきたい。
文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通事件以外の裁判傍聴にも熱中。交通違反マニア、開示請求マニア、裁判傍聴マニアを自称。
