一方で、私がアシックスに来た時から、デジタルを強化しており、eコマースが整っていたんです。一時期、コロナで経済が動かなかったですが、それでも皆さん買い物はされます。その時にeコマースがあったことで、すぐに対応できました。

 ですから我々は、2021年はコロナ禍の影響もあって赤字でしたが、すぐに復活することができたのです。

 加えて、コロナ禍以降、人々の健康に対する意識が非常に強くなったことを実感しています。病気に対する抵抗力をつけるために運動しようとか、在宅勤務でずっと家にいるのではなく、外で歩いたり、走ったりすると気持ちがいいということを皆さんが感じたことで流れが一気に来て、我々はその流れを捉えることができたのです。

 ─ ある意味でピンチがチャンスになったと。

 廣田 そうですね。ただ、それは今だから言えることで、最初はどうなるかと思いました。

 ─ コロナ前からデジタルへの布石を打っていたと。

 廣田 結果的にですが、デジタルの世の中が来ることは確実でしたから、eコマースの基盤、会員制度が整っていたことは大きかったですね。

 ─ 全体の売り上げのうち、eコマースの比率は何割ですか。

 廣田 国によっても違いますが、日本は低く10%程度です。一方で、米国や中国では4割くらいになります。やはり国土が広いと店舗に行くよりもeコマースで買われるお客様が多い。我々は「DtoC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)比率」と言っていますが、直営店+eコマースで全体売上高の4割です。

 ─ 海外売上高比率が8割以上ですが、さらに高まる?

 廣田 高まります。日本も大切な市場ですが、ビジネスが伸びる市場は、やはり海外ですから、日本は比率としては下がっていきます。

 ─ その日本市場は少子高齢化ですが、その中でスポーツをいかに根付かせるかがテーマだと思いますが、どう取り組みますか。

 廣田 長生きできるということはいいことだと思っていますが、問題は健康のまま歳を取ることができるかということです。そのためには、やはり体を動かしていただくことが必要です。

 我々だけでできることではありませんが、施設などを含め、スポーツができる環境を整えることが大事です。今はデジタルを使いながら、スポーツの仲間を募ることもできます。我々はランニングが中心ですが、ウォーキングも含め、年齢にかかわらず入りやすいのではないかと。

 また、歩いている時でも、無心でいることはできませんから、いろいろ考えると思いますが、そういうことも非常にいいことではないかと思っています。

 日本のスポーツのあり方は学校の部活動や地域スポーツなど、様々な課題がありますが、様々な形で、日本全体でスポーツを楽しむ文化になっていけばいいなと思います。

 ─ 先ほどの「富士山マラソン」もそうですが、地域の観光資源との連携も今後進みそうですね。

 廣田 どんどんやっていきたいと思っています。当社の関連会社に、ランニングイベントの企画や募集を手掛けるアールビーズという会社があるのですが、その会社が積極的に地方との連携を進めています。

 例えば、お城は日本の重要な観光資源ですが「日本全国お城マラソンを走ろう」という企画で熊本や彦根で大会を開いています。また、今度長崎で音楽とランニングをコラボレーションさせた「長崎ミュージックマラソン」が開催されます。